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30.私の居場所~ロゼッタside
しおりを挟む私の家は決して裕福ではなかった。
下町に生まれ大衆食堂を営みに、その日その日食べて行くのが精いっぱいだった。
私も両親の手伝いをするべく幼少期の頃からお店の手伝いをしたり。
家計の手助けとして他所で働き少しでも二人の手助けをしたいと思って学校に通うこともできず毎日働いていた。
裕福でない平民の子供は学校に通わず教会で勉強を教わることが多く。
お母さんは文字の読み書きができるから、家でも勉強をした。
学校に通わなくても勉強はできる。
だから私は将来、二人に楽をさせてあげたいと思ってお店を経営する勉強をすべく、図書館に通ったり他所のお店を見ては研究した。
内職のお針にも精を出して毎日、毎日働いていた。
そんな時だった。
彼に出会ったのは。
「やぁ、君だったんだね」
「え?」
「教会で勉強しに来てる熱心な女の子」
まるでお小説から出て来た王子様のようだった。
「僕はティエゴって言うんだ。君は?」
「ロゼッタです」
まるで夢を見ているようだった。
落ち着いた仕草に優し気な表情に私は、一瞬で恋に落ちてしまった。
「君は何時も教会に通っているのかい」
「はい、神父様に本を借りに」
「本屋で買えばいいのにどうして」
「それは…買うお金がないから」
「ごめん」
悪気のない言葉に苦笑した。
別に今に始まった事ではないし、彼は一切の悪気がないのだから。
私は笑顔で答えた。
「学校に通えない子は近所では多いんです。でも、学ぶことは何処でもできるし」
「君は立派だな」
「そんな」
優しく頭を撫でられ、私の気持ちはさらに大きくなっていく。
けれど――。
「ロゼッタ、あの方とはもう会わない方が良いわ」
「院長先生?」
お世話になっている修道院の院長先生にある日告げられたのはとんでもない事実だった。
「あの方は貴女とは住む世界が違うわ」
「解ってます…でも」
「貴族の若様だったらまだ良いわ。けれどあの方は、王太子殿下なのよ」
「えっ…」
王太子殿下って…本当の王子様?
「尊い身分の方よ。貴女とはではどう頑張っても無理だわ。それ所か、貴女だけの問題
ですまないわ。万一心無い貴族様に知られたらご両親はどんな目に合うか」
「どうしてですか」
「貴女は平民で相手は一国の王子…王家からすれば貴女は殿下の評価を下げる存在でしかないわ。貴女自身に非がなくとも、貴族は貴女を…そして貴女の身近な人を傷つけるわ」
「そんな…」
私は恋に溺れて何も解っていなかった。
ティエゴ様が貴族の方だと言うのはなんとなく気づいていたけど。
王子様だったなんて思いもしなかった。
けれどこの時は院長先生の言葉をまだ理解できていなかった。
彼と一緒にいることで私の大切な人が傷つくなんて知らなかったの。
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