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王弟殿下
しおりを挟む現れたのはレオンハルトだった。
「アレーシャ!」
「レオンハルト様…」
弱り切った表情のアレーシャを見てすぐに駆け寄り大胆にもお姫様抱っこをする。
「これはどういうことだ。女性を囲み悪趣味な」
「なっ!無礼な」
「無礼なのはどちらです…」
レオンハルトは嫌悪感を表す。
「近衛騎士如きが!!」
ルクレチアは自尊心の塊だった。
一介の近衛騎士が逆らうのが我慢ならず声を荒げる。
「何事だ」
「「「「王弟殿下!」」」
ルクレチアが扇を振り下ろそうとしたと同時に現れたのは王弟殿下だった。
「何を騒いでいる」
「これは…」
「アレーシャ!どうした」
レオンハルトに抱かれている姿を見て駆け寄る。
「かなり顔色が悪いな」
「殿下」
「すぐに部屋に連れて行こう。もしやここにいる連中に何かされたのか?」
ギロリと睨みつける。
この状況を見れば明白だった。
「もしや具合が悪い女性を囲んで何かしたのではないだろうな?」
「そのようなことは!」
「そうか…そうだな。アレーシャは俺にとっては妹同然だ」
一瞬でざわめく。
これまで陰口を叩いていた者、あることないことを噂を流していた者、仕事を押し付けた者も冷や汗をかく。
「恐れながらそのような言い方はいかがなものかと。それは一介の侍女ですわ。まさか側室にでもなさるおつもりで?」
「いくら何でも王族に泥を塗りますわ。御冗談をお母様」
ルクレチアの言葉にカテリーナも不敵に微笑みながら妖艶な笑みを浮かべるが当の本人は。
「側室?冗談にしては質が悪いな」
「そうですわ。お戯れを‥‥」
「妃の間違いだろ?アレーシャは母上のお気に入りだぞ」
「「「は!?」」」
さらに爆弾発言が落とされた。
王弟殿下の母親と言えば一人しかいない。
「また御冗談を!」
「いや冗談ではない。母上はアレーシャを気に入っている。前王妃も…だから王女の専属侍女に迎え成人したら王妃専属の女官に据え置く予定だったんだが」
「なっ…何を!」
「お戯れを!」
ルクレチアとカテリーナの表情に余裕はなかった。
それどころか焦りが見える。
「何を言う?アレーシャ程の令嬢なら王族に嫁いでも当然だ。王女の世話係だけでなく王太子の教育係もしているんだからな」
「ですがそれは!」
「一介の侍女が王女と王太子の教育係を任せるだけの信頼がある証拠だ」
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沈黙を守り続けていたレオンハルトが睨みながら告げる。
「そんな…大袈裟な」
「大袈裟ではない。実際アレーシャは地位を約束されていた。本人は辞退したがな」
「なんですって!」
特別待遇を用意されていたにもかかわらず辞退したと聞かされ唖然となる。
「アレーシャは王女と王子の世話係役は特別な権限を持つべきではないといと陛下に願ったんだ。侍女の鑑だ」
「ありえない…これにそんな価値があるはずが」
公衆の面前にもかかわらずさらに罵倒を続けるがそれは続かなかった。
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