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21.新しい暮らし
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穏やかな日常が過ぎていく中、小さな変化が大きくなっていく。
自分は里咲だと言い聞かせても、ふとしたときエリザベスに戻っている自分がいた。
北の塔に居た時も同じような気持ちになったが、今ほどではない。
里咲であった記憶に靄がかかったように薄れ、友人だけでなく家族の顔も思い出せなくなっていった。
異世界に生まれ変わったときは、年を取るごとにエリザベスの記憶がはっきりと蘇った。
リックやクリス、友人や家族の顔を忘れた事なんて一度もない。
だからいつもこの世界と比べていた。
あの世界は近代的で便利で豊かで平和で暮らしやすかった。
何不自由なんてなかったはずなのに、どこかしっくりこなくて……。
だけどそれは前世の記憶があるからだとそう思っていた。
でもそうじゃなかったのかもしれない。
リックと過ごす日々が、私の居場所なのだとそう感じる。
居なかった3年間を埋めるように彼と話をするのはとても楽しくて、多少不便な生活でも馴染んでいく自分が居た。
そんな変化に戸惑うが、それを口にすることは出来なかった。
ある夜夕食を終え庭へ出ると、リックが温かいお茶を手に隣へ腰かけた。
白い湯気を見つめながらカップを受け取ると、湯気越しに彼を見つめる。
「ねぇ……お父、いえ、エリザベスの家族は元気かしら?」
ずっと気になっていたが、エリザベスではない自分が聞くことではないと考えていた。
だけど里咲の記憶が薄れていく中で、思い出すのはエリザベスの家族の姿。
聞いてもエリザベスとして戻るつもりもない、だけど喉の奥にずっと引っかかり……気かずにはいられなかった。
彼らの姿が頭に浮かぶと、物悲しくなってしまう。
「えぇ、ご家族は皆、あのお屋敷で暮らしております。お母上はよく僕の屋敷へ茶会に来られますよ。お父上は今遠征で王都を離れておりますが元気です。いや、元気になったと言えばいいですかね。エリザベス様が居なくなって数か月は大分憔悴しておりましたから。血眼になってあなたを探していた」
私を探す両親の姿がはっきりと浮かび上がる。
胸が痛み溢れそうになる涙を必死にこらえると、そっと頭を垂れた。
エリザベスとして彼らに会いたい、そんな気持ちが芽生え始める。
だけど私は……里咲であって……。
ダメよ、あまり深く考えないでおきましょう……。
私はその気持ちに蓋をすると、話題を変えるように話し始めたのだった。
数日後、今日も懲りずに職探しをしてみるが、見つかる気配はない。
どこも黒髪に黒い瞳の私を相手にはしてくれなかった。
はぁ……いつまでこの妨害は続くのかしらね。
だけど早く何とかしないと……このままリックと居続けるのは怖い。
エリザベスに戻ってしまうことが怖い。
戻りたいと願っても……私が戻れば……。
ベンチに座り込み、掌へ顎を乗せ深くため息をつき沈む夕日を眺めていると、ふとこちらに近づいてくる女性の姿が目に映る。
スラッと伸びた長い手足に、艶やかな長いブロンドの髪。
綺麗な女性だわ、と眺めているとなぜか私の前で立ち止まった。
驚き慌てて姿勢を正すと、彼女は屈みながら私の瞳を覗き込む。
「ねぇ、あなた職を探しているのでしょ?もしよかったら私の店で働いてみない?」
「えっ、えぇ、職は探しているけれど……」
彼女の姿をまじまじと見つめてみるが、顔見知りではない。
エリザベスの記憶の中でも見つからなかった、
今まで尋ねた店に、こんな綺麗な女性はいなかったわ。
有難い申し出だけれども何だか怪しいわね……。
もしかして風俗店への誘いかしら……?
