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19.思い
しおりを挟む過去に事情があったのは解った。
だけど、どうして。
「何故私に婚約を…」
「それを言うか?子供の頃の約束ではあったが、俺は君を愛していたが…あれが馬鹿な真似をしなければ遠くから見守っても良かった」
「ティア、ティエゴ様の事を急ぎ伝えた所。正式に婚約の申し入れをされたんだよ」
「お父様!」
何時の間に手紙を出していたの?
そもそも仕事が早すぎではありませんか!
「このままでは、お前が側妃にされるか。あの男に無理矢理結婚させられ、好き放題されるのは確実だ」
「エドガー・メディスは昔から君を狙っていた。次期侯爵の椅子も欲しがっていたからな。野心家でもある」
ぞくっと寒気がした。
あのお茶会で私を品定めのような目で見ていたメディス伯爵の目は異常だと思っていた。
「あの場で偽りの婚約を正式にされれば、君が嫌がっても大臣が勝手に推し進めるだろう。あの男は君の意志など考えていない」
「そんなことになったら私は自害いたしますわ。あんな無礼者を伴侶になど耐えられません」
「だろうな。君は剣のような人だ…もしくは出家する可能性もある」
「なっ!」
私の考えが読まれている?
もしやお父様も気づいていらしたの?
「確信はなかったが、可能性は十分に考えられた」
「申し訳ありません…勝手な真似を」
「いいんだ。お前は何も悪くない。侯爵家を守るためにしたのだろう?しかし、そこまで家を守らなくてもいいんだよ。私の代で侯爵家が無くなったとしても重要じゃない」
「お父様!」
なんて事を!
本来ならばティエゴ様と結婚した後に娘であれば養子に迎えるはずだった。
私が修道院に行った場合は、侯爵家は養子縁組を迎えなくてはならなくなるけど、あの男を婿に迎えるよりはずっとマシだと思ったのに。
「だが、できるならば…お前の子を養子にしたい。それが私の願いだ…無理ならば侯爵家は私の代で終わりだが、侯爵領地を任せられる者はいるから問題ない」
「お父様…私」
「何よりお前はクリスティアが残してくれた形見だ。私にとって命なんだ」
貴族としては失格かもしれない。
でも、お父様はずっとそうだった。
騎士として誇りを持ちながら、慈悲の心が強かった。
「ティア、義務感をすべて捨てて考えてくれ。私はティアの夫はジークベルト様以外に考えられない。一度は切れた縁であるが、この方は最後まで諦めず戦われたんだ」
「侯爵…」
「殿下、あの時私は最後まで貴方様と娘の縁談を押す事が出来ませんでした。今さら身勝手と思っていますが」
この顔を見て察した。
お父様はずっと後悔をしていたのだわ。
本当は味方になりたかった。
だけどできなかった。
私はこんなにも守られていた事にようやく気づかされたのだった。
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