42 / 47
番外編
番外編4. 修学旅行-2
しおりを挟む
次の日、普段の何倍も早く起きて、僕たちは家を出た。薫姉さんも簡単に着替えて最寄り駅まで送ってくれた。
「気をつけるんだよー!」
「はい、薫さん! ありがとうございました!」
薫姉さんとすっかり打ち解けた将吾は、姉さんからハグを受け、僕も姉さんとハグをして別れた。数日間の旅行だけど、ほんの少し寂しくなってしまう。
二人で数駅電車に揺れる。お土産は何がいいか、何が食べたいか話していたらあっという間に空港に直結している駅に着いた。
「奏、おはよう」
改札を抜けるとすぐ、颯人が待っていた。長いフライトでも楽なようにダボっとしたグレーのスウェットを着ているが、その姿はいつも通りかっこいい。
「はっ颯人、おはよう」
「相変わらず、俺には挨拶しないんですか?」
「将吾もおはよう」
「おはよう。駿は?」
「こっちまで歩くの嫌だって。荷物見てもらってる」
颯人が僕からスーツケースを奪ってしまって僕は手持ち無沙汰だ。帽子を深く被った颯人は、母さんが騒いでいた空港でのアイドルみたいで、つい見上げてしまう。
「ん? どうしたの?」
僕の視線に気づいたのか、口角を高く上げて問うてくれる。
「アイドルみたいで、かっかっこいいなって」
「……奏は可愛い」
僕たちを後ろから追いかけていた将吾が、呆れたような笑い声を出す。
「そういえば颯人、奏って朝めっちゃ弱いんだな」
「……喧嘩売ってる?」
「ははは」
修学旅行の一団を見つけた将吾は笑いながら先に行ってしまった。確かに僕は朝、起きるのが下手で、気づいたら洗面所なんてこともあったけど、みんなが話題にあげるほどなのかな?
僕たちも一団に混ざって、スーツケースを置いた。グループ全員が揃っていれば、担任に声をかけて勝手にチェックインをしていいことになっている。ただでさえ多い修学旅行生が固まって行動していたら一般の人の迷惑になるかららしい。だから僕たちも早速荷物を預けて、施設内をぶらぶらすることにした。
四人で歩いていると、僕以外はみんな背が高いからか結構目立つみたいで、何度もすれ違う人たちに見られた。中には話しかけてくる人もいて、颯人は芸能人なのか、連絡先は交換できないか聞かれていた。駿くんにその度に颯人を茶化していた。
颯人はいちいち対応するのが面倒だと言って、途中から帽子をとって、僕の手を握りだした。将吾や駿くんの前ならともかく、人前ではあまり手を繋がないようにして僕を気遣ってくれていたから、これはイレギュラーなことだった。
「奏が俺を守ってね」
男同士が手を繋いでいればそれはもうカップルだ。今度は違う意味で目立ってしまって、僕はもう真っ赤だったと思う。
途中で本屋に寄って、僕と颯人は揃いで本を買った。読み終わったらお互いに感想を言い合おうと約束する。そんな僕たちを横目に駿くんは「恋愛がしたい」と言っていた。
「駿が恋愛してもこんな感じにはならないだろ?」
将吾の指摘に駿くんが顔を顰めた。
本を買って満足した僕たちは、保安検査を済ませて搭乗エリアの方に入った。こっちにもたくさん店があるので、また四人で適当な店を見て回る。そうやって時間を潰していたら、搭乗ゲート集合時間はすぐにきて、僕たちはそっちに向かった。途中で颯人がカフェラテを買った。
ゲート前についてすぐ、颯人は僕のチケットを回収すると、クラスメイトの一人に話しかけに行った。
「何してるのかな?」
「ん? クラスのグループチャット見てない? チケットもらってすぐ颯人のやつ、グループに写真送って、座席交換してくれって言ってたじゃん?」
駿くんの指摘を受けて、スマホを開いた。本当だ。なかなかスマホは見ないから気づかなかった。でもいつの間にそんなことしてたんだろう?
