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18.十年前の真実
しおりを挟む目を覚ます傍にはジークがいた。
私の中の記憶は完全に戻っったけど、複雑な気持ちだった。
「ティア、大丈夫か」
「お父様、ごめんなさい」
「お前は何も悪くない。ずっと気を張っていたのだろう」
隣に座るジークを首根っこ掴み投げるお父様。
第一王子殿下なのによろしいのに、不敬罪にならないのでしょうか。
「殿下、娘を連れ出すまではまだしも。このような事になるとは聞いておりませんぞ」
「すまん、まさか気を失うとは思わなかった。術を解く為に少し負担が大きかったか」
「それより、娘から離れてください」
私の記憶はあの花園で完全に戻った。
故意的に記憶を封じられていたということなのかしら?
「どういうことですか、お父様」
私はあの日、ジークに一方的な婚約解消を言い渡されたのではなかったの?
「君と俺の婚約解消は、俺の望む所ではない。ただ、あの時は俺に後ろ盾がないがゆえに、最悪な事態が起きた」
「最悪な事態…?」
「ジークベルト殿下は前王妃陛下の第一子だ。故に後ろ盾がなかった…現王妃陛下は後妻で公爵家のご息女だ。その意味は解るな」
「はい…」
前王妃陛下。
すなわち、ジークの母君は他国の皇族だった。
身分もそれ程高くなく、外国との繋がりを良く思わない大臣からは良く思われなかったと聞く。
対する現王妃陛下は元公爵令嬢で地位もあるので、比べようもない。
当時はまだ国が安定しているとは言い難く王族派は貴族派に対抗しなくてはならず、現王妃陛下を立てる必要もあった。
「陛下は第一王子殿下を王にとの声もあったが、王妃陛下が許さず。また、前妻の王子殿下を王太子にする事は反対する者も多く、結果的にティエゴ様が立太子となった」
「ですが、それと私との婚約に何が…」
「俺が毒を盛られたんだ」
「え!」
ジークが毒を?
「犯人は見当がついている。しかもその毒の所為であらぬ噂を立てられて。俺の味方だったジョルジュ公爵夫妻が追放されてしまった。他にも前王妃陛下…俺の母の臣下も王宮から追い出されたんだ」
私は何も知らなかった。
あの日、泣いているだけだったのに。
「このままでお前の身も危険と判断し、婚約を白紙にした。まだ公表されてなかったのが幸いだが…しかし現王妃陛下が命じられたのだ」
「王妃陛下が?」
「どうしても欲しくばそれ相応の地位を築けと…後ろ盾のない俺にはかなり難しい事だった。しかも次期王太子妃に君が選ばれているタイミングと言い最悪だった」
ジークの言葉を聞いて私も溜息しか出ない。
いくら何でも酷すぎると思った。
まだ幼い王子殿下にこんな無茶を言うなんて。
「王妃陛下は…」
「私にはあの方の心の内は解らない。しかし、王妃陛下は冷酷な方ではない…ただ国母としての判断。国を守る責任故に一個人の感情を消さなくてはならないのだ」
私にはあの方が解らない。
他人に厳しい方であるけど、優しさも持ち合わせている方だった。
そして何よりご自分に厳しい方だったのだから。
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