こじらせ委員長と省エネ男子

みずしま

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4.好きって、なんですか……?

4-7

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 当日は、晴天に恵まれた。

 吹奏楽部のファンファーレが合図となり体育祭は始まった。

 俺は競技に参加するよりも、実行委員としての活動に精を出していた。上級生の指示に従い、ひたすら便利屋として働く。

 同じ実行委員である新田さんも、かなり忙しそうだった。スマートフォンで今という瞬間を切り取る作業に追われている。

 ド派手なピンク色のTシャツは、彼女によく似合っていた。

 クラスの一軍女子と一緒になって、きゃいきゃいとはしゃいでいる。楽しそうでなによりだ。

 結局、彼女はペーパーフラワーをひとつも制作することなく今日という日を迎えた。

 俺は、頭上にちらりと視線をやった。

 巨大な看板がある。『白波高校 第三十回 体育祭』と書かれたこの看板に、俺と玖堂が作ったペーパーフラワーは貼り付けられている。

 俺が作成したこんもりと美しい花も、玖堂が不器用さを発揮して作った歪な形の花も、他のペーパーフラワーに混じって看板に彩を添えていた。

 体育祭は、予定していた時間通りに進んでいるようだ。

 実行委員長の顔を見れば分かる。トラブルもなく順調のようで、俺は安堵する。実行委員の上級生たちが張り切っているので、このまま何事もなく終われば良いなと思う。

 午後になって、日陰で休憩していたら玖堂がやって来た。

「宮下、お疲れさま」

 ペットボトル飲料を手渡され、俺はありがたく受け取った。

「ありがとう」

「順調?」

「たぶん」

 ペットボトルのキャップを開けながら、俺はうなずく。

「たぶんって……。宮下は、実行委員なんでしょ」

「そうだけど。下級生だから」

 ゴクリと飲む。炭酸飲料の泡が、喉の奥でしゅわしゅわと弾ける。爽やかなレモン風味だった。

「指示されたことをこなすだけだよ」

 だから楽なのだ、と玖堂に説明する。

「……メガネの三年生と、よく話してたね」

 どうやら、見られていたようだ。

「あの人が、実行委員長だよ」

「ふうん」

「彼から指示されるんだ」 

 私的な会話ではなく、指示を受けていただけ。

 つまり、玖堂が嫉妬する必要はないことを暗に伝えたのだけど……。

「実行委員長のこと、格好良いとか思ってないよね?」

 残念ながら、玖堂には伝わらなかったようだ。

 明らかな嫉妬の目で、俺をじいっと見る。

「……まぁ、的確な指示を出すなとは思うけど」

 一年生の頃から実行委員をしているようなので、無駄のない采配だった。

「そういえば、誘われたな」

 二年生になっても実行委員になって欲しいと言われた。人員確保に苦労しているのかもしれない。

 俺の言葉を聞いて、玖堂が明らかな動揺を見せた。

「さ、さささ、誘われた……!?」

 真っ青な顔で、口をパクパクさせている。今にも卒倒しそうだった。

「勘違いするなよ。勧誘されただけだから」

 苦笑いしながら、俺は玖堂を宥めた。

 しばらくすると、アナウンスが流れた。リレー選手は集合するようにという放送だった。

「呼ばれてるよ」

 玖堂に声をかける。

 運動神経に秀でているので、玖堂はリレーの選手に選ばれていた。しかもアンカー。

「……行ってくる」

 しょんぼりと背中を丸めながら、玖堂が歩き出す。

「テンション低いな」

「だって、宮下が」

 ふくれっ面で、玖堂が振り返る。

「俺がなんだよ」

「実行委員の仕事で忙しそうだから」

「皆のために、お勤めしてるんだろうが」

 身を粉にして、便利屋稼業に勤しんでいる。文句をいわれる筋合いはないはずだ。 

「見ててくれる?」

「何を」

「走ってるとこ」

 なるほど。俺に見て欲しいのか……。

「分かった。見る見る」

「……本当に?」

 玖堂が疑いの目を向けてくる。

 そして「返事が軽い」と文句を垂れる。

「ちゃんと見るよ。リレーが始まったら」

「始まったらって……。それじゃあ、見逃しちゃうよ」

「アンカーなんだろ? 余裕」

 十分に間に合う。問題ない。俺は「早く集合場所に行け」と急かしながら、玖堂の背中を押した。
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