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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎
ノアは願う
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-side ノア-
「聡明だな。彼は。まさか、書類をその場で署名せず、一度持ち帰りたいと言われるとは思わなかったぞ」
「ああ。正直ここまでとは思わなかったぜ。普通大人でも、あの条件見せたらその場で頷くと思ったんだがな。“どんな条件であれ、一旦書類は持ち帰るべき”という教訓があの年齢で、身についているというのか。あの冷静さ。末恐ろしい子供だ」
リアムとレオンが部屋に帰った後、今は残りの面々で談笑していた。食事会の目的はリアムの品定めでもあったからだ。
イーサンとヘンリーは彼を年齢以上の冷静さを併せ持つ聡明な子供だと判断したようだ。実際、鑑定スキルを持っていなかったら僕もそう思っていただろう。
「流石は我が息子。ノアだな。俺も鼻が高いぞ」
「いえ。別に大したことはしておりません」
そう。大したことではない。リアムを商業ギルドで初めて鑑定した時、一眼見ただけでもわかるくらい異様なステータスだったからだ。その後、実際に、友達になってみても思った。彼はぶっ飛んでいると。
この世界の多くの人は、神竜とあれだけのスキルを持ったのならば、国を起こすことや世界制覇などを一度は企むだろう。
力に振り回される人間は多い。平和主義を唱える人間でも、自分が他人を制圧できる力を持っていると分かった途端に侵略行為を始めた事例はいくつもあるのだ。
しかし彼は全く興味を持たないどころか、
“田舎でグータラ過ごしたい”とか、“美味しいものを食べている時が一番幸せだから食べ物以外は興味ない”とか、挙句の果てには、“自分のスキルは他人の幸せのために使いたい”とか言っている。
今回彼が俺たちに利用されたのも、自分のためではなく、仲間のため。自分が戦争に参加しなかったせいで、仲間まで信用を失うと困るからと言った理由だ。
正直、僕だったら使用人を切り捨ててでも戦争に参加しないと思うから、その感覚は理解できないけど、仲間に対してはお人好しでいい奴である事は確かだ。僕と同じで、腹黒いところも気の合う要素だと思う。
「ふふ。それでこそ王子の器といったところでしょうか。それでは、皆さま予定がおありでしょうし、今日のところは終わりにいたしましょう」
宰相のアルフィーは言った。その言葉で、食事会は本当の意味で終わりとなり、各々解散となる。
「ヘンリー様。後で、僕の部屋に来ていただいてもよろしいですか?」
「あ、ああ。わかった」
彼にもまだ聞きたいことがあるんだよね。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
その後、俺は一旦リアムの部屋に遊びに行き、ついでにお菓子を食べさせてもらうことにした。さっき食べたって思うだろうけど、リアムの料理は別腹だから仕方がない。
「王子って意外と暇だよね。こう、もっと勉学とか剣術とかで忙しいんだと思っていたよ」
「いやあ、それほどでも」
「褒めてねえよ」
会って早々、他の人がいる前だったら、不敬罪で即罰せられるようなことを言うリアム。最初のうちは慣れていなかった無愛想な言い方も、それが仲良くなった友達にする態度だと、リアムに教えて貰った時はとても嬉しかった。
同時に、分かってはいたが、王族相手には誰しも距離を置いているということもリアムと離れてからの生活でより深く理解できた。
僕を王族だと分かっても、態度を変えずに接してくれているリアムには感謝と尊敬しかない。僕が逆の立場でそれを出来る勇気はないから。せめて、僕に初めてできたこの小さな友人が、この国で幸せに暮らせるように僕も努力したいと思う。
「……?どうした1人でニヤニヤして。気でも狂ったか?」
『こいつは元々狂ってるだろ』
「そうだった」
「だから、どうしてそんなに僕の扱いが酷いのさ!」
もう少し、言葉が穏やかになってくれると尚いいけどね。
そんな会話をしていた時、誰かが部屋の鍵を開けた。僕は警戒する。この部屋はリアムしか、開けられないはずだからだ。それに、今はリアムはスキルを発動している。
場合によっては、リアムを守るために相手を消すことも考えた。
「おーい。リアムー。飯作れー」
「はーい」『おせーぞ。レオン』
そんな僕のことを気にせずに、呑気な会話が繰り広げられた。
それを見て僕も警戒を解く。
「ああ。なんだレオンさんか。って、なんで、リアムの部屋の鍵を持っていらっしゃるんですか」
「ああ。うまい飯を食いたいからな」
「それだけ?」
「それだけだけど?」
信じられない。それだけで、鍵を渡すリアムも貰うレオンも。僕はそこまで他人を信用できない。
「なんだ、お前言いたいことがあるなら言えよ。」
「まあまあ。こいつにも色々あるだろ。多感な時期だし。」
「お前もだろうが。って、俺と実はそんな年齢変わらないんだよな。お前。」
