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番外編第三章元伯爵騎士の現在
4.絶望の裏腹に
しおりを挟む土木作業の次は家畜の世話をする羽目になった。
「ほらキリキリ働きな!ミルクを今日中に運ぶんだからね」
「くっ…何でこんな目に」
伯爵だった私が牛の乳しぼりだと。
「ちょっとアンタ!何で下手なんだい!」
「何だと!」
「もっと丁寧に優しくやりな…牛が機嫌悪くなってんだろ!」
中年の女が私のやり方が悪いと言うが、初めてなんだ。
「こんな仕事奴隷の仕事だ。こんな頭の悪い生き物の乳しぼりなんて」
「モォォォ!」
「へ…ぎゃああああ!」
何故か背後から牛が突進して来た。
「馬鹿だね、ここのボスママ牛の前で悪態をつくなんて」
「止めろ!」
「牛を馬鹿にするからそんな目に合うんだ」
牛が角を私にめがけて突進して来る。
もしあの角に刺さったらひとたまりもないではないか。
「わぁ!」
バシャン!
死ぬ気で走り続けた私はそのまま池に落ちたが。
「エドガー、早くがった方が良いぞ」
「何?」
ニヤニヤ笑うルクシウス。
私は嫌な予感がした。
「シャァァァ」
「ひぃ!」
何故こんな所にクロコダイルがいるんだ。
「そこはクロコダイルの池だ。今は興奮している時期だからな」
「ひぃぃ!」
私は何故こうも天に見放されているのだ。
こんな目に合ってまでも死ぬこともできず生き恥を晒して生きて行かなくてはならないなんて。
「この程度で償いになると思うなよ」
「くっ…」
このような屈辱を味わい、クロコダイルに腕一本を持って行かれた後に思い知る。
死神と呼ばれた男は私をじわじわと追い詰めなるべくここに送ったのだと。
私の地獄はまだ始まったばかりでしかないと知る由もなかった。
なのに私の絶望とは反対に清々しい空が青くすべてが憎らしかった。
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