白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!

ユウ

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番外編

幼き女王の爪痕①

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ラセンドル帝国は大国であるが、決して穏やかな国ではなかった。
常に骨肉の争いを繰り返し、家族であっても敵同士というスタイルが強かった。


先代皇帝陛下を殺して帝位を引き継ぐ。
まるで蝮のようだと言われていた。だからこそ、野心家な第三皇子のニルキナはアークを利用したのだろう。


王太子妃となる前にメアリはラセンドル帝国の内情を調べて欲しいとティエルドに頼み込みこっそり帝国を調べ回っていた。


幸いにもラセンドルから逃げて来た商人とその家族から話を聞かされた。


「ラセンドル帝国は民にとっては地獄です」

「貴族は少しでも逆らえば殺されますし。子供だろうと女だろうと…」

「気に入れば無理矢理妾にされ…」



逃げて来た家族はこれまでの事を震えながら教えてくれた。
領主は増税をして、少しでも払えなければ暴行を受け、若い娘は売り飛ばされる。


それだけならまだマシだった。
酷い時は憂さ晴らしの為に幼い子供は鞭で打たれ、殺されても遺体を放置される始末だった。


「皇族はもっと酷くて…敵国の兵を動揺させる為に子供を盾に…」


(酷い…酷すぎる)


聞けば聞く程惨く、耳を塞ぎたくなる。
話しを聞かせてくれた商人一家には商家の娘とだけ偽り話を聞いたが。


その後に見せられたのは娘の体が痣だらけだった。


「その傷は…」

「帝国軍にされました。夫は裸で馬で引きずられた後に私の目の前ではりつけに」

その後、槍で貫かれた事を聞かされたメアリは耐え切れなかった。


「皆、従うしかないのです。生きる為に」

「だけどもう耐えきれません!ですから私は殺されるのを覚悟で逃げました」


国境を越えても生きた心地はしなかった。


「この国に来て、五年。ようやく息ができて、夜に眠ることができるようになしました」

「そうでしたか…」


母親はまだ三十過ぎであるのに、精神的な苦痛で五十過ぎに見える程更けている。
娘もストレスで老け込んでいた。



「メアリ…」


「許せない」


人として、国を守る側の人間であるながら自分の為なら誰かどうなろうと関係ない。


ニルキナも自分が帝位を得る為に利用する為にアークを使った。


「腐っているわ」

「ああ、許されない行為だ」


ティエルドは騎士として誇りを持ってた。
敵に関しては容赦はないが、守る側の人間として役目を全うしていた。


「お父様、彼等はこの先我が国も手を出すでしょう」

「わが国だけではない」


ラセンドル帝国が真っ先に手を出す可能性があるのはアルフリート帝国だった。

共に大帝国なので対立関係にもあるのだから。


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