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それって、つまり…。
私を掴んでいた晴臣の手を思い切り振り払う。
「テナント撤退の件は…光越側の意向じゃないの?全部…晴臣の差し金なの…?」
「あの女の情報源が光越の人事だったんなら千歳も聞いただろう?交渉担当者が俺だって。創業者一族で幹部候補だからって、入社間もないやつに全権委ねるなんて、どうかしてるよな?」
晴臣が浮かべた微笑みは、青白い月明かりに照らされ、底なしに冷たかった。
「そして、俺が手塚に出した条件は唯一つ、千歳を俺に還すこと」
今日聞いた中で一番ショックな情報に、脚がふらつき門柱に背をついた。
「つまり、手塚が千歳のためどれだけ死にものぐるいで足掻いたって無駄だ。このままいけばeternoは消える。運良く形だけ残ったとしても、それはeternoじゃない」
話の流れ的に、晴臣が私に止めを刺しにかかっているのは分かっていた。
でも、耳を塞ぐことはしなかった。
「だから、手塚はお前を切る。切って…eternoを選ぶんだ」
私と晴臣の会話が途切れるのを、待っていたかのようなタイミングでスマホが鳴った。
直感的に、遼平くんからだと分かった。
何も言わない晴臣にじっと見つめられながら、通話ボタンを押す。
「もしもし」
「ちーちゃん?今、大丈夫かな」
「うん。もちろん」
「あのさ、イブの日…空いてる?」
「空いてるよ」
「…僕も…時間が作れそうなんだ。仕事が終わったら迎えに行くから、待ってて」
「分かった。楽しみにしてるね。おやすみなさい」
数ヶ月ぶりのデートの約束。
しかも、クリスマスイブに。
思えば付き合い始めてから初めてのデートかもしれない。
それなのに、手放しで喜べない。
遼平くんの声は、疲れ果てていてるどころか苦しげで、とても恋人をデートに誘うテンションではなかった。
言いようのない不安が胸にこみ上る。
晴臣の言う通り、別れを告げるつもりなのかもしれない。
堪らず晴臣の方を見れば、変わらず射るような視線をこちらに向けていた。
全部見透かされてしまいそう。
ダメ。
復讐を企む相手にそんなことさせたら、弱みにつけ込まれる。
さっきの話も、私と遼平くんを引き離す為の罠かもしれない。
「私は、遼平くんを信じてる」
力強くそれだけ言い残して、家の中に入った。
私を掴んでいた晴臣の手を思い切り振り払う。
「テナント撤退の件は…光越側の意向じゃないの?全部…晴臣の差し金なの…?」
「あの女の情報源が光越の人事だったんなら千歳も聞いただろう?交渉担当者が俺だって。創業者一族で幹部候補だからって、入社間もないやつに全権委ねるなんて、どうかしてるよな?」
晴臣が浮かべた微笑みは、青白い月明かりに照らされ、底なしに冷たかった。
「そして、俺が手塚に出した条件は唯一つ、千歳を俺に還すこと」
今日聞いた中で一番ショックな情報に、脚がふらつき門柱に背をついた。
「つまり、手塚が千歳のためどれだけ死にものぐるいで足掻いたって無駄だ。このままいけばeternoは消える。運良く形だけ残ったとしても、それはeternoじゃない」
話の流れ的に、晴臣が私に止めを刺しにかかっているのは分かっていた。
でも、耳を塞ぐことはしなかった。
「だから、手塚はお前を切る。切って…eternoを選ぶんだ」
私と晴臣の会話が途切れるのを、待っていたかのようなタイミングでスマホが鳴った。
直感的に、遼平くんからだと分かった。
何も言わない晴臣にじっと見つめられながら、通話ボタンを押す。
「もしもし」
「ちーちゃん?今、大丈夫かな」
「うん。もちろん」
「あのさ、イブの日…空いてる?」
「空いてるよ」
「…僕も…時間が作れそうなんだ。仕事が終わったら迎えに行くから、待ってて」
「分かった。楽しみにしてるね。おやすみなさい」
数ヶ月ぶりのデートの約束。
しかも、クリスマスイブに。
思えば付き合い始めてから初めてのデートかもしれない。
それなのに、手放しで喜べない。
遼平くんの声は、疲れ果てていてるどころか苦しげで、とても恋人をデートに誘うテンションではなかった。
言いようのない不安が胸にこみ上る。
晴臣の言う通り、別れを告げるつもりなのかもしれない。
堪らず晴臣の方を見れば、変わらず射るような視線をこちらに向けていた。
全部見透かされてしまいそう。
ダメ。
復讐を企む相手にそんなことさせたら、弱みにつけ込まれる。
さっきの話も、私と遼平くんを引き離す為の罠かもしれない。
「私は、遼平くんを信じてる」
力強くそれだけ言い残して、家の中に入った。
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