【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

１８－８

問われるなり、ふわりと体を横抱きにされた。

突然の穏やかでない言動にジタバタと必死で宙を蹴る。

「か、覚悟って、何の！？」

私の足からパンプスが抜け落ちて床にぶつかり、カーンと小馬鹿にしたような音が鳴った。

晴臣は何も言わないまま、迷いのない足取りで、どんどん室内を進んで行く。
行き着いた先は私の寝室で、そのままベッドの上に下ろされた。

混乱気味な私の前で、晴臣は着ていたコートとスーツのジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを緩めながらベッドに膝を乗せた。

ギッとベッドの軋む音が聞こえ、やっと、晴臣の問いかけの意味が分かった。

「そんなの、俺に抱かれる覚悟に決まってるだろ。三年もあったんだから、十分だよな？」

同時に答えを言われると、頭の中を覗かれたような気がして、一気に顔が熱くなった。

そうか。
そうだ。
そういうことになるんだ！

会いたい気持に突き動かされるばかりで、再会した後のことなんてこれっぽっちも考えていなかった。

でも。

「は、晴臣が一方的に私の前から消えたくせに、帰国していきなり…とか、勝手過ぎ！」

「空港近くのホテル取っても良かったけど、今度は千歳の方が逃げそうだったからな。家まで我慢して正解だった」

あの感動の再会直後からそんなことを考えていたなんて。
でも、確かにもう私には逃げ場がない。

相変わらず、無駄に頭が切れるんだから！！

「せ、せめてお風呂に入らせて！！」

「無理。爆発する」

爆発！？
爆発って、一体何が！！？

理解の範疇を超え、こっちの頭がショートしそうになっていると、晴臣が小さくため息を吐いて、ベッドから降りた。

しまった。
中学生じゃあるまいし。
想い合う男女ならごく当たり前のことなのに。

せっかくわざわざシンガポールから飛んで帰ってきてくれたのに。
怒らせてしまっただろうかと顔色を伺うとー

「…嘘だよ。俺シャワーでいいから、その間にお湯張って、すぐ入れよ」

なんとも形容しがたい、複雑な表情。
でも、怒ってはなさそう。

「うん、ありがとう」

やっぱり晴臣はなんだかんだ私に甘い。
そんなふうに思っていたら。

「その代わり、絶対逃げるなよ。あと、長風呂も禁止だからな」

晴臣はしっかりと釘を刺し、散乱していたコートとジャケットを拾い上げ、バスルーム目指して私の寝室を出て行った。