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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎
食事会
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-side リアム-
その日の晩、この世界に来てから初めて夢を見た。
…………
…………………
部屋の中には、今の俺と同じ赤髪青目の女の人がいる。美人というよりは、可愛いという感じだ。
“リアム。あたしはもうすぐ死ぬかもしれない。ごめん。ごめんねえ”
そんな女の人は俺を撫でながら、悲しそうに謝る。
“クズガーが、前当主を殺したところをあたしが見なかったら、こんなことにはならなかったのよ”
“あう?”
前領主を殺したところを見た……、か。
いきなりとんでもない情報が出てきたな。
“それに、あなたのお父さんはあの人なんかではないのよ……。本当は----”
………………
………
『リアム。起きろってリアム』
「んん……。どうしたの?ルーカス。そんな顔して」
『どうしたって。お前がうなされているからだろ』
そんなひどい夢ではなかったんだけどな。
やけに、リアルだったが。
というか、多分。
「……。そうか。これは、リアムの記憶か……」
クズガーが執拗に俺を狙う理由は、母親が彼の弱みを握っていたから。それに最後、クズガーは実の父親ではないって言ってたけど。では、本当の父親は誰なんだろう?……と思ったけど、今の俺にはあまり、関係ないから関わるだけ無駄か。
『はー。心配して損したぜ。ほっとしたら腹減ってきた』
ジトーーー。
『ほ、ほ、本当だぞ。サーロインステーキよりもリアムの方が大事だからな』
わかりやすい。というか、天秤にかける対象がサーロインステーキって。
「ぷっ。まあいいか。何がいい?」
『うーん。サーロインステーキ』
「やっぱ、食べたいものを言っただけか。
朝から食うなあ。それに贅沢」
『いいだろ。美味しいもの食ってなきゃやってられねえよ。こんな退屈な場所』
「それについては同意する」
俺は料理を開始する。……と言っても塩を振って焼くだけだが。そうだ!作っている最中についでに聞いておこう。
「……ねえ、ルーカス」
『ん……?なんだ。真剣な顔して』
「俺が、クズガーの子供ではない可能性ってあるの?」
そう、1番初めに俺が伯爵家の子供だと教えたのはルーカスなのだ。クズガー以外の父親について何か知っているのかもしれないし、聞いておいて損はないだろう。
『ああー。それはあるかもしれねえな。実を言うと、俺はお前が生まれるところは見てないんだ』
あー。……やっぱりか。
『俺とお前は同じ時に神界から地上へ送られて、俺の方が早く目覚めたというだけだからな。時間にすると、お前が生後3ヶ月くらいの時だから、その前のことは知らねえんだよな。鑑定が使えるから苗字が分かって、あとは周りの様子から、クズガーの息子かなと思っただけだ。前にも言ったけど、転生前の様子は深く見てねえから、今更だけど、間違えているかもしれねえ。苗字だって、親が書類上認めれば変わる。それを伝えていなかった。すまねえ』
「ありがとう。謝らなくても、俺がリアムとして苦労しないで生きていけたのはルーカスのおかげも大きいから大丈夫だよ」
そう、ルーカスがいなかったら使用人の名前すら覚えていなくて、怪しまれただろうなと思う。それを解決してくれただけでも感謝が尽きない。……それにしても、道理でクズガーが俺と一度も会わなかったわけだ。
書類上は親だが、実の親ではないのなら納得である。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
その後、沢山食べた俺たちはそのあと王様と謁見することになった。謁見は食事会形式で行われるらしい。
①俺が5歳の子供だから。
②レオンが冒険者で堅苦しいのは苦手だろうから。
③謁見の間を日常的な世間話をするためだけに使うのは金がかかる
以上の理由で、お茶でもしながらお話でもどうですか?と気を遣って気楽な感じにセッティングしてくれたようだ。
「Sランク冒険者様であるレオン様。そして、リアム様をお連れいたしました」
「入れ」
威厳ある声がするとドアが開く。
中に入ると、大きい円卓のテーブルがあり、その中に目立つ金髪青眼の男の人が座っていた。ノアとそっくりだ。
年齢は、30後半くらいだろうか?鍛えられた肉体に、少し日焼けした肌。
王者の厳格な雰囲気が漂っている。
後ろに、側近を従え、隣にノアとヘンリーがいることからもすぐ王様だと分かった。
「よく来たな。レオン殿、リアム殿」
「お久しぶりです。イーサン様」
「ああ。堅苦しいのはいいから、早く座れ」
促されて、座る。俺たちが着席したのを見て、俺に向かって笑いかけてくる。
「初めましてだな。リアム殿。俺がこの国の王、イーサン=ドライだ」
見た目とは裏腹に優しそうな声で言った。
「……お初にお目にかかります。リアムと申します。よろしくお願いいたします。」
レルの地獄のレッスンを思い出しながら、しっかりと挨拶する。
今更だが、思い出したら、震えが止まらなくなってきたからやめよう。
「ふはは。そう緊張せずとも、良い。ただ、君のためにも早く本題に入った方がいいか。ヘンリー。あれを」
