悪役令嬢エリザベート物語

kirara

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エリザベート嬢はあきらめない

指輪の下に

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 レティシア様に話を伺った翌日、僕はアルベールを訪ねた。彼の実家は王都から随分と離れた辺境の地にある。
 彼はロレーヌ辺境伯の跡取り息子だった。

 突然の訪問にもかかわらず、アルベールは僕の訪問を喜んでくれた。

「まさか、リアム先輩が来てくださるとは思いませんでしたよ」

 僕らは家を行き来するほど親しくはない。

「どうされましたか?何もないのに貴方がこんな辺境の地まで、僕を訪ねてくるとは思っていませんよ」

「別に急ぎの用ではないんだ。今、屋敷にアミルダ王国のレティシア様が来られていてね。レティシア様はエリザを大変可愛がっておられるんだ。

 それでまた王都学園でお世話になるだろう君に、一度会ってみたいと言われていたから。さっそく誘いに来たという訳さ」

「聖女レティシア様とお会い出来るとは、光栄ですね。貴方の義母上、マーガレット様のお母様でしたね。分かりました」

 アルベールの動きは早かった。
 生活魔法で外出着に着替え、屋敷の者に出かける事を告げた。

 僕の瞬間移動でアルベールと一緒に屋敷に戻ってきて、レティシア様の滞在している客間を訪ねた。

 レティシア様には今日アルベールの元を訪ねる事は知らせていた。

「レティシア様、ロレーヌ辺境伯のご子息のアルベール・ロレーヌ君を紹介致します」

「アルベール、こちらはアミルダ王国の聖女のレティシア様です」

「初めましまして、アルベール様。ようこそいらっしゃいました。リアムが無理をいって急がせたのでしょ?」

「初めまして、レティシア様。急な事で驚きはしましたが、貴方に紹介して頂ける幸運に恵まれて、嬉しく思っております」

 客間にお茶とお菓子が用意され、レティシア様はエリザのドリミア学園での様子などを聞き、とても楽しげな様子だった。

 食堂の汚職事件の話が終わり、魅了魔法や闇魔法の話しになった。

「アルベール様は魅了魔法を相手に返す力を持っていらっしゃるのね。それは頼もしいわね。

 貴方もリアムと同じように、学園の重責を負う立場にある事が多い方です。

 来年エリザが王都学園に入学したら、また、貴方のお世話になる事と思います。

 前回は上手く回避出来たようですけれど、先の事はわかりません。

 アルベール様。闇魔法や魅了魔法にかからないように、私の加護を差し上げたいのですが宜しいでしょうか?」

「もちろんです。レティシア様。大変助かります」

「その右手の指輪はいつもしておられますか?」

「はい。亡き母の形見で肌身離さず身に着けています」

「では、その指輪の下に私の加護の印を付けても、人には分かりませんね。
 申し訳ありませんが、少しの間だけ外して頂いてもいいかしら?」

 アルベールが指輪を外して右手を差し出した。

「これで宜しいですか?」

 レティシア様がその手に触れた。すると、右手の薬指に小さな紫の薔薇のアザが現れた。

「これで大丈夫です」

 アルベールはそのアザをしばらく見ていたが、握っていた指輪をその指に戻した。
 アザは指輪の下に隠れて見えなくなった。

「私の孫達がお世話になるお礼です。エリザはまだまだお転婆なところが抜けないでしょ?

 王都学園に入学したら、また、何かやらかすかも知れませんが。宜しくお願い致します」

「彼女は大変楽しい令嬢ですね。入学して来られるのを楽しみにしています」

 これでまた1人。
 ロリエッタの魅了魔法が阻止できた。
 他の人達にも会わなけば。

 その日の夕方、彼女とアントワーズはアミルダ王国に帰って行った。

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