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102.思い上がり
しおりを挟む全てを自分の手に収めようとした結果、全てを失うなんて。
「因果応報だな」
「ジーク」
「お前はティアを愛していると言いながら、ティアを愛していない」
「そんな!」
取り押さえられながらも暴れまわるメディス伯爵はジークを睨む。
「ティアはお前の欲求を見たす消耗品じゃない。ロゼッタもだ。何様だ」
「黙れ、貴様などが私に指図をするな。異端者の子が!」
「なんて事を!」
この男、本当に頭がおかしいのではないか?
前王妃であろうとも、他国の皇族の血を受け継ぐジークに無礼な。
「身の程を弁えないのはどっちですの?貴方は何様のつもりです。私を、ロゼッタを道具にして、ご自分が神にでもなったつもりですか…いいえ、神であろうともそのような行いは許されません」
「ティア様!」
「汚らわしい。馴れ馴れしく親し気に呼ばないでください」
許可もなく愛称で呼ばれることが不愉快だわ。
「貴方は赤の他人。愛称で呼ぶなど無礼ですわ」
「何を言っておられるのですか?そこの異端児に騙されているのですね…本当に恐ろしい男だ」
「いい加減に…」
「あの時に確実に仕留めれば良かったものを…」
何を言っているの?
どうして。
何故ジークが毒を盛られた事を!
「あの悪女同様に本当にしぶとい事です」
「エドガー止めぬか!」
背後で拘束されている王弟殿下が声を荒げる。
「我が国に災いを呼ぶ魔女は醜く苦しみながらも異物を残してこの世を去ったのです。魔女の異物は処分しなくてはならないというのに…やり方が甘い」
「エドガー!」
「呪いでも死なないとは」
ゾッとした。
この男は何を言っているの?
呪い?
前王妃陛下は体が弱く、ジークを産んですぐに亡くなったと聞く。
なのに――。
「やはりそうか」
「貴様!良くも私の大事な妹を!」
先帝陛下とシーゲル様の目は解っていたという表情をされている。
「病と聞いたが主治医は出産後に王宮を出て、事故で亡くなった。しかも遺体は見つかっていないとな」
「偶然にしてはおかしいと思ったが、馬車は崖から転落して海の底だったので調査は出来なかった。しかし十年の歳月である物が見つかったんですよ」
「その男の骸骨がな」
二人は王弟殿下を睨みつけられた。
「随分とふざけた真似をしてくれたな。調査が打ち切りになり、他国との外交問題になるので調べるのに苦労したが…」
「そんな…馬鹿な」
ガタガタと震える王弟殿下。
先帝陛下に勝てるはずがないのだ。
「今すぐ正直に申せ!王都から追放になった後に地獄の果てまで追いかけられたか!死ぬよりも惨い生き地獄を味わせてくれるわ!」
「申し訳ありません!」
王弟殿下は土下座をして泣き出した。
そして語られたのは惨い真実だった。
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