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第四章
第23話『試したいことをやろう』
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「俺が試したいことっていうのが、【魔法】と【霊法】だ」
ユウトは立ち上がり、剣を正面に構える。
「言いたいことはわかる。使いたいからといってすぐに使えないということは、自分でやったからわかる」
「ではどうするのですか?」
「俺のスキルが【魔力】と【霊気】を吸収するものであり、体を器として見立てると、2人がしている結晶みたいにできるんじゃないかって思って」
「なるほど、わたくしとフェリスはそれぞれ【魔法】と【霊法】が使えるから、結晶が【魔力】と【霊気】を媒介に結界を維持する。つまり、ユウト様は結晶を木剣と体に見立てて――ということですね」
「そうそう、そういうこと。だから、素質がない俺だとしても木剣や腕に【魔力】と【霊気】が少しでも貯まったら、どちらかを発現させることができるんじゃないかって」
「ちゃんと聞いてもめちゃくちゃな話だけど、ユウトのスキルが本当にその通りで、結晶との話も混ぜ合わせるともしかしたらできるかもね」
と、ここまで話を進めておいてユウトはふとした疑問を口に出す。
「てか、リリィナが【魔法】を使っていたときは詠唱みたいなのをしていたのに、俺へ教えてくれたときは詠唱文とかなかったけど。あれには何か理由があるのか?」
「基本的に【魔法】と【霊法】は詠唱を必要とはしていません。ですが、詠唱をすることで補強したり強力なものにすることができます。ですので、こんな感じに――」
リリィナは再びユウトへ手をかざすと、回復してもらっているときのように体がじんわりと温もりを感じ始める。
「おぉ、なるほど」
「空想上の力を具現化させる、という考え方が正しいと思いますので、【星降り人】の方々は詠唱を必要としていないそうです。これは、そちらの世界には明確に想像できるものがある、ということだと思います」
「あー、そういうことなら納得だな」
こちらの世界では、まず拝むことのできないイラストや映像技術が全ての要因となっていることをすぐに悟る。
そしてユウトは、その考えから曖昧だった想像力を明確にすることができた。
「そういうことだったら、凡人な俺だってその条件に当てはまる。というより、あんな人たちよりは逆に得意な方だぜ」
凡人だからこそ、今居る異世界に憧れを抱き、様々な妄想をしてきたユウト。
時には夢を見て、時には言葉に出してみて、時には傘を振り回してみて――。
「――いくぜ」
発動を念じ、思い通りにスキル【吸収】が発動。
「カッコよくいこうぜ――ド派手に、剣に焔を纏わせるように」
まぶたを閉じ、発言通りの炎をイメージする。
しかし、業火のように激しいものではなく、暖炉で薪を燃やす優しい炎を思い浮かべた。
最初から高望みせず、まずは等身大なものを。
加えて想像する。
様々な物語に登場する人物たちが見せた、かっこいい姿を。
願わくば、これを機に自分が凡人の域から脱して何者かとなれる、と。
「おー」
「おぉ」
「おお?」
フェリスとリリィナの反応から、淡い期待だったものがまさか叶ってしまったのかと心を躍らせながらまぶたを持ち上げる。
「ん?」
ユウトが確認できたのは、薪を燃やす炎ではなく、ガスバーナーの炎でもライターの火でもなく、蝋燭の灯でもマッチの火でもなく――それらが鎮火した煙だけだった。
「どういうこと?」
「えーっとね。日は点いてたんだよ、点いてはいたんだけど……小さい火花って感じで」
「え」
「そうですね、薪を燃やしたときにパチッてなるあれな感じでした」
フェリスの説明を信用できず、リリィナに詳しい説明を求めるために視線を移したわけだが、得られたのは正確な悲しい情報だけだった。
「やっぱり俺は、どうやっても凡人は凡人ということだったんだな……」
一気に全身の力が抜け落ちてしまったユウトは、そのまま地面へとへたり込んだ。
