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3章⭐︎新しい家族から学ぶ帝王学編⭐︎
条件
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* ヘビー注意
-side リアム-
「では、まずは金勘定からやってもらうか。
あ……っとその前にまだ言い残していたことがあったぜ」
そういうと、ヘンリーは見たこともないような真剣な顔をしてそう言った。
いや、似合わないな。失礼だけど。
「……?」
「この国の上流階級に伝わっている有名な言葉があってな。“英雄は英雄の心を持つと英雄にはなれない。さすれど、英雄は英雄の心を持つことを求められる”ってな 」
「ふーん。どういうこと?」
まさかとは思うけど、5歳児に聞かせるような話ではない、とかはないよな?
「そうだな……例えばの話だが、物語の英雄と聞いてどんな人を思い浮かぶ?」
「誰にでも手を差し伸べ、優しい人とか?」
「うむ。それが、大体の人々が求める理想の英雄像だろう。だがな、覚えておけ。最大多数の最大幸福というのは、“多くの人”を幸せにするべきという話であって、“全員”を幸せにするべきというわけではない。むしろ、全員を幸せにしようと考える人たちは、英雄にはなれないだろうという教訓をこの諺は示している。例えばだ。過去にユートピアを夢見て国を作ろうと思った若い治世者が、結果的にディストピアを作ってしまったという悲劇的な事例が歴史的にはいくつもある」
「……」
やっぱり、5歳児に聞かせる内容じゃねえよ、それ!多分だけど、極端な思考をするな。ってことだよな?大人になれと。
『うーむ。今のは10級フラグ建築士くらいの実力だな!レベルが低すぎて、逆にすげえぞ』
お褒めに預かり光栄……ん?待てよ。
褒められてない……だと?というか、そんな数字が多い級の検定あんまないだろ。
その検定、どれだけ、受けている人数多い想定なんだ。そもそも、フラグ建築士の検定は存在しないんだけど。
「んん……。話を続けよう。ある若者達は、全ての人が平等に生きるという目標を掲げて、国を統治し大量の餓死者を出すという大失敗をした。また、ある若者達はみんなが武器を捨てれば、戦争はなくなり、世の中平和になると考えて武器を捨て自らの国を滅ぼした」
いやいや、別に続けてもらわなくてもいいんだけど。それにしても……。うん、なるほど。子供にいうには重いすぎる歴史的事実だな。
「そういう事例は他にもいくつもある。まあ、何がいいたいかというと、全ての人を平等に救うことはできない、ということは歴史的に証明されているということを覚えておきなさい」
「うん……わかった」
現実論すぎるよ。おっさん。
「あと、俺はお兄様であっておっさんではない。それはそれとしてだ。それでも人々は願うだろうな。英雄には高潔な心を持ってほしいと」
「うん。確かに」
さらっと人の心を読んでくるあたり、お兄さんではなく、おっさんポイント加点だな。
「だから、もしお前に英雄の素質があって他人を切り捨てられる人間だとしても、外面だけは良くしておけってことをこの諺は言ってるんだよ」
……。俺、5歳児。この人わかってる?
あと誰だ、そのダークすぎる諺作ったの。
カタコト。カタコト。……。って。はっ!
「はー。うん。わかったけどさ。こう考えるのはどう?確かに全ての人を幸せにするような領地経営っていうのはできないかもしれないけど、それでも全ての人を幸福にすることを諦めてはならないって。こういう心を持っている人って英雄って感じだと思わない?」
そういうと、ヘンリーは面食らった顔をしていた。そういえば、前にも似たような顔ノアにされたっけ?今となっては懐かしい出来事だ。
「ふっ。確かに。お前みたいな考え方を持つ領主が増えれば、もっと幸せな民は増えるかもな」
「うん」
「でもまあ。世の中、過去に何回も失敗を繰り返してもだ。ユートピアを求める狂信者は一定数いる。その人達はリアムの今の考え方でも許さないかもしれないがな。多分だが、この前ノアを狙った連中もそうだと俺は見ている」
「運命神の信者ですか?」
「なんだ。知っていたのか。そうだ。運命神の眷属は勇者と言われているからな。勇者がいれば、ユートピアを実現するためにみんながまとまると考えたのだろう」
「ふーん。なるほど」
「ま、俺から言えることはこれくらいだな!気を取り直して、金勘定の勉強からするか!」
「わ、わかった」
こうして、金勘定を勉強する前に、それどころではない重い内容を聞かされたのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
それにしても、ここまでヘビーな内容。
普通の家庭で、子供に教えるものなのか?
