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2.省エネ男子になつかれました
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「包丁を持つ手が、なんか危ういんだけど……」
ピーラーでジャガイモの皮を剥きながら、俺は玖堂に指摘した。もしかして、料理をしたことがないのかもしれない。
学校から帰ったあと、俺は宿題をフルパワーで終えた。それから買物に行って、今は玖堂の部屋のキッチンに立っている。
「え、ぜんぜん大丈夫だよ」
俺を見下ろしながら、玖堂が不思議そうに言う。
彼の手元には、無残な形になった人参があった。みじん切りかと疑うほどに小さかったり、バカみたいにデカい人参がまな板の上に転がっている。
玖堂の包丁を持つ手は、かなり怪しい。ケガをしないか不安で仕方がない。
俺の心配をよそに、玖堂は得意げに包丁を握っている。思い切りよく、ドン、ダン、と人参を切っていく。
こんなことなら、玖堂にジャガイモの皮を剥いてもらえば良かった。
ピーラーを渡して、交代を告げようとしたが止めた。ピーラーでもケガの恐れはある。俺はヒヤヒヤしながら、玖堂の手元を注視した。
なぜ、俺が玖堂と一緒に料理を作っているのかというと。
玖堂がバイト終わりに、駅前でふらふらしていることを知ったからだ。玖堂の部屋に来ていた派手めな男女。あの集団は、バイト仲間の繋がりらしい。
高校生は玖堂だけで、他のバイトメンバーは大学生かフリーターなのだそうだ。それで、バイトが終わると毎回、飲み屋に直行するのだという。
玖堂は、言葉は悪いのだが客寄せとして重宝されているらしかった。超絶イケメンなので、その場にいるだけで女子が寄ってくる。
ここでも玖堂は、タダで飲み食いできるらしい。ホイホイと飲み屋に行って、閉店近くまで滞在しているという。俺は「そんな時間まで高校生が出歩いてちゃダメだろ!」と叱った。
何かしらの犯罪に巻き込まれるかもしれない。補導される可能性もある。俺は大真面目に忠告したのに、玖堂はのほほんと笑いながら「宮下ってお母さんみたいだな」と言いやがった。
誰がお母さんだよ……!!
怒りに震えた。しかし、世話焼きだという自覚はある。八歳も上の兄の面倒を見ていたくらいなのだ。
気づいたら「これからは、俺と夕飯を食べよう」と言っていた。「一人分も二人分も、作る手間は同じだから」とも。
玖堂は、相変わらずのほほんとしながら「宮下のご飯楽しみ~~」と笑っていた。
いくら世話焼きだからといって、俺ひとりで夕食の準備をするのはなんだか釈然としない。それで玖堂にも手伝うように、と言ったのだが……。
玖堂の手元をちらりと確認する。ものすごくハラハラする。これならひとりのほうがマシだったなと、俺は密かに後悔した。
カレーの具材を鍋に放り込み、次に俺はレタスを手に取った。
「今から、サラダを作るから」
「うん」
「鍋のほうを頼む」
俺は、玖堂にかき混ぜる係を任せた。これなら包丁で指を切る心配はない。
「……なんか、俺だけやること簡単だね」
ぐーるぐーると鍋をかき混ぜながら、玖堂が不満を口にする。
「大事な仕事だぞ。鍋底が焦げ付かないように、ちゃんと混ぜろよな」
ちなみに、鍋は俺の部屋から持ってきた。
玖堂の部屋には、調理器具がほとんどなかった。
「でも……」
玖堂が、くちびるを尖らせる。やれやれと思いながら、俺は「灰汁を取って」と指示した。
「なにを取るの?」
「灰汁だよ」
「悪?」
……そこから説明しないとダメなのか。
まったく。手がかかるヤツだ。世間知らずめと思いながら、俺は懇切に丁寧に説明を開始した。
ピーラーでジャガイモの皮を剥きながら、俺は玖堂に指摘した。もしかして、料理をしたことがないのかもしれない。
学校から帰ったあと、俺は宿題をフルパワーで終えた。それから買物に行って、今は玖堂の部屋のキッチンに立っている。
「え、ぜんぜん大丈夫だよ」
俺を見下ろしながら、玖堂が不思議そうに言う。
彼の手元には、無残な形になった人参があった。みじん切りかと疑うほどに小さかったり、バカみたいにデカい人参がまな板の上に転がっている。
玖堂の包丁を持つ手は、かなり怪しい。ケガをしないか不安で仕方がない。
俺の心配をよそに、玖堂は得意げに包丁を握っている。思い切りよく、ドン、ダン、と人参を切っていく。
こんなことなら、玖堂にジャガイモの皮を剥いてもらえば良かった。
ピーラーを渡して、交代を告げようとしたが止めた。ピーラーでもケガの恐れはある。俺はヒヤヒヤしながら、玖堂の手元を注視した。
なぜ、俺が玖堂と一緒に料理を作っているのかというと。
玖堂がバイト終わりに、駅前でふらふらしていることを知ったからだ。玖堂の部屋に来ていた派手めな男女。あの集団は、バイト仲間の繋がりらしい。
高校生は玖堂だけで、他のバイトメンバーは大学生かフリーターなのだそうだ。それで、バイトが終わると毎回、飲み屋に直行するのだという。
玖堂は、言葉は悪いのだが客寄せとして重宝されているらしかった。超絶イケメンなので、その場にいるだけで女子が寄ってくる。
ここでも玖堂は、タダで飲み食いできるらしい。ホイホイと飲み屋に行って、閉店近くまで滞在しているという。俺は「そんな時間まで高校生が出歩いてちゃダメだろ!」と叱った。
何かしらの犯罪に巻き込まれるかもしれない。補導される可能性もある。俺は大真面目に忠告したのに、玖堂はのほほんと笑いながら「宮下ってお母さんみたいだな」と言いやがった。
誰がお母さんだよ……!!
怒りに震えた。しかし、世話焼きだという自覚はある。八歳も上の兄の面倒を見ていたくらいなのだ。
気づいたら「これからは、俺と夕飯を食べよう」と言っていた。「一人分も二人分も、作る手間は同じだから」とも。
玖堂は、相変わらずのほほんとしながら「宮下のご飯楽しみ~~」と笑っていた。
いくら世話焼きだからといって、俺ひとりで夕食の準備をするのはなんだか釈然としない。それで玖堂にも手伝うように、と言ったのだが……。
玖堂の手元をちらりと確認する。ものすごくハラハラする。これならひとりのほうがマシだったなと、俺は密かに後悔した。
カレーの具材を鍋に放り込み、次に俺はレタスを手に取った。
「今から、サラダを作るから」
「うん」
「鍋のほうを頼む」
俺は、玖堂にかき混ぜる係を任せた。これなら包丁で指を切る心配はない。
「……なんか、俺だけやること簡単だね」
ぐーるぐーると鍋をかき混ぜながら、玖堂が不満を口にする。
「大事な仕事だぞ。鍋底が焦げ付かないように、ちゃんと混ぜろよな」
ちなみに、鍋は俺の部屋から持ってきた。
玖堂の部屋には、調理器具がほとんどなかった。
「でも……」
玖堂が、くちびるを尖らせる。やれやれと思いながら、俺は「灰汁を取って」と指示した。
「なにを取るの?」
「灰汁だよ」
「悪?」
……そこから説明しないとダメなのか。
まったく。手がかかるヤツだ。世間知らずめと思いながら、俺は懇切に丁寧に説明を開始した。
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