婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ

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86.かの名は

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俺の中で該当する姫君は一人しかいない。


「その方の名はローゼ・ルーティーン子爵令嬢です」

「エラ!」


やはりエラノーラ様も一枚嚙んでいたんだな。
アンジェリカ嬢とは親族に当たり、二人は祖国では主従関係でもある。


「私がアンジェリカに頼んで調べていただきました。まぁ、ウィンディア辺境伯爵夫人が既に調べていらしたのですが、直接彼女を見た時に瞳の色とカメオのペンダントを見てもしやと思いました」

「なんと…もっと傍に来てくれまいか」

「ローゼ嬢」

エラ様が手を握り優しく微笑み、ゆっくりと傍に行く。


「そのペンダントを見せてくれまいか?」

「はい」

ロケットペンダントになっているそれを開くと中には写真が貼られていた。


「まさしくこれはジルケのものだ…よく見れば面影がある。そうか…そなたがジルケの!」

「陛下…」

「そなたは妹の娘であれば姪じゃ…許せ。今まで見つけてやれずに」

「いいえ!私は!」


涙を流しながら二人は抱き合った。
陛下は亡くなられた妹君の面影を大事にされていた。


写真を部屋に飾り毎日語り掛けていたと聞く。


ジルケ姫の忘れ形見が目の前にいる事は本当に喜ばしい事だ。


「すべてクレイルから聞いておる。国の為、王家の為に汚名を被ったと。まさしくジルケの娘よ。そして誰よりも誠実なルーティン子爵の血筋もしっかり引き継いでいる。彼は本当に立派な男だった」

「その言葉、父に聞かせて差し上げたいです」



感動の再会の最中、一人震えているイライザ。


「そんな…ありえない。嘘よ。こんなの事嘘だわ!」

「事実だ。潔く現実を認めろ。貴女が行った行為はすべて自分で自分の首を絞めたんだ。妹を虐げなければ、母から庇っていればこんな事態にならなかったはずだ」

「私は悪くないわ!そうよ…全部悪いのはあれよ…きゃあ!」


乾いた音が響く。


「何を…きゃあ!」


イライザの胸倉を掴んだのはロビンで、再びグーで殴り吹き飛ばされた。


「ダメよロビン!」

「止めないでくださいませ。やはりこの女は生きていては行けません。いいえこの一家は三つの国の王族を侮辱したのです。罪深い事をしたのに反省もしないのですから」


まずい。
ロビンの目は悪魔を通り越して死神だ。


イライザを殺す気だ。

「待ってくださいロビン」

「ジャック!」


女装のまま現れるジャックは何故か鞭を持っている。

「せめてこれでしてください。手が傷つきます…というか汚れますので手袋を」


「お前もか!」


止めてくれると思った俺が馬鹿だった。
イライザに対して並みならぬ恨みを抱いているのはジャックも同じだった。


というか、何故今まで姿を消していたんだ。



ふと、ジャックの手には地引網が握られていた。


その中に入っているのはとんでもない物だった。


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