いや、流石にそれはないか。あのヘンリーが真剣な表情をしていたことといい、なんか違和感があるな。
『失礼すぎるだろ。その違和感』
「俺もそう思う。でもおかしんだ。あの人があんな顔するなんて。……あ!」
もしあれが、ヘンリー様から子供に対してではなく、戦闘狂《プレーヤー》としての、俺へのアクションだったとしたら?ヘンリーが珍しく真剣な顔になったのも納得できる。
なんせ、これからこの世界における自分の役割を果たそうとしているのだから。
もしそうだったら、さっきの話をもう一回振り返って見てみるべきだろう。
ノアを狙う連中の目的が今回分かった。
運命神の信者はユートピアのために、勇者が必要不可欠だと考えているので、ノアを使って勇者召喚するためだろう。
だとすると、ノアを闇落ちさせない条件は、“ユートピアを目指させない”ことなのかもしれないな。ユートピアを作ろうとして闇落ちしてしまい、ディストピアになってしまうというのが、結構ありそうだ。
ノアがユートピアを作ることを本気で目指すとなると……、ドライ王国の王様になるのが手っ取り早いから、お兄さんのバージル王子を押し退けて王になるというルートもありそうだ。
ノアが国王になりたいって言い出したら、闇落ちフラグの可能性が高いということだから気をつけないと。
そんなことを考えながら、数字と睨めっこしていたのだが……、大して数字を見ていないのに、頭がパンクしてきた。
----------------------------
[注意喚起]
幸福論と言う正解のないテーマなので、賛否両論ある話も書きました。こういう考え方もあるという1例に過ぎませんのでご注意ください。
バージル(意味:王にふさわしい、王の、勇敢な、恐れを知らぬ、大胆な)
-side リアム-
「では、まずは金勘定からやってもらうか。
あ……っとその前にまだ言い残していたことがあったぜ」
そういうと、ヘンリーは見たこともないような真剣な顔をしてそう言った。
いや、似合わないな。失礼だけど。
「……?」
「この国の上流階級に伝わっている有名な言葉があってな。“英雄は英雄の心を持つと英雄にはなれない。さすれど、英雄は英雄の心を持つことを求められる”ってな 」
「ふーん。どういうこと?」
まさかとは思うけど、5歳児に聞かせるような話ではない、とかはないよな?
「そうだな……例えばの話だが、物語の英雄と聞いてどんな人を思い浮かぶ?」
「誰にでも手を差し伸べ、優しい人とか?」
「うむ。それが、大体の人々が求める理想の英雄像だろう。だがな、覚えておけ。最大多数の最大幸福というのは、“多くの人”を幸せにするべきという話であって、“全員”を幸せにするべきというわけではない。むしろ、全員を幸せにしようと考える人たちは、英雄にはなれないだろうという教訓をこの諺は示している。例えばだ。過去にユートピアを夢見て国を作ろうと思った若い治世者が、結果的にディストピアを作ってしまったという悲劇的な事例が歴史的にはいくつもある」
「……」
やっぱり、5歳児に聞かせる内容じゃねえよ、それ!多分だけど、極端な思考をするな。ってことだよな?大人になれと。
『うーむ。今のは10級フラグ建築士くらいの実力だな!レベルが低すぎて、逆にすげえぞ』
お褒めに預かり光栄……ん?待てよ。
褒められてない……だと?というか、そんな数字が多い級の検定あんまないだろ。
その検定、どれだけ、受けている人数多い想定なんだ。そもそも、フラグ建築士の検定は存在しないんだけど。
「んん……。話を続けよう。ある若者達は、全ての人が平等に生きるという目標を掲げて、国を統治し大量の餓死者を出すという大失敗をした。また、ある若者達はみんなが武器を捨てれば、戦争はなくなり、世の中平和になると考えて武器を捨て自らの国を滅ぼした」
いやいや、別に続けてもらわなくてもいいんだけど。それにしても……。うん、なるほど。子供にいうには重いすぎる歴史的事実だな。
「そういう事例は他にもいくつもある。まあ、何がいいたいかというと、全ての人を平等に救うことはできない、ということは歴史的に証明されているということを覚えておきなさい」
「うん……わかった」
現実論すぎるよ。おっさん。
「あと、俺はお兄様であっておっさんではない。それはそれとしてだ。それでも人々は願うだろうな。英雄には高潔な心を持ってほしいと」
「うん。確かに」
さらっと人の心を読んでくるあたり、お兄さんではなく、おっさんポイント加点だな。
「だから、もしお前に英雄の素質があって他人を切り捨てられる人間だとしても、外面だけは良くしておけってことをこの諺は言ってるんだよ」
……。俺、5歳児。この人わかってる?
