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27.素敵な旅
しおりを挟むイグナス帝国に来て私は久しぶりに自由な日々を送っていた。
乗馬をしても許され。
好きな時に笑い、走る事もできる。
こんなにも自由な日々を過ごせたのは何時以来かしら。
「アリスティア!中々やるではないか」
「先帝陛下には到底及びません」
現在、馬に乗り狩りを楽しんでいた。
「そうは言うが、既に獲物の数はシーゲル以上だ。あれは狩りが下手でな。この後は鷹狩をしようではないか」
「私、鷹狩が趣味なんです!」
「ほぉ、勇ましい事よな。では勝負だ」
先帝陛下は私に乗馬をさせてくださり、その後は一緒に狩りをしようと誘ってくださり、本当に楽しい。
「伯父上、あまり無理をなさらないでくださいよ」
「まったく、ヘタレめ。少しはアリスティアを見習ったらどうだ…そうだ。この後鉄砲で猪を仕留めよう。今夜のディナーは猪のバーベキューといこうではないか」
「猪でございますか?」
私は豚や牛は食べた事があるけど猪なんて食べられるのかしら?
「猪の肉は美味だぞ?東の地方ではよく食べているし美味いぞ」
「是非食べてみたいです」
恥ずかしくて、口に出して言えないけど。
私は美味しい物が大好きだった。
「伯父上、止めても無駄です」
「はぁー…困ったものだ」
背後で、シーゲル様が頭を抱えているのにも気づかずに。
「よし、あそこの木まで勝負だ!」
「はい!」
私は先帝陛下と馬でどちらが早く走れるかを競いながらも今を堪能していた。
そして二時間後。
「これが猪の肉ですか」
「うむ、これを岩で焼くのだ。昔は狩りに出てその場で肉を焼いて食べるのが好きでな」
「ほらティア。皿を出せ」
肉が焼けると音と、香ばしい香りが食欲をそそる。
けれど困ったのは、猪の肉は串に刺さっていた。
「ナイフとフォークはどちらに?」
「がぶりとかぶりつくのだ。その方が美味い」
「伯父上、令嬢である彼女に無理で…」
「むっ!」
「普通に食べているな」
本当だわ。
豚肉よりもずっと美味しい。
「心配しなくてもティアは幼い頃に野外訓練や野宿は経験しているから魚を齧る事はあったな」
「侯爵家の教育はアバウトだな」
すごく懐かしい。
私が五歳ぐらいの頃はお父様に遠出に連れて行ってもらってリィナも一緒にテントを張った事もある。
その時は魚を焼いて食べたのだけど。
「夢だったんです。またこんな風に過ごせるの」
「そうか。ではこれからはどんどんするとよい。何時でも遊びに来ればよい」
「はい!」
ジークと結婚したら辺境地に住むことになる。
そしたらこんな生活を送る事になるし、乗馬だって日常茶飯事になるなら今から練習しなくては。
王宮とは勝手が違うし慣れないことも多いから、帝国にいる時にしっかり学ばないと。
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