不信感を抱きながら見つめていると、彼女は妖麗な笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、急にこんな話をすれば驚くわよね。私の名前はオリヴィア。街の外れで酒場を経営しているわ。ちょうど人手が足りなくて困っていたところにあなたの噂を耳にしたの。毎日街で職を探している女の子がいるってね。どう、いかがかしら?」
酒場?居酒屋でのバイト経験はあるわ。
だけどやっぱり怪しいわよね……。
でもこのまま職を探し続けても見つからない。
とりあえずお店を見せてもらおうかしら。
「ぜひと言いたいところなんだけど、一度店を見せてもらってもいいかしら」
「えぇ、もちろんよ」
彼女はニッコリ笑みを深めると、こっちよと歩き始める。
買い物かごを手に取り慌てて立ち上がると、彼女の背を追いかけ街の外れへ進んで行った。
自分は里咲だと言い聞かせても、ふとしたときエリザベスに戻っている自分がいた。
北の塔に居た時も同じような気持ちになったが、今ほどではない。
里咲であった記憶に靄がかかったように薄れ、友人だけでなく家族の顔も思い出せなくなっていった。
異世界に生まれ変わったときは、年を取るごとにエリザベスの記憶がはっきりと蘇った。
リックやクリス、友人や家族の顔を忘れた事なんて一度もない。
だからいつもこの世界と比べていた。
あの世界は近代的で便利で豊かで平和で暮らしやすかった。
何不自由なんてなかったはずなのに、どこかしっくりこなくて……。
だけどそれは前世の記憶があるからだとそう思っていた。
でもそうじゃなかったのかもしれない。
リックと過ごす日々が、私の居場所なのだとそう感じる。
居なかった3年間を埋めるように彼と話をするのはとても楽しくて、多少不便な生活でも馴染んでいく自分が居た。
そんな変化に戸惑うが、それを口にすることは出来なかった。
ある夜夕食を終え庭へ出ると、リックが温かいお茶を手に隣へ腰かけた。
白い湯気を見つめながらカップを受け取ると、湯気越しに彼を見つめる。
「ねぇ……お父、いえ、エリザベスの家族は元気かしら?」
ずっと気になっていたが、エリザベスではない自分が聞くことではないと考えていた。
だけど里咲の記憶が薄れていく中で、思い出すのはエリザベスの家族の姿。
聞いてもエリザベスとして戻るつもりもない、だけど喉の奥にずっと引っかかり……気かずにはいられなかった。
彼らの姿が頭に浮かぶと、物悲しくなってしまう。
「えぇ、ご家族は皆、あのお屋敷で暮らしております。お母上はよく僕の屋敷へ茶会に来られますよ。お父上は今遠征で王都を離れておりますが元気です。いや、元気になったと言えばいいですかね。エリザベス様が居なくなって数か月は大分憔悴しておりましたから。血眼になってあなたを探していた」
私を探す両親の姿がはっきりと浮かび上がる。
胸が痛み溢れそうになる涙を必死にこらえると、そっと頭を垂れた。
エリザベスとして彼らに会いたい、そんな気持ちが芽生え始める。
だけど私は……里咲であって……。
ダメよ、あまり深く考えないでおきましょう……。
私はその気持ちに蓋をすると、話題を変えるように話し始めたのだった。
数日後、今日も懲りずに職探しをしてみるが、見つかる気配はない。
どこも黒髪に黒い瞳の私を相手にはしてくれなかった。
はぁ……いつまでこの妨害は続くのかしらね。
だけど早く何とかしないと……このままリックと居続けるのは怖い。
エリザベスに戻ってしまうことが怖い。
戻りたいと願っても……私が戻れば……。
ベンチに座り込み、掌へ顎を乗せ深くため息をつき沈む夕日を眺めていると、ふとこちらに近づいてくる女性の姿が目に映る。
スラッと伸びた長い手足に、艶やかな長いブロンドの髪。
綺麗な女性だわ、と眺めているとなぜか私の前で立ち止まった。
驚き慌てて姿勢を正すと、彼女は屈みながら私の瞳を覗き込む。
「ねぇ、あなた職を探しているのでしょ?もしよかったら私の店で働いてみない?」
「えっ、えぇ、職は探しているけれど……」
彼女の姿をまじまじと見つめてみるが、顔見知りではない。
エリザベスの記憶の中でも見つからなかった、
今まで尋ねた店に、こんな綺麗な女性はいなかったわ。
有難い申し出だけれども何だか怪しいわね……。
もしかして風俗店への誘いかしら……?
不信感を抱きながら見つめていると、彼女は妖麗な笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、急にこんな話をすれば驚くわよね。私の名前はオリヴィア。街の外れで酒場を経営しているわ。ちょうど人手が足りなくて困っていたところにあなたの噂を耳にしたの。毎日街で職を探している女の子がいるってね。どう、いかがかしら?」
酒場?居酒屋でのバイト経験はあるわ。
だけどやっぱり怪しいわよね……。
でもこのまま職を探し続けても見つからない。
とりあえずお店を見せてもらおうかしら。
「ぜひと言いたいところなんだけど、一度店を見せてもらってもいいかしら」
「えぇ、もちろんよ」
彼女はニッコリ笑みを深めると、こっちよと歩き始める。
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