しかもなんで、秘密までバラしているのだろうか。わからない事だらけだ。
師弟関係を結んだと聞いたが、いきなりそこまで、信用できるものなのだろうか。
そんなことを考えながらも食事が出てくる。今日、出てくるのはスコーンというパンに似た食べ物だそうだ。クリームやジャムを間に塗って挟むらしい。
いざ実食である。
--パクリッ。
「うまっ」「美味しい」『うめえな』
いちごジャムの甘酸っぱい味とクリームが混ざってとても美味しい。スコーン自体も紅茶の風味がして美味しかった。
いつものことながら、リアムが作ったご飯を食べると自然と笑顔になる。
「なあ、ノア。こんな美味しいお菓子を作ってあげてる俺を2人して悪魔って呼ぶんだぜ。ひどくないか?」
「どう考えても悪魔以外なんでもねえよ。俺たちは悪魔に魂を売っちまっただけだ」
『そーそ。どう考えても俺らは被害者だよ』
「酷すぎだよね。こいつら」
「まあ、リアムは悪魔だよね。どう考えても」
「あっ、ひどっ!ノアまで……」
「あはは」
気づくとさっきまで思っていた疑問も忘れて不思議と口悪い会話に参加して一緒に笑い合っていた。そしてさらに気づく。幸せとは、こうやって作られていくものなのだと。
このことを、信用できる友達が出来づらい立場の僕に気づかせたリオンはなんて残酷な悪魔なんだとも。
それから、もしリアムが言うように神様がいるのならば、この空間に出来るだけ長く居れますようにと僕は願った。
「そーいえばさ。話は変わるけど、俺、多分、クズガーの実の子供ではないらしいんだよね」
リアムが僕にとっては、貴重な情報でもあることをなんでもない風に言う。
『えっ……、やっぱり俺が間違えてたのか。すまねえ』
王家の情報にもクズガーはリアムの実の父親ということになっている。僕の鑑定スキルにも、リアムの苗字はクズガーと同じスミスと出てきている。ルーカスが間違えたのも無理はない。……というか、リアムが何を根拠に言っているのか知りたい。
「いやいや。多分だからまだわかんないけどね。夢でリアムの記憶を見てその時にお母さんが言っていたんだ」
それは、またぼんやりな。夢の方がおかしい可能性もあるし、なんともね。
「ふーん。実の父親は誰なんだ?」
「わかんない。だけど、一応このことは2人にも伝えとこうと思って。俺の母親はおそらく、クズガーが前領主を殺したところを目撃したせいで、殺されたってことも」
そちらの方は信憑性が高そうだ。うーん。実の父親の件含めて調べてみようか。
「ふーん。わかった。俺の方でも調べておくぜ」
「僕も。調べてみるよ」
その日の会話はそこで終了だった。
みんなと別れる。しかしリアムの、母親の死の原因と本当の父親……、ね。
一度、友のためにしっかり調べようか。
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「聡明だな。彼は。まさか、書類をその場で署名せず、一度持ち帰りたいと言われるとは思わなかったぞ」
「ああ。正直ここまでとは思わなかったぜ。普通大人でも、あの条件見せたらその場で頷くと思ったんだがな。“どんな条件であれ、一旦書類は持ち帰るべき”という教訓があの年齢で、身についているというのか。あの冷静さ。末恐ろしい子供だ」
リアムとレオンが部屋に帰った後、今は残りの面々で談笑していた。食事会の目的はリアムの品定めでもあったからだ。
イーサンとヘンリーは彼を年齢以上の冷静さを併せ持つ聡明な子供だと判断したようだ。実際、鑑定スキルを持っていなかったら僕もそう思っていただろう。
「流石は我が息子。ノアだな。俺も鼻が高いぞ」
「いえ。別に大したことはしておりません」
そう。大したことではない。リアムを商業ギルドで初めて鑑定した時、一眼見ただけでもわかるくらい異様なステータスだったからだ。その後、実際に、友達になってみても思った。彼はぶっ飛んでいると。
この世界の多くの人は、神竜とあれだけのスキルを持ったのならば、国を起こすことや世界制覇などを一度は企むだろう。
力に振り回される人間は多い。平和主義を唱える人間でも、自分が他人を制圧できる力を持っていると分かった途端に侵略行為を始めた事例はいくつもあるのだ。
しかし彼は全く興味を持たないどころか、
“田舎でグータラ過ごしたい”とか、“美味しいものを食べている時が一番幸せだから食べ物以外は興味ない”とか、挙句の果てには、“自分のスキルは他人の幸せのために使いたい”とか言っている。
今回彼が俺たちに利用されたのも、自分のためではなく、仲間のため。自分が戦争に参加しなかったせいで、仲間まで信用を失うと困るからと言った理由だ。
正直、僕だったら使用人を切り捨ててでも戦争に参加しないと思うから、その感覚は理解できないけど、仲間に対してはお人好しでいい奴である事は確かだ。僕と同じで、腹黒いところも気の合う要素だと思う。
「ふふ。それでこそ王子の器といったところでしょうか。それでは、皆さま予定がおありでしょうし、今日のところは終わりにいたしましょう」
宰相のアルフィーは言った。その言葉で、食事会は本当の意味で終わりとなり、各々解散となる。
