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4.好きって、なんですか……?
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当日は、晴天に恵まれた。
吹奏楽部のファンファーレが合図となり体育祭は始まった。
俺は競技に参加するよりも、実行委員としての活動に精を出していた。上級生の指示に従い、ひたすら便利屋として働く。
同じ実行委員である新田さんも、かなり忙しそうだった。スマートフォンで今という瞬間を切り取る作業に追われている。
ド派手なピンク色のTシャツは、彼女によく似合っていた。
クラスの一軍女子と一緒になって、きゃいきゃいとはしゃいでいる。楽しそうでなによりだ。
結局、彼女はペーパーフラワーをひとつも制作することなく今日という日を迎えた。
俺は、頭上にちらりと視線をやった。
巨大な看板がある。『白波高校 第三十回 体育祭』と書かれたこの看板に、俺と玖堂が作ったペーパーフラワーは貼り付けられている。
俺が作成したこんもりと美しい花も、玖堂が不器用さを発揮して作った歪な形の花も、他のペーパーフラワーに混じって看板に彩を添えていた。
体育祭は、予定していた時間通りに進んでいるようだ。
実行委員長の顔を見れば分かる。トラブルもなく順調のようで、俺は安堵する。実行委員の上級生たちが張り切っているので、このまま何事もなく終われば良いなと思う。
午後になって、日陰で休憩していたら玖堂がやって来た。
「宮下、お疲れさま」
ペットボトル飲料を手渡され、俺はありがたく受け取った。
「ありがとう」
「順調?」
「たぶん」
ペットボトルのキャップを開けながら、俺はうなずく。
「たぶんって……。宮下は、実行委員なんでしょ」
「そうだけど。下級生だから」
ゴクリと飲む。炭酸飲料の泡が、喉の奥でしゅわしゅわと弾ける。爽やかなレモン風味だった。
「指示されたことをこなすだけだよ」
だから楽なのだ、と玖堂に説明する。
「……メガネの三年生と、よく話してたね」
どうやら、見られていたようだ。
「あの人が、実行委員長だよ」
「ふうん」
「彼から指示されるんだ」
私的な会話ではなく、指示を受けていただけ。
つまり、玖堂が嫉妬する必要はないことを暗に伝えたのだけど……。
「実行委員長のこと、格好良いとか思ってないよね?」
残念ながら、玖堂には伝わらなかったようだ。
明らかな嫉妬の目で、俺をじいっと見る。
「……まぁ、的確な指示を出すなとは思うけど」
一年生の頃から実行委員をしているようなので、無駄のない采配だった。
「そういえば、誘われたな」
二年生になっても実行委員になって欲しいと言われた。人員確保に苦労しているのかもしれない。
俺の言葉を聞いて、玖堂が明らかな動揺を見せた。
「さ、さささ、誘われた……!?」
真っ青な顔で、口をパクパクさせている。今にも卒倒しそうだった。
「勘違いするなよ。勧誘されただけだから」
苦笑いしながら、俺は玖堂を宥めた。
しばらくすると、アナウンスが流れた。リレー選手は集合するようにという放送だった。
「呼ばれてるよ」
玖堂に声をかける。
運動神経に秀でているので、玖堂はリレーの選手に選ばれていた。しかもアンカー。
「……行ってくる」
しょんぼりと背中を丸めながら、玖堂が歩き出す。
「テンション低いな」
「だって、宮下が」
ふくれっ面で、玖堂が振り返る。
「俺がなんだよ」
「実行委員の仕事で忙しそうだから」
「皆のために、お勤めしてるんだろうが」
身を粉にして、便利屋稼業に勤しんでいる。文句をいわれる筋合いはないはずだ。
「見ててくれる?」
「何を」
「走ってるとこ」
なるほど。俺に見て欲しいのか……。
「分かった。見る見る」
「……本当に?」
玖堂が疑いの目を向けてくる。
そして「返事が軽い」と文句を垂れる。
「ちゃんと見るよ。リレーが始まったら」
「始まったらって……。それじゃあ、見逃しちゃうよ」
「アンカーなんだろ? 余裕」
