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第一章婚約破棄と白のグリモワール
16ハプニング
しおりを挟む復学して早々に別のクラスになってしまったメアリは新しいクラスで上手くやっていけるのだろうかと不安になった。
「二人と話せないままだったな…」
教室でも空気が張りつめていて、あの時アークを見た時の表情が忘れられない。
「私はアークに嫌われたのかな」
ポーションをちゃんと渡せなかった事も悔やむ。
「お父様にお願いして婚約解消の手紙は書いた。アークとユフィにも傷つかないようにお願いしよう」
王が取り決めた婚約は当人同士ではどうにもならない。
だからメアリは治癒師として学園卒業後は最前線に立たせてもらえば返せるかもしれない。
言い方は悪いけど、死地に立つ治癒師は騎士の家の者や平民が多い。
貴族出身は少ないのが現状だった。
メアリは家を守る為にも身を捧げることで考慮はさせてもらえるだろう。
それに騎士団長である父の傍にいれるんだから悪い事ではないはずだと思ったし、親切にしてくれたミカエルの役に立とうと思ったのだ。
そんな時だった。
「えっ?」
地響きが起きた。
「わぁ!地震!」
いきなり床が揺れる。
ガタガタと揺れる中、校舎にいる生徒が混乱する。
「あっ…」
倒れそうになるメアリだったが。
誰かに支えられる。
「動くな、今は大人しくした方が良い」
「えっ?」
振り返ると漆黒の色が広がる。
珍しい黒髪に黒い瞳をした少年だった。
「何が起きているんですか」
「飼育舎から魔獣が抜け出したそうだ」
「え?」
窓を見ると牛や馬達が興奮状態にある。
特に興奮しているのは魔牛と呼ばれる生き物だった。
「テイマーがしくじったようだが…急いで避難を」
「メアリ!」
「殿下?」
混乱状態の中に大急ぎでかけつけたのはミカエル達だった。
「ユリウス…君も無事だったか」
「ああ、とにかく俺達も」
「皆さんの避難誘導をお願いします」
メアリは窓を開けて身を乗り出す。
「「は?」」
「魔獣達は何らかの原因で興奮していますが、怖がっているだけです」
「いや…何で解るんだ。それおりも窓に身を乗り出すんじゃない!」
「どなたか存じませんが、先ほどは助けてくださりありがとうございます」
「いや、お礼なんて言っている場合か!」
メアリは窓から飛び降りる。
「お嬢様ぁぁぁ!」
メアリを探していたセイラも現場に居合わせるも時すでに遅し。
「あの馬鹿!」
「とにかく僕も行く」
「おいミカエル!ああ…仕方ない!」
メアリに続き二人も後を追った。
その先では、今日は学園の見学に来ている親子が多数いた。
来年にこの学園を受ける予定の貴族子息、令嬢とその親達は混乱に巻き込まれていた。
おして…
「お母様ぁ!」
「スーニャ!」
母親と引き離され、魔牛に踏みつけられる寸前だった。
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