「はっ」
そう言って、ヘンリーが書類を持ってきて、俺とレオンに渡す。
「ここにあるのが、今回の戦争に参加した場合、彼らに与える特権です」
「(……!!これはなかなかだね)」
「(ああ。すげえな)」
-リアム殿への戦争に参加した場合の特権-
① 手柄に関わらず、男爵級を付与。手柄に応じ、要相談。
② 10名までの平民籍任命権の付与。
③ 学園入学の許可。
④ 参加金、10万ドライ付与(1000万円)。手柄に応じ、要相談。
⑤ 王族所有の屋敷付与。
⑥ 宮廷騎士団への入団推薦状を付与。
破格の内容が書いてあった。
「(……どうみる?ルーカス)」
『うーん。この国に縛り付ける気満々だな。貴族位与えて、学園に入れる。そして、将来は宮廷騎士団へ入団させようと言ったところか。使用人にもこの国の平民籍を与えることで、この国から出づらくすると見える。だが、この国で暮らす分には悪くないな。特にお前のように安定した生活を送りたいんだったら。いざとなっても、俺がいればこの国脱出も容易いし、貰えるもんは貰っといた方がいいのかもな』
「(たしかに、この国で暮らすことを決めるんだったら破格の待遇だし、いざとなってもルーカスがいる限り大丈夫か。うん。そう聞くと悪くなさそうだ。レオンは?)」
「(俺の方も悪くねえな。強いて言えば、いきなり、伯爵位を与えようとしてくるのはやりすぎだろ。と言ったところだけだ)」
「(え、すご。それだけレオンが価値と実績があるってことか)」
『だな。それに、お前も、いざとなった時自分1人でも脱出できるくらいの力はあるだろ。俺らと仲良くしているうちは助けてやれるし、貰えるもんは貰っといた方がいい気もするな』
「(たしかに。冒険者やめた時、貴族位があれば世渡りは楽か。……というか、向こうは是が非でも俺らにいい条件を与えて、頷かせたいようだな。……そうだな。俺もこの条件を飲む)」
俺たちが頷いたのを見て、イーサンが頷く。
「お二人とも満足していただけたようで何よりだ。我らも、この条件が出せる限界だったものでな。もっと欲しいと言われたらどうしようかと思っていたところだ」
「流石に、これ以上の条件は望めませんよ」
レオンとイーサンがしばらく、談笑している最中に俺は疑問に思ったことを口にする。
「ところで、この書面はこの場でサインする形ですか?できれば、もう少しじっくり考えてからサインしたいのですが」
ゾクリ……。
そうすると、一瞬イーサンやヘンリー、後ろの側近までもの目が鋭くなったような気がした。思わず冷や汗が出るが、すぐにみんな笑顔に戻ると。
「……ああ。では後日、署名式を正式に設けよう。それまでじっくり考えてくれ」
「あ、ありがとうございます」
今のはなんだったんだろう?と思いながら、俺は出された豪華な飯を遠慮なく食べ、帰ってから異世界の高級料理を再現することに決めたのだった。
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[ランキング]
12位 イーサン(意味: 強い、激しい、引き締まった、厳格な)
その日の晩、この世界に来てから初めて夢を見た。
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部屋の中には、今の俺と同じ赤髪青目の女の人がいる。美人というよりは、可愛いという感じだ。
“リアム。あたしはもうすぐ死ぬかもしれない。ごめん。ごめんねえ”
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………
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「んん……。どうしたの?ルーカス。そんな顔して」
『どうしたって。お前がうなされているからだろ』
そんなひどい夢ではなかったんだけどな。
やけに、リアルだったが。
というか、多分。
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『はー。心配して損したぜ。ほっとしたら腹減ってきた』
ジトーーー。
『ほ、ほ、本当だぞ。サーロインステーキよりもリアムの方が大事だからな』
わかりやすい。というか、天秤にかける対象がサーロインステーキって。
「ぷっ。まあいいか。何がいい?」
『うーん。サーロインステーキ』
「やっぱ、食べたいものを言っただけか。
朝から食うなあ。それに贅沢」
『いいだろ。美味しいもの食ってなきゃやってられねえよ。こんな退屈な場所』
「それについては同意する」
俺は料理を開始する。……と言っても塩を振って焼くだけだが。そうだ!作っている最中についでに聞いておこう。
「……ねえ、ルーカス」
『ん……?なんだ。真剣な顔して』
「俺が、クズガーの子供ではない可能性ってあるの?」
そう、1番初めに俺が伯爵家の子供だと教えたのはルーカスなのだ。クズガー以外の父親について何か知っているのかもしれないし、聞いておいて損はないだろう。
『ああー。それはあるかもしれねえな。実を言うと、俺はお前が生まれるところは見てないんだ』
あー。……やっぱりか。