あと誰だ、そのダークすぎる諺作ったの。
カタコト。カタコト。……。って。はっ!
「はー。うん。わかったけどさ。こう考えるのはどう?確かに全ての人を幸せにするような領地経営っていうのはできないかもしれないけど、それでも全ての人を幸福にすることを諦めてはならないって。こういう心を持っている人って英雄って感じだと思わない?」
そういうと、ヘンリーは面食らった顔をしていた。そういえば、前にも似たような顔ノアにされたっけ?今となっては懐かしい出来事だ。
「ふっ。確かに。お前みたいな考え方を持つ領主が増えれば、もっと幸せな民は増えるかもな」
「うん」
「でもまあ。世の中、過去に何回も失敗を繰り返してもだ。ユートピアを求める狂信者は一定数いる。その人達はリアムの今の考え方でも許さないかもしれないがな。多分だが、この前ノアを狙った連中もそうだと俺は見ている」
「運命神の信者ですか?」
「なんだ。知っていたのか。そうだ。運命神の眷属は勇者と言われているからな。勇者がいれば、ユートピアを実現するためにみんながまとまると考えたのだろう」
「ふーん。なるほど」
「ま、俺から言えることはこれくらいだな!気を取り直して、金勘定の勉強からするか!」
「わ、わかった」
こうして、金勘定を勉強する前に、それどころではない重い内容を聞かされたのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
それにしても、ここまでヘビーな内容。
普通の家庭で、子供に教えるものなのか?
いや、流石にそれはないか。あのヘンリーが真剣な表情をしていたことといい、なんか違和感があるな。
『失礼すぎるだろ。その違和感』
「俺もそう思う。でもおかしんだ。あの人があんな顔するなんて。……あ!」
もしあれが、ヘンリー様から子供に対してではなく、戦闘狂《プレーヤー》としての、俺へのアクションだったとしたら?ヘンリーが珍しく真剣な顔になったのも納得できる。
なんせ、これからこの世界における自分の役割を果たそうとしているのだから。
もしそうだったら、さっきの話をもう一回振り返って見てみるべきだろう。
ノアを狙う連中の目的が今回分かった。
運命神の信者はユートピアのために、勇者が必要不可欠だと考えているので、ノアを使って勇者召喚するためだろう。
だとすると、ノアを闇落ちさせない条件は、“ユートピアを目指させない”ことなのかもしれないな。ユートピアを作ろうとして闇落ちしてしまい、ディストピアになってしまうというのが、結構ありそうだ。
ノアがユートピアを作ることを本気で目指すとなると……、ドライ王国の王様になるのが手っ取り早いから、お兄さんのバージル王子を押し退けて王になるというルートもありそうだ。
ノアが国王になりたいって言い出したら、闇落ちフラグの可能性が高いということだから気をつけないと。
そんなことを考えながら、数字と睨めっこしていたのだが……、大して数字を見ていないのに、頭がパンクしてきた。
----------------------------
[注意喚起]
幸福論と言う正解のないテーマなので、賛否両論ある話も書きました。こういう考え方もあるという1例に過ぎませんのでご注意ください。
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