「加藤が、座席の交換は自分たちでしろって言ってたからさ、颯人、どうしても奏と隣になりたいんだなあ」
チケットはチェックイン順だから大抵隣になれるけれど、颯人と僕はちょうど一列前後で離れてしまった。だから颯人は、席を変わってくれる人を探したようだ。
戻ってきた颯人は満足そうに、僕にチケットを返してくれた。
「感謝の印のカフェラテ断られちゃった。奏飲む?」
「う、うん。……ありがとう、嬉しい」
「ふふ、俺が奏の隣じゃないと嫌だったんだよ」
十数時間のフライトは本当に長かった。でも楽しかった。
機内食は僕がチキンを頼んで、颯人がビーフを頼んで、お互いに分け合えたし、映画も同じものを見て感想を言い合った。日付変更線を越える時は、周りの席の子たちと一緒に盛り上がったりした。全部特別で、本当に嬉しかった。
アメリカについた時は全員へとへとだったけれど、ロサンゼルスの空は朝になったばかりで不思議な気分だった。税関では本当に緊張したけれど、颯人に前もって教えられていた通りに書類を見せたら、強面のお姉さんも笑顔で通してくれた。
「緊張した?」
先に税関を通っていた颯人が僕を待っていて、うんうんと頷く。
「俺のとこのおじさん、めっちゃ怖かったんだけど!」
駿くんが大声で叫んだ。
そのあともスーツケースを受け取ったり、スマホの回線を切り替えたり、颯人は何かと助けてくれて、本当に頼りになるなと思った。
「気をつけるんだよー!」
「はい、薫さん! ありがとうございました!」
薫姉さんとすっかり打ち解けた将吾は、姉さんからハグを受け、僕も姉さんとハグをして別れた。数日間の旅行だけど、ほんの少し寂しくなってしまう。
二人で数駅電車に揺れる。お土産は何がいいか、何が食べたいか話していたらあっという間に空港に直結している駅に着いた。
「奏、おはよう」
改札を抜けるとすぐ、颯人が待っていた。長いフライトでも楽なようにダボっとしたグレーのスウェットを着ているが、その姿はいつも通りかっこいい。
「はっ颯人、おはよう」
「相変わらず、俺には挨拶しないんですか?」
「将吾もおはよう」
「おはよう。駿は?」
「こっちまで歩くの嫌だって。荷物見てもらってる」
颯人が僕からスーツケースを奪ってしまって僕は手持ち無沙汰だ。帽子を深く被った颯人は、母さんが騒いでいた空港でのアイドルみたいで、つい見上げてしまう。
「ん? どうしたの?」
僕の視線に気づいたのか、口角を高く上げて問うてくれる。
「アイドルみたいで、かっかっこいいなって」
「……奏は可愛い」
僕たちを後ろから追いかけていた将吾が、呆れたような笑い声を出す。
「そういえば颯人、奏って朝めっちゃ弱いんだな」
「……喧嘩売ってる?」
「ははは」
修学旅行の一団を見つけた将吾は笑いながら先に行ってしまった。確かに僕は朝、起きるのが下手で、気づいたら洗面所なんてこともあったけど、みんなが話題にあげるほどなのかな?
僕たちも一団に混ざって、スーツケースを置いた。グループ全員が揃っていれば、担任に声をかけて勝手にチェックインをしていいことになっている。ただでさえ多い修学旅行生が固まって行動していたら一般の人の迷惑になるかららしい。だから僕たちも早速荷物を預けて、施設内をぶらぶらすることにした。
四人で歩いていると、僕以外はみんな背が高いからか結構目立つみたいで、何度もすれ違う人たちに見られた。中には話しかけてくる人もいて、颯人は芸能人なのか、連絡先は交換できないか聞かれていた。駿くんにその度に颯人を茶化していた。
颯人はいちいち対応するのが面倒だと言って、途中から帽子をとって、僕の手を握りだした。将吾や駿くんの前ならともかく、人前ではあまり手を繋がないようにして僕を気遣ってくれていたから、これはイレギュラーなことだった。
「奏が俺を守ってね」
男同士が手を繋いでいればそれはもうカップルだ。今度は違う意味で目立ってしまって、僕はもう真っ赤だったと思う。
途中で本屋に寄って、僕と颯人は揃いで本を買った。読み終わったらお互いに感想を言い合おうと約束する。そんな僕たちを横目に駿くんは「恋愛がしたい」と言っていた。
「駿が恋愛してもこんな感じにはならないだろ?」
将吾の指摘に駿くんが顔を顰めた。
本を買って満足した僕たちは、保安検査を済ませて搭乗エリアの方に入った。こっちにもたくさん店があるので、また四人で適当な店を見て回る。そうやって時間を潰していたら、搭乗ゲート集合時間はすぐにきて、僕たちはそっちに向かった。途中で颯人がカフェラテを買った。
ゲート前についてすぐ、颯人は僕のチケットを回収すると、クラスメイトの一人に話しかけに行った。
「何してるのかな?」
「ん? クラスのグループチャット見てない? チケットもらってすぐ颯人のやつ、グループに写真送って、座席交換してくれって言ってたじゃん?」
駿くんの指摘を受けて、スマホを開いた。本当だ。なかなかスマホは見ないから気づかなかった。でもいつの間にそんなことしてたんだろう?
