婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ

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39.婚約破棄の真実

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元第二王子ルゴニス様は清廉潔白な方だった。
剣術に優れ、騎士の鑑とも呼ばれる方であるような人柄だ。

万一真実の愛に目覚めたとしても、ちゃんと話し合いをしてイライザの名に傷がつかないようにするだろう。

にも拘らずこのような強引な事をしたことに関して違和感を感じていた。


「ルゴニス様は優れた剣術とカリスマ性の持ちで主した。しかし王位を継ぐ気はなかったのです」

「うむ、それは…」

「しかし、周りはどうではなかった」


俺も幼少期から王位継承権の争いを目の当たりをしていた。
兄弟仲が良く、互いに足りない物を補っていたお二人に冷や水を刺した愚かな連中がいた。

ルゴニス様を立太子させ、自分達が後ろ盾になり。
あの方を傀儡にしようという考え。

そしてその派閥は外国との同盟を反対する貴族達。


「クレイル殿下を精神的に追い詰め、ルゴニス様を立太子させようと目論んだ者は少なくありませんでした。しかし、エレオノーラ妃は気丈な姫君です」

「母君が中々の気性の方だったからな」

女性が国を統治するのは簡単ではない。
故に隙が無い方だったのは俺にも解っていた。


出会って当初、中々の気位の高さだったからな。


「クレイル殿下は体が弱くとも疎明で、政治にも詳しい。対してルゴニス様は騎士として、申分はないですが政治には疎い…傀儡にはピッタリでした」

「何だと?では…」

「クレイル殿下を何らかの形で失脚させようと動いた者にルゴニス殿下は気づいたのでしょう。政治には疎くても騎士としては優秀なあの方が凡愚なわけがない」


ずっと違和感を感じていた。
ルゴニス様に寄り添うあの少女の事が。


身分は低くとも聡明で立場を弁えていると聞いている。
悪い噂は彼女の優秀さに嫉妬した者が粗探しをしていたのだろう。



「あの婚約破棄騒動も茶番だったのです。すべてはあの方が…」

「待て、それでは」

「ルゴニス様は兄君をお守りする為にわざと廃嫡する道を選ばれました。同時に王太子殿下を失脚させようとする不届き者を一度に潰す為に」


あの方は何処までも国を思い、家族を思い、兄を思われる純粋な方だった。


そんな方が淑女を貶める真似をするわけがない。

できるわけがないんだ。


「ここまであの方を追い詰めたのは…」

「言わなくても良い。ルゴニス殿を追い込んだのはあの娘か」

「はい」


優しいあの方を長年傷つけ追い込んだのはイライザだ。


手紙にはイライザが王太子妃になろうとしている事が書かれていた。

体の弱いクレイル殿下を中傷し、見下すような発言を何度も聞かされ傷ついた事。

そして他国の姫を見下している事。
何より大臣達とクレイル殿下を廃嫡させようとしている計画を知った彼女。



ローゼ・パルキア。

彼女は誰よりも早くイライザの計画に気づいたのだ。







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