『俺とお前は同じ時に神界から地上へ送られて、俺の方が早く目覚めたというだけだからな。時間にすると、お前が生後3ヶ月くらいの時だから、その前のことは知らねえんだよな。鑑定が使えるから苗字が分かって、あとは周りの様子から、クズガーの息子かなと思っただけだ。前にも言ったけど、転生前の様子は深く見てねえから、今更だけど、間違えているかもしれねえ。苗字だって、親が書類上認めれば変わる。それを伝えていなかった。すまねえ』
「ありがとう。謝らなくても、俺がリアムとして苦労しないで生きていけたのはルーカスのおかげも大きいから大丈夫だよ」
そう、ルーカスがいなかったら使用人の名前すら覚えていなくて、怪しまれただろうなと思う。それを解決してくれただけでも感謝が尽きない。……それにしても、道理でクズガーが俺と一度も会わなかったわけだ。
書類上は親だが、実の親ではないのなら納得である。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
その後、沢山食べた俺たちはそのあと王様と謁見することになった。謁見は食事会形式で行われるらしい。
①俺が5歳の子供だから。
②レオンが冒険者で堅苦しいのは苦手だろうから。
③謁見の間を日常的な世間話をするためだけに使うのは金がかかる
以上の理由で、お茶でもしながらお話でもどうですか?と気を遣って気楽な感じにセッティングしてくれたようだ。
「Sランク冒険者様であるレオン様。そして、リアム様をお連れいたしました」
「入れ」
威厳ある声がするとドアが開く。
中に入ると、大きい円卓のテーブルがあり、その中に目立つ金髪青眼の男の人が座っていた。ノアとそっくりだ。
年齢は、30後半くらいだろうか?鍛えられた肉体に、少し日焼けした肌。
王者の厳格な雰囲気が漂っている。
後ろに、側近を従え、隣にノアとヘンリーがいることからもすぐ王様だと分かった。
「よく来たな。レオン殿、リアム殿」
「お久しぶりです。イーサン様」
「ああ。堅苦しいのはいいから、早く座れ」
促されて、座る。俺たちが着席したのを見て、俺に向かって笑いかけてくる。
「初めましてだな。リアム殿。俺がこの国の王、イーサン=ドライだ」
見た目とは裏腹に優しそうな声で言った。
「……お初にお目にかかります。リアムと申します。よろしくお願いいたします。」
レルの地獄のレッスンを思い出しながら、しっかりと挨拶する。
今更だが、思い出したら、震えが止まらなくなってきたからやめよう。
「ふはは。そう緊張せずとも、良い。ただ、君のためにも早く本題に入った方がいいか。ヘンリー。あれを」
「はっ」
そう言って、ヘンリーが書類を持ってきて、俺とレオンに渡す。
「ここにあるのが、今回の戦争に参加した場合、彼らに与える特権です」
「(……!!これはなかなかだね)」
「(ああ。すげえな)」
-リアム殿への戦争に参加した場合の特権-
① 手柄に関わらず、男爵級を付与。手柄に応じ、要相談。
② 10名までの平民籍任命権の付与。
③ 学園入学の許可。
④ 参加金、10万ドライ付与(1000万円)。手柄に応じ、要相談。
⑤ 王族所有の屋敷付与。
⑥ 宮廷騎士団への入団推薦状を付与。
破格の内容が書いてあった。
「(……どうみる?ルーカス)」
『うーん。この国に縛り付ける気満々だな。貴族位与えて、学園に入れる。そして、将来は宮廷騎士団へ入団させようと言ったところか。使用人にもこの国の平民籍を与えることで、この国から出づらくすると見える。だが、この国で暮らす分には悪くないな。特にお前のように安定した生活を送りたいんだったら。いざとなっても、俺がいればこの国脱出も容易いし、貰えるもんは貰っといた方がいいのかもな』
「(たしかに、この国で暮らすことを決めるんだったら破格の待遇だし、いざとなってもルーカスがいる限り大丈夫か。うん。そう聞くと悪くなさそうだ。レオンは?)」
「(俺の方も悪くねえな。強いて言えば、いきなり、伯爵位を与えようとしてくるのはやりすぎだろ。と言ったところだけだ)」
「(え、すご。それだけレオンが価値と実績があるってことか)」
『だな。それに、お前も、いざとなった時自分1人でも脱出できるくらいの力はあるだろ。俺らと仲良くしているうちは助けてやれるし、貰えるもんは貰っといた方がいい気もするな』
「(たしかに。冒険者やめた時、貴族位があれば世渡りは楽か。……というか、向こうは是が非でも俺らにいい条件を与えて、頷かせたいようだな。……そうだな。俺もこの条件を飲む)」
俺たちが頷いたのを見て、イーサンが頷く。
「お二人とも満足していただけたようで何よりだ。我らも、この条件が出せる限界だったものでな。もっと欲しいと言われたらどうしようかと思っていたところだ」
「流石に、これ以上の条件は望めませんよ」
レオンとイーサンがしばらく、談笑している最中に俺は疑問に思ったことを口にする。
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ゾクリ……。
そうすると、一瞬イーサンやヘンリー、後ろの側近までもの目が鋭くなったような気がした。思わず冷や汗が出るが、すぐにみんな笑顔に戻ると。
「……ああ。では後日、署名式を正式に設けよう。それまでじっくり考えてくれ」
「あ、ありがとうございます」
今のはなんだったんだろう?と思いながら、俺は出された豪華な飯を遠慮なく食べ、帰ってから異世界の高級料理を再現することに決めたのだった。
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