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第一章光の少年と癒しの歌姫
9王女の後悔
しおりを挟む静まり返る部屋の中。
「私がいれば!」
机を叩き、本を床に叩きつけられる音が響く。
物に当たっても仕方ないのは解っているが、どうしようもない思いがアンジェリークを苦しめる。
「宮廷に…いいえ、学園にも気を配るべきだったわ!なのに…」
アンジェリークの持つ水晶のついたピラミッ形の魔道具。
それは先ほど再生した物とは別に映像を記録できる物で、断罪の場面も記録されていた。
「あんな惨い事を」
この証拠を突きつける事は出来た。
だが、あんな惨い映像を公の場に晒せばオンディーヌが更に晒し物にされる。
ましてや衣服が破けた映像を公の場に写す事は出来なかった。
「ごめんなさいオンディーヌ…私の所為で。貴女を聖女の後見人を任せたばかりに」
アンジェリークは聖女の危険性を過去の記録を見て知っていた。
だからこそ最も信頼できる友に任せた。
聖女とは女神の使者でもある。
国を救う存在でもあれば、時には災いを呼ぶ存在になる。
聖女と魔女は紙一重。
祝福を与える事はリスクを伴い、時には災いを招くことになる。
過去に聖女を利用しようとした権力者に。
裏切りにより魔女となった聖女もいる事を知ったアンジェリークは聖女を導く存在が必要だと考えた。
正しく導き共に寄り添える者。
「私が間違っていたのですか…私が彼女を聖女の導き役にしたのがこんな事に」
アンジェリークはオンディーヌを誰よりも信頼していたからこそ任せた。
そして聖女を導いた代役としてオンディーヌが皆に評価されればと思ったのだ。
戦う力がないとしても、時として平和の歌を歌うオンディーヌは戦う術よりも勝ると信じていた。
「女神よ、何故です」
昔からオンディーヌは過酷な運命を強いられて来た。
「優しい人が傷つき不当な扱いを受け、ずるがしこく、他者を踏みつける者が優遇されるなんて」
こんな運命認めない。
「私はこんな事許しません。貴女が強いた運命でも従いませんわ」
女神に逆らうなど許される事ではない。
だが、アンジェリークは運命を信じて従う程大人しくなかった。
「何としても彼女を探さないと。その前に彼女の矜持を汚した者に罰を与えなくては」
歯を食いしばり睨みつける。
「私の信頼を裏切った騎士、そして馬鹿な連中にもそれ相応の報いを受けさせるわ」
王女として私欲のために権力を使う事はしない。
あくまで正当な方法で罰を与え、どれだけ愚かな事をしたか思い知らせようと思った。
「人の善意を踏みにじった報いを受けなさい」
静かにアンジェリークは部屋を出て行くのだった。
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