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エスコート
しおりを挟む王都でも名店であるオパール。
宝石のように美しい菓子を提供し、中でも有名なのは苺を使ったケーキ。
食器もこだわっており、アンティークな器は年代物で歴史を感じさせる。
王都では貴族御用達の店が立ち並ぶがオパールは別格だった。
とはいえ昔ながらの伝統を守り続けているので煌びやかと言うわけではない。
店の周りには季節折々の花が手入れされており、幼少期から通っていた。
ただしその店はかなり高い。
貴族令嬢が入るには問題ないが、今は侍女と言う立場上通うことはできなかった。
それと言うのもプライム家の財産を食いつぶしている義母と義妹はアレーシャの給料も奪い、父親から渡されているお金も横取りしていたからだ。
その所為で節約生活を余儀なくされて贅沢などできなかった。
(いつ以来かしら)
自然と浮足立つ。
もう何年ともここには足を運んでいない。
だが、同時に思ったのはレオンハルトは何者かということ。
貴族御用達で、王族が贔屓にするお店に頻繁に足を運ぶなんて普通はありえない。
「いらっしゃいませ…アレーシャ様!」
「お久しぶりです」
出迎えてくれたのはこの店のオーナーのオパールだった。
「まぁ、本当にお懐かしゅうございます。それにしても…」
「久しぶりだね」
「レオンハルト様…」
オパールは頭を下げる。
アレーシャは二人が親しい間柄だということに気づく。
「お二人はとても懇意な関係なんですね」
「ああ、母がここのケーキの大ファンでね。私も甘いものは好きだけど、ここには思入れがあるんだ」
「思い入れ?」
「ああ」
嬉しそうに微笑む。
視線の先にあるのは、庭に咲く小さな薔薇だった。
「フフッ…ここはレオンハルト様の隠れ家であり初恋の姫君と出会った場所ですもの」
「オーナー」
「怒らないでくださいませ。さぁお入りください」
ムッとするレオンハルトを翻弄するオパールはかなりの大物だった。
「アレーシャ様」
「あっ、ありがとうございます」
店の中に入ろうとしたらレオンハルトが手を差し伸べエスコートをしてくれた。
入ってからも椅子を引いてくれて、こんな風に優しくリードしてもらったのは父親や祖父以来だ。
後は王弟殿下エンディミオンだった。
家同士の付き合いのあるグランツ侯爵家の次男エリックには手を引いてもらったこともましてや優しい言葉をかけてもらったことはない。
(レオンハルト様…不思議な人)
最初から偏見の目を持たず本当の姿を見てくれた人。
優しく笑ったり意地悪なことを言ったりと様々な表情を見るうちに硬く閉じられた心が開いて行くような気がした。
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