「加藤が、座席の交換は自分たちでしろって言ってたからさ、颯人、どうしても奏と隣になりたいんだなあ」
チケットはチェックイン順だから大抵隣になれるけれど、颯人と僕はちょうど一列前後で離れてしまった。だから颯人は、席を変わってくれる人を探したようだ。
戻ってきた颯人は満足そうに、僕にチケットを返してくれた。
「感謝の印のカフェラテ断られちゃった。奏飲む?」
「う、うん。……ありがとう、嬉しい」
「ふふ、俺が奏の隣じゃないと嫌だったんだよ」
十数時間のフライトは本当に長かった。でも楽しかった。
機内食は僕がチキンを頼んで、颯人がビーフを頼んで、お互いに分け合えたし、映画も同じものを見て感想を言い合った。日付変更線を越える時は、周りの席の子たちと一緒に盛り上がったりした。全部特別で、本当に嬉しかった。
アメリカについた時は全員へとへとだったけれど、ロサンゼルスの空は朝になったばかりで不思議な気分だった。税関では本当に緊張したけれど、颯人に前もって教えられていた通りに書類を見せたら、強面のお姉さんも笑顔で通してくれた。
「緊張した?」
先に税関を通っていた颯人が僕を待っていて、うんうんと頷く。
「俺のとこのおじさん、めっちゃ怖かったんだけど!」
駿くんが大声で叫んだ。
そのあともスーツケースを受け取ったり、スマホの回線を切り替えたり、颯人は何かと助けてくれて、本当に頼りになるなと思った。
2
あなたにおすすめの小説
二人の悪魔は天使を閉じ込めたい
ユーリ
BL
二人の悪魔は神によって創造されたばかりの天使を拾った。最初は単なる一目惚れだったが、何も知らない純粋無垢な天使にどんどん入れ込み始め…次第に閉じ込めたいと考えるようになる。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
初恋ミントラヴァーズ
卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。
飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。
ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。
眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。
知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。
藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。
でも想いは勝手に加速して……。
彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。
果たしてふたりは、恋人になれるのか――?
/金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/
じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。
集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。
◆毎日2回更新。11時と20時◆
ランドセルの王子様(仮)
万里
BL
大学生の森下優太(20)は、ある日の夕暮れ、ひったくり犯に襲われ絶体絶命のピンチに陥る。そんな彼を救ったのは、鮮やかなシュートで犯人を撃退した小学生の少年、日向蒼だった。
ランドセルを背負いながらも、大人顔負けの冷徹さと圧倒的なカリスマ性を持つ蒼。その姿に、優太はあろうことか「一目惚れ」をしてしまう。「相手は小学生、これはただの尊敬だ」と自分に言い聞かせる優太だったが、蒼のクールな瞳と救われた手の温もりが頭から離れない。
親友には「自首しろ」と呆れられながらも、理性と本能(ときめき)の狭間で葛藤する。禁断(?)のドキドキが止まらない、20歳男子による「かっこよすぎるヒーロー(小学生)」への片思い(自認はリスペクト)。
妹の身代りに生け贄にされたんだけどガチでマジ恋しちゃいました~世界にただ1人の男Ωは、邪神の激愛に絆される~
トモモト ヨシユキ
BL
邪神の生け贄になることが決まった妹王女の身代わりになるように命じられた不遇な王子は、Ωになるという秘薬を飲まされて邪神の洞に落とされる。
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる