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109.本当の悪人~ジークベルトside
しおりを挟む恐ろしい男だ。
この国で最も敵に回すべきではないのは母上を通りこしてこの男かもしれない。
「極悪人め」
「褒め言葉に頂きますよ?ジークベルト様」
誰が褒めるか。
貴族派の貴族達には散々嫌味を言われて来たし、十年前の暗殺事件に全く無関係ではないから庇う気はないが。
同情はする。
ルクシウスはやられた10倍で返す男だ。
「待つてくれ!アルデンテ伯爵…頼む!助けてくれ」
「そう言いながら嫌がり、泣き叫ぶいたいけな少女に貴方は何をしたんですか?」
「それは!」
「部下の話によると、母親を殺されたくなかったらいう通りに脅したり。結婚が決まっている娘を無理矢理襲って精神的に追い詰めたとか?なんと外道…これは正当な裁きですよ」
「ダメだわ。もう止まらないわ」
「ああ、スイッチが入っているな」
ルクシウスは最初から手加減をする気はない。
しかし貴族の中でも名家である彼等がこんな反吐の出る事をしていたとは。
「悪事を行った以上は罪を償ってください。私は優しいですから慈悲を持って償う場を与えて上げているのですよ?決して死刑なんて非道な事はしませんよ」
(((絶対嘘だ!)))
口には出さなくともこの場にいる者全員が思った筈だ。
死んだ方がマシという目に合わせて最後はどうなるか想像したくない。
「罪人を連行する。連れて行け」
「「「ハッ!」」」
ルクシウスが合図をすると既に拘束されている貴族達は身動きが取れなかった。
「なっ!何時の間に」
「逃げるんだ…何だ!」
扉からは他の騎士団が壁となり、出入口を塞いでいる状態だった。
「私が簡単に逃がすとでも?既に警備隊にも連絡しています。国外に逃亡しようとしても無駄ですよ?既に他の者も捕らえていますし、船は海の底ですから」
「鬼だ。お前は最悪の鬼だな」
「貴方は甘すぎるんですよ。私が貴方ならばティエゴ殿を罪人にでっち上げ。橋の下に捨てるぐらいはしますね?もしくは売り飛ばすぐらいはねぇ?」
「もう止めてやれ。既にお前の悪行を目の当たりにして失神している」
このやりとりを見て静かだったティエゴは白目を向けているのだから。
温室育ちで貴族の悪行などをちゃんと見てこなかったからショックが大きいだろう。
「アルデンテ伯爵。大儀でありました」
「ハッ…」
「罪人の処遇は貴方にお任せしますわ。徹底的におやりなさい。私が許します」
「母上…」
いいのか。
容赦がないのは母上も同じだったか。
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