こじらせ委員長と省エネ男子

みずしま

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3.いくらなんでもギャップがあり過ぎです

3-8

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「だったら、恋人になれば問題ないね」

「う、うん」

 心臓が跳ねる。あぁ、ダメだ。俺はとうとう……!

 とうとう誰かのものになってしまう……!

「あとは、俺ががんばるだけだね」

「……ん?」

 玖堂は一体、何を頑張るというんだ?

「宮下にふさわしい男になるために! いつか、宮下と恋人になれるように……!」

「へ?」

 玖堂が決意表明をする。俺は、ぽかんとしながらそれを聞いた。

「あ、あの……」

「これからは、自分ひとりで起きられるようになるから」

「え、それって」

 俺は、目覚まし係の任を解かれるってこと?

「ひとりで起きられないヤツのことなんて、宮下は好きにならないと思う!」

 断言された。確かに、自分で起きれたほうが良いとは思うけど。

「あと、俺の分の夕食を作るのは一旦終わりで良いから」

「え、そんな。何で……?」

「宮下みたいに、ちゃんと自炊ができるようになりたい」

 笑顔で言われて、俺は押し黙ってしまった。

「上手に作れるようになったら、宮下に食べさせてあげるからね。それまで待ってて」

「……う、うん」

 いや、ちょっと理解が追い付かない。 

「もう、玖堂の部屋で料理しちゃダメってこと?」 

「宮下がいたら甘えちゃうから、ダメ」

 玖堂が、手でバツを作る。

 なんだよ。それじゃ、俺がこの部屋に来る理由がなくなっちゃうじゃん。出禁ってこと? 

「一緒に、登校はするよな……?」

 縋るような気持ちで、玖堂に確認する。

「それは、もちろん」

 玖堂がうなずく。俺は、ホッと息を吐いた。

 勢いよく夕食を平らげていく玖堂を見ながら、俺もなんとか箸をつけた。空腹だったはずなのに、食欲が湧かない。

 咀嚼するのが億劫に感じて、飲み込むのがやっとだった。





 その日の夜。

 俺は、ベッドの上で何度も寝返りをうった。いつもは電池が切れたみたいに、ベッドに倒れ込んでいる。エネルギーを使い果たしたみたいになる。

 でも今日は、なかなか寝付くことができなかった。

 考えるのは、玖堂のことだ。

 玖堂は、俺のことを好きだと言った。

 俺だって玖堂のことは憎からず思っているし、当然付き合うものだと思っていた。

 でも……。

 俺は、玖堂に好きだと言えなかった。

 玖堂が、あまりにも真っ直ぐに「好き」だと言うから。俺は自分の気持ちが分からなくなってしまった。

 好きって、どういう感情なんだろう……。

 玖堂のことは、人間的に好きだと思う。素直だし、良いヤツだ。ぼんやりしているところも、嫌いじゃない。

 一緒にいるとドキドキする。でも、それは玖堂がイケメンだからかもしれない。

 類まれなる美貌を前にして、心臓が反応しているだけかも……?

 これって、好きだってことで良いんだろうか。なんだか、違う気がする。いや、好きかと問われれば好きなんだけど。

「恋愛対象かどうか、ってことなんだよな。要は……」

 人間的に好ましく思っているだけなら、それは友人。

 恋愛的な意味で好きなら、恋人。

 俺には難問だった。いかんせん、俺には恋愛経験がない。

 散々、非モテだといって自虐していたが、それ以前の問題だったことに気づいた。

「俺って、誰かを好きになったことないかも……」

 改めて思い返してみると、それは紛れもない事実で。

「え、俺って、初恋もまだってこと……!?」 

 どうりで、友人としての「好き」か、恋人としての「好き」か、判別できないわけだ。

「マジか……」

 衝撃の事実だ。同級生たちは、付き合ったり別れたりを繰り返しているというのに。

 その度に、キャッキャとはしゃいで青春を謳歌しているというのに。

 俺は、未だに初恋もナシ。

 ベッドに仰向けになった。リング上で、大の字でダウンしている感覚だった。

 打ちのめされたような気分のまま、気づいたら俺は眠っていた。
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