婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ

文字の大きさ
12 / 101

12.国境を超えるまで~ジャックside

しおりを挟む


何とか国境を出ることができたが、まだ安心できない。
檣楼に上り全体を見渡しながら懐に忍ばせていた花火を使って奥様に信号を出す。


「よし、問題ないな」

奥様に解るように信号を出して、隣国に向かう手はずになっている。

「何が問題ありませんの?」

「ロビン・・・って、危ない!」

「結構高いですわね」

檣楼に上がって来るなんて度胸がある。
まぁ、親に縁を切って貰い、お仕えするお嬢様と国を出ようとする時点で解っていたが。


「何をなさってますの?」

「ビアンカ様に国境を出たお知らせと、後は迎えの準備です」

「ユーリ様の伯母上様ですわね?」

「はい、シメリス帝国の第一皇女殿下であらせられた方です」

「は?」


シメリス帝国の第一皇女殿、セレスティーナ様。
ビアンカ様の姉君であり、陰の宰相と恐れられる程の方でもある。

アシュレイ公爵家に嫁いでいるが、シメリス帝国では女性でも政治に口出す事が許されている。

「あっ…あの、ビアンカ様は皇族とは聞いておりましたが」

「あの方はシメリス帝国の第二皇女殿下なのですが嫁がれる前に、政治的な理由もあり公爵家に養子縁組をした後にウィンディア辺境伯爵家に嫁がれました」

「では…」

「はい、第二皇女殿下で、母君は皇后陛下です。ちなみに申しますと皇女様の中で一番血筋が良いですね」



セレスティーナ様の母君は皇妃ではありますが正妃ではありません。
ビアンカ様の母君は侯爵令嬢で皇后陛下という高貴なお立場でございますので、皇族の中では一番血筋が良いのです。


「知りませんでした…」

「まぁ、身内ぐらいしか存じません。ですので、ステンシル侯爵家はシメリス帝国の皇族を侮辱したも同然。今後は貿易なんてできませんね?ええ、シメリス帝国の皇族は身内との絆がすごく強いのです」

「えっ…」

「母親は違えど、セレスティーナ様とビアンカ様は本当に仲の良い姉妹でしてね?ユーリ様の名付け親はセレスティーナ様なのです」

本当に馬鹿な事をしてくれましたね。
ユーリ様は跡継ぎではありませんが聖騎士という稀な称号をお持ちです。

シメリス帝国は騎士を重宝する国です。
騎士として武功を挙げるユーリ様は自慢だったはずです。

そのユーリ様から騎士という職業を奪い、あげくの果てには婿養子だなんて屈辱は許さないでしょう。

あの方を怒らせたらどうなるか。

いいえ、一番恐ろしいのは第三皇女殿下です。
シメリス帝国の聖女様であらせられるあの方を怒らせたら最後、どうなるか。


自業自得ですが、何も知らない彼等は馬鹿としか言いようがありません。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆小説家になろうにも投稿しています

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

侯爵家を守るのは・・・

透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。 母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。 最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

処理中です...