3 / 50
3.始まりの音
しおりを挟む
そう決意したのが、今から数年前。
図書館で本を読み漁ったけれど何も見つからない。
王族専用の文献まで見せてもらったけれど、見つからなかった。
だけど城から一番離れた北の塔。
貴族の犯罪者や表に出せない貴族が収容される場所。
誰も近づかないそこで、埃の被った古い本を見つけたの。
それに書いてあったのは、探し続けていた聖女を召喚する方法だった。
表紙を見る限り正規で発売した本ではない。
だけど試さないって手もない。
必要なものを準備して早く取り掛かりたかったのに……城に戻ったところをメイドに見つかってしまった。
まぁリックがいればもう大丈夫だけどね。
私は手入れされた庭を駆け抜けると、本を片手に聖堂へ向かった。
聖堂、そこは異世界から聖女がやってくると伝えられている神聖な場所。
聖女様が現れた時には、尖塔にある鐘が大きな音で鳴り響くと言い伝えられている。
しかし聖女はここ数百年現れておらず、その音を聞いた人はもういないだろう。
聖堂にやってくると、私は真っ先に鐘を見上げる。
揺れる事の無い鐘、どんな音色なのかしら。
ふと後ろから駆け寄ってくる音が耳にとどく。
きっとリチャードが追いかけてきたのだろう。
彼は王都の騎士団に入隊した実力者。
私を捕まえるなんて簡単なことだが、彼はいつだってそう、捕まえないで見逃してくれる。
危険だとわかれば即止められてしまうけれど、友達の特権だわ。
私はシーンと静まり返った聖堂へ入ると、中からひんやりとした空気が吹き込んでくる。
本を開き書いてある手順を見ながら、薄暗い側廊を進んで行くと、突然地面が揺れ体が大きく傾いた。
そのまま強く床へ体を打ち付けると、リックの声が耳にとどく。
「エリザベス様!!!」
彼の声に顔を上げようとした刹那、目の前が暗闇に染まると意識が闇の中へ沈んで行った。
・
・
・
ふと気が付くと、視界がぼやけ何も見えない。
耳も何だか……とても遠くてはっきりとは聞き取れない。
思うように体も動かせず、声を出すことも出来ない。
次第に涙が溢れ、感情が高ぶると赤ん坊の様に泣きじゃくった。
暫くすると薄っすらと見える視界に見たこともない女の姿が映る。
その瞳に映った自分の姿は赤子。
最初は訳が分からなかった。
さっきまで聖堂に居たはずなのに、どういうことなのかしら?
考えてもわからないし、赤子の脳では考えが定まらない。
だけど成長していくにつれて、ここは聖女たちがやってくる異世界だと気が付いた。
聖女については、国に保管されている古文書を熟読したわ。
文明が発達した世界からやってくる聖女様は、様々な知識で国を豊かにしてくれる。
だからこそ国を挙げて聖女をもてなすのよ。
けれど実際に異世界を目の当たりにすると、想像していた以上に近代的で、驚きを隠せなかった。
自動で開閉する扉に、太陽のように明るい人工的な光。
馬車なんて比較にならないほど便利な移動手段に、遠隔でコミュニケーションが取れる機械。
王族や爵位もなく、国民全員が教育を受けられる平等な世界。
日夜人々が活動し慌ただしく過ぎていく日常。
スポーツも勉強も女だろうと男だろうと好きに選べる。
なんて素晴らしい世界のなのかしら。
私は新たな異世界ライフを満喫しながらスクスク成長していった。
学校に通うようになると友達も出来て、自由に遊びまわった。
爵位がないから誰とでも気軽に話せ、無駄な駆け引きなんて必要ない。
勉学にも精を出して、将来何になろうかなんて考えたりして。
貴族だった頃は将来どうなるのかは決まっていた。
だから全てが新鮮で毎日が充実いていた。
だけどどれだけ時が経とうとも、エリザベスの記憶は薄れる事無くはっきりと残り続けたの。
年齢を重ねていくにつれて驚いたのが、髪や瞳の色が違っても、見目がまるであの世界にいたエリザベスとそっくりになっていくことだった。
この世界での名は里咲、あちらの世界での愛称もリサ。
全く別人となったはずだけれど、何とも不思議な感覚だった。
