【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ

文字の大きさ
7 / 144

6.噂の少女

しおりを挟む



私達の事などお構いなしに話す殿下に王妃陛下の表情がどんどん険しくなるのが解ってないのかしら。


ふと、メディス伯爵の視線が気になった。
私は顔を上げななかったけど、紅茶に映る彼の目が気になった。

王妃陛下を見ていらっしゃるのか、それとも――。


「紹介するよ。彼女はロゼッタ」

「ロゼッタと申します」

「かしこまり必要はないよ。これから長い付き合いになるんだから」


私と彼女が王宮で顔を合わせることはあれど、長い付き合いとはどういうことなのか。

「いいわ、お座りなさい。彼女にもお茶を」

「かしこまりました」

傍付きの侍女は手早くお茶の準備をして席に座るように促すも。


ガタン!

「あっ…」

テーブルに手をついたロゼッタさんはカップをひっくり返してしまった。

「火傷をしますのでお触りにならないように…これで」

「ありがとうございます」

ハンカチを差し出しながらも彼女の手を見ると労働の手だった。
手入れもされていない荒れた指をしていて、ドレスも着せられているような雰囲気で彼女には似合ってない。


椅子に腰かけようとするも、音がしてしまう。
お茶を飲もうとするも、カップの音がしてしまうので王妃陛下は沈黙を守っていた。


「彼女はまだ慣れていなくて」

「温室の花と野原の花は違うものね?野原の花を無理に温室に入れるのはどうかと思うわ」

「母上!そのような…」


王妃陛下は感情的にならず、ロゼッタさんに告げた。

「貴女は、覚悟がありますの?」

「覚悟…」

「温室は厳しいわよ。広い空で生きて来た花は温室ではすぐに手折られてしまうか枯れるか…見た目華やかでも中は陰湿な嫌がらせが多いわ」

華やかに見えて王室は魔の巣窟。
少しの油断が命取りになり、噂で人を殺す事も出来る。

私達は平民と違い、裕福な生活ができる代わりに、代償は大きい。
彼女に耐える覚悟と、過酷な環境で生きていくだけの賢さがあるのかと問うていらっしゃるのかもしれない。


「ティエゴ、貴方は彼女をどうする気なのです。淑女教育を受けていない少女を妃に迎え、後宮に囲むつもりなの?」

「囲むなんて!」

「そうなれば、彼女は他の令嬢にどのような目に遭うか」

私が王太子妃候補だった頃から、側妃の座を狙う貴族令嬢は少なくなかったし。
寵妃の座を狙っている方も少なくないのに、後ろ盾のない平民の少女が対抗する術はない。

私ですら、幼少期から地味な嫌がらせも少なくなかったのに。

「母上は、ロゼッタがお嫌いなのですか!彼女は本当に素晴らしい女性で」

「私はこの国の母として、そして一人の母親として告げているのです。彼女がこのまま王宮に放り込まれれば…」

「彼女の素晴らしさを知れば…」

「そんなもの貴族には不要です」


貴族の婚姻は利益の追求だから、人柄よりも血縁を重視される。
王妃陛下は平民だからダメだと反対しているわけではなく当然の事を言っているのでしょうけど。

「ティエゴ、歴代の寵妃生命が短いのは知らないはずはないでしょう」

「ロゼッタを妾にするつもりはありません!」

「感情論ではどうにもならないわ」


話し合いは堂々巡りとなり、王妃陛下はこれ以上話しても意味がないと諦めの表情をされ、立ち上がる。

「頭を冷やしなさい。アリスティア」

「はい」


王妃様も舞踏会の準備に公務のあるので大忙しだったので長居は出来ない。

私もここにいる理由は合くなったので去ろうと思った。

「待ってくれ!」


なのに、引き留められてしまった。

この後、待っているのは私をこれ以上無い程侮られる行為と侮辱であることも知らずにいたのだった。


しおりを挟む
感想 396

あなたにおすすめの小説

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

処理中です...