22 / 50
22.新しい暮らし
しおりを挟む
オリヴィアについていくと、辺りにないもない郊外にポツンと佇む酒場に到着した。
大きな看板には「酒場のラム」と記され、老舗なのだろう、年季が入っている。
けれど汚らしいという印象はなく、手入れが行き届き、味のある外観には清潔感があった。
裏口へ案内され中へ入ると、狭い店内にテーブルが並び、奥にカウンター席がみえる。
こじんまりとした雰囲気で、常連客が多そうな酒場だ。
「適当に座って、今お茶を用意するわ」
言われた通りカウンター席へ座ると、オリヴィアは棚から筒を取り出し、お茶を淹れた。
店内を見渡してみると、異国の装飾品や古い絵画が飾られている。
絵画には国を象徴する旗と城、そして護衛騎士の姿が描かれていた。
「とてもいいお店ね、ぜひ働きたいわ。けれど……本当にいいのかしら?私の事を存じているのでしょう?」
侯爵家に妨害されているのを知った上で、雇ってもらっても大丈夫なのかしら?
不安気にオリヴィアへ顔を向けると、湯気が立ったお茶を私の前に出した。
「えぇ、大丈夫よ。あなたの事は知っているわ。何をしたのかは知らないけれど、侯爵家に目を付けられているんでしょう。安心して、この店は別ルートから食材を輸入しているのよ。だから侯爵家に文句を言われる心配も筋合いもないわ。ねぇ、もしよかったら今日お試しで働いてみない?」
オリヴィアは一紙幣をテーブルへ置くと、ウィンクしてみせた。
一紙幣……今日買った食材代金合わせても御釣りがくるわ。
じっと一紙幣を見つめながら出されたお茶を口へ運ぶ。
今日リックは遅くなると言っていたわね。
夕飯の下準備は終わっているし、1~2時間働かせてもらって、自分が出来るところ見せておきたいわね。
後は給与がどんなものなのか聞いておかないと。
そこそこ収入があれば、リックの家を出て近くに家を借りれるわ。
「ぜひお願いしたいわ。ところでお給料はどうなっているのかしら?」
彼女は嬉しそうに笑いながら私の隣へ腰かけると、雇用契約や仕事の内容について詳しく話してくれた。
夕日が沈んだ頃、オリヴィアは開店の準備を始める。
用意された服に着替え、酒の仕込みや酒の肴を下準備を手伝う。
ユニホームは胸が大きく空いたシャツに膝上丈のスカート。
黒いエプロンを腰に巻き、靴は動きやすいスニーカー。
多少の露出はあるものの許容範囲。
「あーそうだわ、酔っぱらい相手だから、手癖が悪い客もいるの。その時は容赦しなくていいからね。何かあれば私に言いなさい」
「えぇ……わかったわ」
手癖が悪い人ってどんな感じなのかしら?
まぁ働いてみればわかるわよね。
腰に巻いたエプロンの紐を結びなおし、開店準備を終え店を開けると早速お客さんがやってきた。
「オリヴィア、ビールを一つ。おっ?新人さんかい?」
いらっしゃいませと出迎えると、図体の大きい男は私の姿をジロジロと眺める。
「別嬪さんだね、こんないい子どこで見つけてきたんだ?」
男は挨拶とでも言わんばかりに私のお尻へ手を伸ばす。
その姿にオリヴィアはニッコリ笑みを深めると、手に持っていたナイフを投げた。
私と男の間をナイフ通過し壁に刺さると、男が動きを止める。
「おさわりは禁止よ。ここはそういう店じゃないの。何度も言わせないでイワン」
「おぉ……すまなかった」
オリヴィアはこちらへ近づいてくると、壁に刺さったナイフを回収する。
「この人みたいに素面でもバカな事をしようとする客もいるから気を付けてね。何かされそうになったら××を蹴り上げても構わないわ」
イワンへ聞こえるようにニコニコと爽やかな笑みを浮かべて話す彼女の姿に、男は顔を引きつらせると逃げるように後ずさっていった。
そんな彼女の姿に思わず見惚れてしまう。
手癖といのはセクハラの事だったのね。
だけど戦っていいのなら余裕だわ、この店なら働けそう。
ナイフをしまう彼女の姿を眺めながら、私は改めてここで働く決意を固めたのだった。
最初の出だしはあれだったけれど、ここの酒場は思った通り馴染みのお客さん多く、酒場は穏やかに賑わっていた。
新人の私にも優しく話しかけてくれて、仕事しているのに楽しい気分になる。
オーダーをとって席へ運んで、前の世界の居酒屋と変わらない。
違うところと言えば、ハンディーではない手書きの伝票ぐらいかしらね。
「リサちゃんは可愛いねぇ~」
ベロンベロンに酔った男が私の肩を抱くと、酒臭さに思わず鼻をつまむ。
酔った客に絡まれるのは想定済み、オリヴィアの許可も頂いているし怖くないわ。
そのまま胸に手が伸びてくるのを確認すると、私は男の腕を掴み締め上げた。
「痛ッ、いたたたたたたた」
「おさわりは禁止ですわ、おじ様」
腕をねじり床へ座らせると、そっと顔を上げる。
オリヴィアと視線が絡むと、よくやったとガッツポーズを見せてくれた。
そんな私の姿に周りにいた客たちは苦笑いを浮かべると、触ろうとする客もいなくなったのだった。
大きな看板には「酒場のラム」と記され、老舗なのだろう、年季が入っている。
けれど汚らしいという印象はなく、手入れが行き届き、味のある外観には清潔感があった。
裏口へ案内され中へ入ると、狭い店内にテーブルが並び、奥にカウンター席がみえる。
こじんまりとした雰囲気で、常連客が多そうな酒場だ。
「適当に座って、今お茶を用意するわ」
言われた通りカウンター席へ座ると、オリヴィアは棚から筒を取り出し、お茶を淹れた。
店内を見渡してみると、異国の装飾品や古い絵画が飾られている。
絵画には国を象徴する旗と城、そして護衛騎士の姿が描かれていた。
「とてもいいお店ね、ぜひ働きたいわ。けれど……本当にいいのかしら?私の事を存じているのでしょう?」
侯爵家に妨害されているのを知った上で、雇ってもらっても大丈夫なのかしら?