図書館で本を読み漁ったけれど何も見つからない。
王族専用の文献まで見せてもらったけれど、見つからなかった。
だけど城から一番離れた北の塔。
貴族の犯罪者や表に出せない貴族が収容される場所。
誰も近づかないそこで、埃の被った古い本を見つけたの。
それに書いてあったのは、探し続けていた聖女を召喚する方法だった。
表紙を見る限り正規で発売した本ではない。
だけど試さないって手もない。
必要なものを準備して早く取り掛かりたかったのに……城に戻ったところをメイドに見つかってしまった。
まぁリックがいればもう大丈夫だけどね。
私は手入れされた庭を駆け抜けると、本を片手に聖堂へ向かった。
聖堂、そこは異世界から聖女がやってくると伝えられている神聖な場所。
聖女様が現れた時には、尖塔にある鐘が大きな音で鳴り響くと言い伝えられている。
しかし聖女はここ数百年現れておらず、その音を聞いた人はもういないだろう。
聖堂にやってくると、私は真っ先に鐘を見上げる。
揺れる事の無い鐘、どんな音色なのかしら。
ふと後ろから駆け寄ってくる音が耳にとどく。
きっとリチャードが追いかけてきたのだろう。
彼は王都の騎士団に入隊した実力者。
私を捕まえるなんて簡単なことだが、彼はいつだってそう、捕まえないで見逃してくれる。
危険だとわかれば即止められてしまうけれど、友達の特権だわ。
私はシーンと静まり返った聖堂へ入ると、中からひんやりとした空気が吹き込んでくる。
本を開き書いてある手順を見ながら、薄暗い側廊を進んで行くと、突然地面が揺れ体が大きく傾いた。
そのまま強く床へ体を打ち付けると、リックの声が耳にとどく。
「エリザベス様!!!」
彼の声に顔を上げようとした刹那、目の前が暗闇に染まると意識が闇の中へ沈んで行った。
・
・
・
ふと気が付くと、視界がぼやけ何も見えない。
耳も何だか……とても遠くてはっきりとは聞き取れない。
思うように体も動かせず、声を出すことも出来ない。
次第に涙が溢れ、感情が高ぶると赤ん坊の様に泣きじゃくった。
暫くすると薄っすらと見える視界に見たこともない女の姿が映る。
その瞳に映った自分の姿は赤子。
最初は訳が分からなかった。
さっきまで聖堂に居たはずなのに、どういうことなのかしら?
考えてもわからないし、赤子の脳では考えが定まらない。
だけど成長していくにつれて、ここは聖女たちがやってくる異世界だと気が付いた。
聖女については、国に保管されている古文書を熟読したわ。
文明が発達した世界からやってくる聖女様は、様々な知識で国を豊かにしてくれる。
だからこそ国を挙げて聖女をもてなすのよ。
けれど実際に異世界を目の当たりにすると、想像していた以上に近代的で、驚きを隠せなかった。
自動で開閉する扉に、太陽のように明るい人工的な光。
馬車なんて比較にならないほど便利な移動手段に、遠隔でコミュニケーションが取れる機械。
王族や爵位もなく、国民全員が教育を受けられる平等な世界。
日夜人々が活動し慌ただしく過ぎていく日常。
スポーツも勉強も女だろうと男だろうと好きに選べる。
なんて素晴らしい世界のなのかしら。
私は新たな異世界ライフを満喫しながらスクスク成長していった。
学校に通うようになると友達も出来て、自由に遊びまわった。
爵位がないから誰とでも気軽に話せ、無駄な駆け引きなんて必要ない。
勉学にも精を出して、将来何になろうかなんて考えたりして。
貴族だった頃は将来どうなるのかは決まっていた。
だから全てが新鮮で毎日が充実いていた。
だけどどれだけ時が経とうとも、エリザベスの記憶は薄れる事無くはっきりと残り続けたの。
年齢を重ねていくにつれて驚いたのが、髪や瞳の色が違っても、見目がまるであの世界にいたエリザベスとそっくりになっていくことだった。
この世界での名は里咲、あちらの世界での愛称もリサ。
全く別人となったはずだけれど、何とも不思議な感覚だった。
1
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる