【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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俺の幼馴染で婚約者が可愛すぎて辛い2

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ハッキリと千歳への気持ちを自覚したのは、遠足のとき。

子どもにとってそれは一大イベントで。
友達と幼稚園以外の場所で遊んだことのない俺は、一週間以上前からてるてる坊主を作ったり、厳選したお菓子を準備したりして、それはそれは楽しみにしていた。

でも、母さんが、「コレ、千歳ちゃんと一緒に食べたら?」と準備してくれていた、俺たち二人の好物は、リュックサックには入れなかった。

だって、どうせ千歳は他のコと弁当食べるし。

でも、いいんだ。
幼稚園では遊べないけど、家に帰ったらずっと遊べる。
みんなの千歳から、俺だけの千歳になる。
母さんが準備してくれたお菓子は、そのときに食べればいい。
俺だって、千歳が遊んでくれない間に、ちゃんと友達もできたし。

そう言い聞かせて臨んだ遠足──

目的地の公園近く。
バスが止まり、俺たちを男女別に背の順に並ばせた先生の、次の言葉に俺は驚愕した。

「じゃあ、隣のコと手をつないでくださーい」

隣のコと
手を
繋ぐ、だと!!?

千歳は標準サイズで、真ん中くらい。
一方俺は背が高くて、一番後ろ。

当然、俺の隣は千歳じゃない。
それどころか、男子の方が女子より人数多い関係で、手を繋ぐ相手は男。

千歳の隣のヤツを確認すれば───

よりによって、この間千歳のスカートをめくろうとした大輝!!?

やめろ、触るな。
俺の千歳に、触るな!!

デレついた顔で千歳に手を伸ばそうとする大輝に、考えるより先に体が動いていた。

ペチンッ!

俺が大輝の手を叩いたのと同時に、驚いた大輝がワッと泣き始め、騒然となる園児の列。
千歳はただ、目を丸くしている。

「晴臣くん!?なんでいきなり大輝くんのこと叩いたの!?」

いつも優しい純子先生が、すごく怒っている。
でも、どれだけ怒られても、大輝を叩いた理由なんて言えるはずなかった。

先生は罰として俺に誰とも手を繋がせなかった。
俺と手を繋ぐはずだった真広は、先生と手を繋いでいた。
千歳は結局大輝と手を繋いでいたし。

公園に着いても、いきなり人を叩くようなヤツとは誰も遊んでくれなくて。
この調子だと弁当も一人ぼっち。
あんなに楽しみにしていた遠足なのに、今すぐ家に帰りたい。

これも全部、千歳が可愛い過ぎるせいだ。

惨めな気持ちでリュックサックから敷物を出して広げていると。

「はるおみ」

振り返ると千歳が立っていた。

「おべんとうたべたら、だいきくんにいっしょにあやまりにいこう」

千歳も俺の敷物の隣に敷物を広げ、弁当箱を開け始めた。

「なにしてるの?はやくたべよう」

さっきまでの惨めな気持ちが、嘘みたいに消えていく。

「みてみて!ママがたまごやきハートにしてくれたの」

千歳があんまりかわいく笑うから、胸がギュッとなって、母さんが折角作ってくれた弁当も、持ってきたお菓子も全然食べられなかった。

ああ、そうか。
俺は千歳さえ側にいてくれたら、他には何も要らないんだ。

千歳こそが、俺の全て。

一度家に帰って、母さんが準備してくれていたお菓子を千歳の家に持って行く。
まだ胸がいっぱいで、腹は減ってなかったけど。
千歳の笑った顔を何度でも見たくて。

一緒に食べたそれは、もともと好物だったけど、今まで食べたどんなものよりも美味しく感じた。
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