十分に間に合う。問題ない。俺は「早く集合場所に行け」と急かしながら、玖堂の背中を押した。
吹奏楽部のファンファーレが合図となり体育祭は始まった。
俺は競技に参加するよりも、実行委員としての活動に精を出していた。上級生の指示に従い、ひたすら便利屋として働く。
同じ実行委員である新田さんも、かなり忙しそうだった。スマートフォンで今という瞬間を切り取る作業に追われている。
ド派手なピンク色のTシャツは、彼女によく似合っていた。
クラスの一軍女子と一緒になって、きゃいきゃいとはしゃいでいる。楽しそうでなによりだ。
結局、彼女はペーパーフラワーをひとつも制作することなく今日という日を迎えた。
俺は、頭上にちらりと視線をやった。
巨大な看板がある。『白波高校 第三十回 体育祭』と書かれたこの看板に、俺と玖堂が作ったペーパーフラワーは貼り付けられている。
俺が作成したこんもりと美しい花も、玖堂が不器用さを発揮して作った歪な形の花も、他のペーパーフラワーに混じって看板に彩を添えていた。
体育祭は、予定していた時間通りに進んでいるようだ。
実行委員長の顔を見れば分かる。トラブルもなく順調のようで、俺は安堵する。実行委員の上級生たちが張り切っているので、このまま何事もなく終われば良いなと思う。
午後になって、日陰で休憩していたら玖堂がやって来た。
「宮下、お疲れさま」
ペットボトル飲料を手渡され、俺はありがたく受け取った。
「ありがとう」
「順調?」
「たぶん」
ペットボトルのキャップを開けながら、俺はうなずく。
「たぶんって……。宮下は、実行委員なんでしょ」
「そうだけど。下級生だから」
ゴクリと飲む。炭酸飲料の泡が、喉の奥でしゅわしゅわと弾ける。爽やかなレモン風味だった。
「指示されたことをこなすだけだよ」
だから楽なのだ、と玖堂に説明する。
「……メガネの三年生と、よく話してたね」
どうやら、見られていたようだ。
「あの人が、実行委員長だよ」
「ふうん」
「彼から指示されるんだ」
私的な会話ではなく、指示を受けていただけ。
つまり、玖堂が嫉妬する必要はないことを暗に伝えたのだけど……。
「実行委員長のこと、格好良いとか思ってないよね?」
残念ながら、玖堂には伝わらなかったようだ。
明らかな嫉妬の目で、俺をじいっと見る。
「……まぁ、的確な指示を出すなとは思うけど」
一年生の頃から実行委員をしているようなので、無駄のない采配だった。
「そういえば、誘われたな」
二年生になっても実行委員になって欲しいと言われた。人員確保に苦労しているのかもしれない。
俺の言葉を聞いて、玖堂が明らかな動揺を見せた。
「さ、さささ、誘われた……!?」
真っ青な顔で、口をパクパクさせている。今にも卒倒しそうだった。
「勘違いするなよ。勧誘されただけだから」
苦笑いしながら、俺は玖堂を宥めた。
しばらくすると、アナウンスが流れた。リレー選手は集合するようにという放送だった。
「呼ばれてるよ」
玖堂に声をかける。
運動神経に秀でているので、玖堂はリレーの選手に選ばれていた。しかもアンカー。
「……行ってくる」
しょんぼりと背中を丸めながら、玖堂が歩き出す。
「テンション低いな」
「だって、宮下が」
ふくれっ面で、玖堂が振り返る。
「俺がなんだよ」
「実行委員の仕事で忙しそうだから」
「皆のために、お勤めしてるんだろうが」
身を粉にして、便利屋稼業に勤しんでいる。文句をいわれる筋合いはないはずだ。
「見ててくれる?」
「何を」
「走ってるとこ」
なるほど。俺に見て欲しいのか……。
「分かった。見る見る」
「……本当に?」
玖堂が疑いの目を向けてくる。
そして「返事が軽い」と文句を垂れる。
「ちゃんと見るよ。リレーが始まったら」
「始まったらって……。それじゃあ、見逃しちゃうよ」
「アンカーなんだろ? 余裕」
十分に間に合う。問題ない。俺は「早く集合場所に行け」と急かしながら、玖堂の背中を押した。
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