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99.歪みの原因~エドガーside③
しおりを挟む箱入りで従順なティエゴ様を操るのは簡単だった。
幼少期から王妃陛下を引き離しそうなるように仕組んだのだから。
伯父上と私の言葉は素直に聞くので少しばかり誘導すればその通り動いてくれた。
ただ問題はあの娘だった。
すこしばかり世間知らずではあるが、あの娘は恋の為にすべてを犠牲にできない。
いうなれば偽善者で自己犠牲主義の愚かな女だった。
しかも面倒な事に、懇意にしている修道院の院長が余計な事を言った事でティエゴ様と距離を置こうとしていた。
ならば離れないように追い込めばよい。
ティエゴ様の妃を狙う貴族に少しばかり噂を流してやった。
そうすれば、奴らは考えなしに行動した。
まずはあの娘、ロゼッタの両親が営む飲食店の営業妨害を始めた。
同時に父親を事故に見せかけ襲って、その後も野菜を卸している八百屋に魚屋にも脅しをかけ関係を断つように仕組んでいた。
後は時間が過ぎれば追い込まれるだろう。
早くティエゴ様に縋ればいい。
そして王宮内で噂を流しアリスティア様の心に揺さぶりをかけた。
しかし――。
「お止めなさい、そのような下品は噂は」
「アリスティア様!ですが!」
ティエゴ様に思い人がいて、その女性が身分の低い方だと噂が流れるように仕組んだ。
なのにあの方は。
「噂は噂にすぎませんわ。貴女達はこの目で見ましたの?」
「見ていませんが…」
「それに万一にでもティエゴ殿下が思う方がいたとしても、下世話な噂を流すことは許されません」
凛とした声ではっきりと告げるアリスティア様に誰もが言葉を失う。
「メディス伯爵、このような噂が流れているのに、何をしていますの?」
「ですが!」
「噂の出所を早くつ解き止めてください。私のこれ以上酷くならないようにいたしますわ」
背筋を伸ばして、去って行くアリスティア様。
彼女も疑いは持っているのに、顔に出さずに振舞っていた。
その表情が愛おしくも憎らしくも感じた。
あの顔を壊したい。
すました表情を取り乱し泣き叫ぶ表情にしたいとさえ思った。
だから私は作戦を変更した。
ロゼッタとティエゴ様の関係を激しくさせ、その一方でアリスティア様にある物を届けた。
普段殿下が使われているハンカチに香水をふりかけ、アリスティア様の目につくところに落としたのだ。
後はティエゴ殿下を下町に行かせる日を増やし、それと並行して両親を追い詰めた。
私の計画は成功した。
ロゼッタの母親が過労で倒れた事でティエゴ殿下は決心された。
だが、あの女は私が思ったよりも愚かだった。
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