不安気にオリヴィアへ顔を向けると、湯気が立ったお茶を私の前に出した。
「えぇ、大丈夫よ。あなたの事は知っているわ。何をしたのかは知らないけれど、侯爵家に目を付けられているんでしょう。安心して、この店は別ルートから食材を輸入しているのよ。だから侯爵家に文句を言われる心配も筋合いもないわ。ねぇ、もしよかったら今日お試しで働いてみない?」
オリヴィアは一紙幣をテーブルへ置くと、ウィンクしてみせた。
一紙幣……今日買った食材代金合わせても御釣りがくるわ。
じっと一紙幣を見つめながら出されたお茶を口へ運ぶ。
今日リックは遅くなると言っていたわね。
夕飯の下準備は終わっているし、1~2時間働かせてもらって、自分が出来るところ見せておきたいわね。
後は給与がどんなものなのか聞いておかないと。
そこそこ収入があれば、リックの家を出て近くに家を借りれるわ。
「ぜひお願いしたいわ。ところでお給料はどうなっているのかしら?」
彼女は嬉しそうに笑いながら私の隣へ腰かけると、雇用契約や仕事の内容について詳しく話してくれた。
夕日が沈んだ頃、オリヴィアは開店の準備を始める。
用意された服に着替え、酒の仕込みや酒の肴を下準備を手伝う。
ユニホームは胸が大きく空いたシャツに膝上丈のスカート。
黒いエプロンを腰に巻き、靴は動きやすいスニーカー。
多少の露出はあるものの許容範囲。
「あーそうだわ、酔っぱらい相手だから、手癖が悪い客もいるの。その時は容赦しなくていいからね。何かあれば私に言いなさい」
「えぇ……わかったわ」
手癖が悪い人ってどんな感じなのかしら?
まぁ働いてみればわかるわよね。
腰に巻いたエプロンの紐を結びなおし、開店準備を終え店を開けると早速お客さんがやってきた。
「オリヴィア、ビールを一つ。おっ?新人さんかい?」
いらっしゃいませと出迎えると、図体の大きい男は私の姿をジロジロと眺める。
「別嬪さんだね、こんないい子どこで見つけてきたんだ?」
男は挨拶とでも言わんばかりに私のお尻へ手を伸ばす。
その姿にオリヴィアはニッコリ笑みを深めると、手に持っていたナイフを投げた。
私と男の間をナイフ通過し壁に刺さると、男が動きを止める。
「おさわりは禁止よ。ここはそういう店じゃないの。何度も言わせないでイワン」
「おぉ……すまなかった」
オリヴィアはこちらへ近づいてくると、壁に刺さったナイフを回収する。
「この人みたいに素面でもバカな事をしようとする客もいるから気を付けてね。何かされそうになったら××を蹴り上げても構わないわ」
イワンへ聞こえるようにニコニコと爽やかな笑みを浮かべて話す彼女の姿に、男は顔を引きつらせると逃げるように後ずさっていった。
そんな彼女の姿に思わず見惚れてしまう。
手癖といのはセクハラの事だったのね。
だけど戦っていいのなら余裕だわ、この店なら働けそう。
ナイフをしまう彼女の姿を眺めながら、私は改めてここで働く決意を固めたのだった。
最初の出だしはあれだったけれど、ここの酒場は思った通り馴染みのお客さん多く、酒場は穏やかに賑わっていた。
新人の私にも優しく話しかけてくれて、仕事しているのに楽しい気分になる。
オーダーをとって席へ運んで、前の世界の居酒屋と変わらない。
違うところと言えば、ハンディーではない手書きの伝票ぐらいかしらね。
「リサちゃんは可愛いねぇ~」
ベロンベロンに酔った男が私の肩を抱くと、酒臭さに思わず鼻をつまむ。
酔った客に絡まれるのは想定済み、オリヴィアの許可も頂いているし怖くないわ。
そのまま胸に手が伸びてくるのを確認すると、私は男の腕を掴み締め上げた。
「痛ッ、いたたたたたたた」
「おさわりは禁止ですわ、おじ様」
腕をねじり床へ座らせると、そっと顔を上げる。
オリヴィアと視線が絡むと、よくやったとガッツポーズを見せてくれた。
そんな私の姿に周りにいた客たちは苦笑いを浮かべると、触ろうとする客もいなくなったのだった。
1
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる