【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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その日、夜が明けるまで待っていたけれど、結局遼平くんからの連絡はなかった。

もうなりふり構っていられなくなった私は、翌日の仕事帰りに、会社から二駅のところにあるカフェで、来てくれるかどうか分からない人を待っている。

約束の時間から既に1時間。
最初に注文したカプチーノはとっくに冷めてしまった。

でも、ここで諦めるわけにはいかない。
残りを飲み干し、次のオーダーをするべく店員さんを呼ぼうとしたところで、店のドアが開いた。

私が思わず立ち上がると、相手も気付き、こちらにやって来た。

「ご無沙汰してます。今日は来てくださってありがとうございます」

「礼なんて要らないわよ。アンタの困ってる顔見て面白がりに来ただけなんだから」

真っ黒いロングダウンコートを脱ぐ二ヶ月ぶりの飛鳥先輩は、以前より刺々しさが増している。

でもこんなことで怯んでる場合じゃない。

「そうなんです。困ってるんです。だから…飛鳥先輩の知ってること、全部教えてください」

深々と頭を下げると、頭上から短い嘲笑が聞こえた。

「なんで私が教えてやんなきゃいけないのよ?」

「お礼はちゃんと準備してます!!」

「もうすぐ没落するっていうのに…お金とか言わないわよね?」

挑発的な言葉を受け流し、私は、鞄からいくつかの台紙写真を取り出して静かに並べた。

「何よ?それ」

「優良物件、揃えて来ました」

中は結婚相談所をやっている親戚選りすぐりのお見合い写真。
そのうちの一つを一瞬だけ開いてすぐ閉じた。

「…話したらそれ全部寄越しなさいよ」

飛鳥先輩はもったいぶってコーヒーを飲んでから私に尋ねた。

「で?蓮見は何をどこまで知ってんの?」

運ばれて来たブレンドを一口含んで飛鳥先輩が尋ねる。

「…私が知ってるのは、eternoの百貨店撤退だけです」

「アハハ!やっぱりそうなったんだ!!そりゃあ当然よね」

少し前まで勤めていた会社の事なのに。
心底愉快そうに笑う飛鳥先輩が不快で仕方ない。

「当然って…どうしてなんですか?」

「アンタって、本当に椎名くんに興味なかったのね」

「…やっぱり晴臣と私が婚約を解消したことが関係あるんですか?」

頭から血の気が引いていく私を、ジワジワといたぶるつもりなのか、飛鳥先輩は勿体ぶってまたコーヒーを啜った。

「関係大アリよ。Lotusとeternoが出店してるの、同じ系列の百貨店でしょ?椎名くんのお母さん、そこの創業者一族の娘だもん」

晴臣のお母さんが、光越の!?
嘘!!?
最近見てないけど…
たまに晴臣のお父さんの仕事の手伝いで、頭にタオル被って、作業着着て、屋根に登ってた、あの女性ひとが。

今思い返せば、あの姿もやたらキマっていたようなー

衝撃のあまり明後日の方向に飛んでいた思考を、悪意たっぷりの口調で飛鳥先輩が現実にに引き戻す。

「だからさあ、蓮見のせいで光越から撤退させられるの、eternoだけじゃなくて、Lotusもなんじゃない?」
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