「ヘンリー様。後で、僕の部屋に来ていただいてもよろしいですか?」
「あ、ああ。わかった」
彼にもまだ聞きたいことがあるんだよね。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
その後、俺は一旦リアムの部屋に遊びに行き、ついでにお菓子を食べさせてもらうことにした。さっき食べたって思うだろうけど、リアムの料理は別腹だから仕方がない。
「王子って意外と暇だよね。こう、もっと勉学とか剣術とかで忙しいんだと思っていたよ」
「いやあ、それほどでも」
「褒めてねえよ」
会って早々、他の人がいる前だったら、不敬罪で即罰せられるようなことを言うリアム。最初のうちは慣れていなかった無愛想な言い方も、それが仲良くなった友達にする態度だと、リアムに教えて貰った時はとても嬉しかった。
同時に、分かってはいたが、王族相手には誰しも距離を置いているということもリアムと離れてからの生活でより深く理解できた。
僕を王族だと分かっても、態度を変えずに接してくれているリアムには感謝と尊敬しかない。僕が逆の立場でそれを出来る勇気はないから。せめて、僕に初めてできたこの小さな友人が、この国で幸せに暮らせるように僕も努力したいと思う。
「……?どうした1人でニヤニヤして。気でも狂ったか?」
『こいつは元々狂ってるだろ』
「そうだった」
「だから、どうしてそんなに僕の扱いが酷いのさ!」
もう少し、言葉が穏やかになってくれると尚いいけどね。
そんな会話をしていた時、誰かが部屋の鍵を開けた。僕は警戒する。この部屋はリアムしか、開けられないはずだからだ。それに、今はリアムはスキルを発動している。
場合によっては、リアムを守るために相手を消すことも考えた。
「おーい。リアムー。飯作れー」
「はーい」『おせーぞ。レオン』
そんな僕のことを気にせずに、呑気な会話が繰り広げられた。
それを見て僕も警戒を解く。
「ああ。なんだレオンさんか。って、なんで、リアムの部屋の鍵を持っていらっしゃるんですか」
「ああ。うまい飯を食いたいからな」
「それだけ?」
「それだけだけど?」
信じられない。それだけで、鍵を渡すリアムも貰うレオンも。僕はそこまで他人を信用できない。
「なんだ、お前言いたいことがあるなら言えよ。」
「まあまあ。こいつにも色々あるだろ。多感な時期だし。」
「お前もだろうが。って、俺と実はそんな年齢変わらないんだよな。お前。」
しかもなんで、秘密までバラしているのだろうか。わからない事だらけだ。
師弟関係を結んだと聞いたが、いきなりそこまで、信用できるものなのだろうか。
そんなことを考えながらも食事が出てくる。今日、出てくるのはスコーンというパンに似た食べ物だそうだ。クリームやジャムを間に塗って挟むらしい。
いざ実食である。
--パクリッ。
「うまっ」「美味しい」『うめえな』
いちごジャムの甘酸っぱい味とクリームが混ざってとても美味しい。スコーン自体も紅茶の風味がして美味しかった。
いつものことながら、リアムが作ったご飯を食べると自然と笑顔になる。
「なあ、ノア。こんな美味しいお菓子を作ってあげてる俺を2人して悪魔って呼ぶんだぜ。ひどくないか?」
「どう考えても悪魔以外なんでもねえよ。俺たちは悪魔に魂を売っちまっただけだ」
『そーそ。どう考えても俺らは被害者だよ』
「酷すぎだよね。こいつら」
「まあ、リアムは悪魔だよね。どう考えても」
「あっ、ひどっ!ノアまで……」
「あはは」
気づくとさっきまで思っていた疑問も忘れて不思議と口悪い会話に参加して一緒に笑い合っていた。そしてさらに気づく。幸せとは、こうやって作られていくものなのだと。
このことを、信用できる友達が出来づらい立場の僕に気づかせたリオンはなんて残酷な悪魔なんだとも。
それから、もしリアムが言うように神様がいるのならば、この空間に出来るだけ長く居れますようにと僕は願った。
「そーいえばさ。話は変わるけど、俺、多分、クズガーの実の子供ではないらしいんだよね」
リアムが僕にとっては、貴重な情報でもあることをなんでもない風に言う。
『えっ……、やっぱり俺が間違えてたのか。すまねえ』
王家の情報にもクズガーはリアムの実の父親ということになっている。僕の鑑定スキルにも、リアムの苗字はクズガーと同じスミスと出てきている。ルーカスが間違えたのも無理はない。……というか、リアムが何を根拠に言っているのか知りたい。
「いやいや。多分だからまだわかんないけどね。夢でリアムの記憶を見てその時にお母さんが言っていたんだ」
それは、またぼんやりな。夢の方がおかしい可能性もあるし、なんともね。
「ふーん。実の父親は誰なんだ?」
「わかんない。だけど、一応このことは2人にも伝えとこうと思って。俺の母親はおそらく、クズガーが前領主を殺したところを目撃したせいで、殺されたってことも」
そちらの方は信憑性が高そうだ。うーん。実の父親の件含めて調べてみようか。
「ふーん。わかった。俺の方でも調べておくぜ」
「僕も。調べてみるよ」
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