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番外編
幼き女王の爪痕②
しおりを挟むあの襲撃事件からメアリはずっと考えていた。
真面な国が、裏切り者に協力を頼むのは不自然だった。
例え後から切り捨てるとしても他国の教皇を愛人にするという発想を世間知らずの第三皇子が考え付くだろうか。
悪知恵を与えた首謀者がいるはずだと思った。
「ラセンドル帝国の政治を裏から動かしているのは皇妃だろう」
「皇妃に国を乗っ取られるとは馬鹿ですか」
「まぁ野心はあれど、馬鹿だからこんな馬鹿な政治が平気できるんだろう」
ティエルドも以前からラセンドル帝国に未来はないと思っていたが皇妃や側妃を人質に取り軍事力を得ているので軽はずみな行動はできなかった。
「ですが、民を消耗品に使い、既に後がない」
「ああ、妻の母国から金を借りている状態だが…既に手を切られているようだ」
「ならば先に叩くのは側妃の国でしょうね」
「既に手を打ってある」
仕事の早いティエルドは布石を投じてあると告げられにやりと笑う。
王太子妃となってからメアリは着実に学んできているのだ。
「私は、役目を放棄して特権だけを得る者が大嫌いです」
「ああ」
「弱い立場の人を脅す行為も」
以前ならば解り合おうと考えていた。
けれどどうやっても解り合えない人がいる事を痛い程理解した。
「ラセンドルに手を差し伸べた方もいたはずです。なのに…」
「優しさにつけこむのは奴等の手口だ」
それでもこの時はまだ強引な手段に出る事はなかった。
しかし事態が一変したのはメアリに頻繁に手紙が来るようになった最中。
領地に里帰りする最中に刺客に襲われそうになったのだが。
「おいおい、随分と間抜けだな」
「何故…」
闇の乗じて馬車を襲おうとするも、ユリウスとハインツに返り討ちにあう。
「道中で殺気を感じたんだよ。だから転移魔法で馬移動して姫さんを馬に乗せたんだよ」
「そんな!」
「馬鹿め、そもそもグリモワールが許すか」
メアリは結界魔法が得意なので近づいて攫おうものならグリモワールが魔力を発動するのだから。
「さぁて、俺達と来てもらおうか」
「くっ…」
刺客は咄嗟に毒を飲んで自殺を図るも。
「なっ!何故だ」
既に隠していた毒を飲むも、薬は空っぽだった。
「アホ―!アホ―!」
「地獄鳥は毒薬が好物でな?既にアンタの薬はこいつが飲んでるんだよ」
よく見ると便の底には穴が空いていた。
しかも羽が刺さっている。
「さぁ、楽しい楽しい拷問といこうや」
騎士とは思えない悪人顔でハインツは刺客の胸倉を掴み洞窟に連行して行った。
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