「でもユウトさん、まさかの予想が的中しましてね」
「そうだよユウト。ここは落ち込むところじゃなくて喜ぶところだよ」
「まあそうなんだけどさぁ……」
「そうですよ。この世界において、【魔法】や【霊法】を使えるというのはそれだけでも凄いことなんですから」
「それはそうなんだけどさぁ……でもさ、これって俺が凄いっていうより、憎き女神から授かったスキルのおかげで発現することができたってことじゃん。素直に手放しで喜ぶことはできねぇ」
ため息を連発するユウト。
それを見て2人は「贅沢な悩みだな」と思いつつも、複雑な心境を察することができるからこそ、どう声をかけたらいいかわからず苦笑いを浮かべる。
「これでわかったことが増えましたね。ユウトさんのスキルは、発動するために必要なものを吸収する。そして、それを媒介に今のところは【魔法】を使用することができた」
「じゃあじゃあ、それに追加して体と木剣が吸収したものを貯めて置ける器ってことになるよね」
「そうね。でも未知数なのは、その許容量。先ほどの【魔法】を見るに、蓄えたものは少しずつ外へ漏れ出ていると考えた方がよさそう」
「だよね。あと気になったのが、今までは集めて漏れ出る、を繰り返していただけだから大丈夫だったけど、今は体調とか反動みたいなのはないの?」
「んー、全然大丈夫そう」
ユウトは顔を上げ、腕を回したり手を握ったりしてみるも疲労感は感じず。
スッと立ち上がって何度かジャンプしてみせてたり、その場で腿上げを何回かしてみても、いつも通りの感覚で息が上がるだけ。
「どうやら、今のところはスキルの効果がちっぽけだから体に負荷はないらしい。これがこのままなのかは、後にならないとわからないみたいだ」
「では一安心ですね」
「じゃあさ、次に試したいことなんだけどさ。【霊法】ってのは全然しっくりくるものがないんだけど、本当に俺でも使えるものなのか?」
「実はね、発想はどっちも一緒なんだよ。私も目にしたのは初めてだったんだけど、あの――たぶん白い方が【霊気】なんだけど、どっちを使えるかってだけなんだよ」
「ほほーう。じゃあ、俺はどっちもかき集めることができるってだけで、使えるのは【魔法】でもあり【霊法】でもあるってことか」
「そうそう」
「ただ、それは私たちが制限されている環境で使えるものに関してだからかも。もっと規模が大きくなったり、強力なものになってくると話は変わってくるかも?」
「それに関してはなんとなく理解できる。こんな世界だ、規模感が桁違いの【魔法】があってもおかしくはない。未だに理解できないのが、【霊法】に関してだな」
「どうして?」
2人が疑問の目線を向けてきているが、ユウトは少しだけブルッと体を震わせた。
「俺が住んでいた世界では、霊っていうと、幽霊、ゴーストって意味があったりするんだ」
「何それ?」
「あー、あれはこっちの世界ではあんまりないのか。それとも、この村ではそんな話が出ていないか。そうだな、簡単に言ったら人間が死してもなお世界を彷徨い続ける存在って感じだな。未練があったり、呪い殺したい相手が居たり……てな感じで」
さすがに怖がらせてしまったか、とユウトは次に聞こえるであろう悲鳴に備えた――が。
「もしもこの世界にも、その幽霊って存在が居るとしたら……お父さんとお母さんたちは、私たちを見守ってくれていたりするのかな」
「ええそうね。ユウト様の話では人から怖がられるような存在として知れ渡っているようだけど、わたくしたちにとっては願わくば出会いたい存在ね」
「……」
(2人はどれぐらいの歳で両親を亡くしたかはわからない。そして、そのことによって抱えた悲しみや虚しさも理解してあげることはできない。でもさ、どうして……どうして、こんな少女たちが理不尽な目に遭って、人のために尽くしているのに報われないんだ)
ユウトは年相応な可憐でかわいくも美しくもある彼女たちが、表情を曇らせてる姿を前に拳を握り締める。
(誰に頼まれているわけでもないのに、自分たちを結界という名の籠に縛られている。でも無責任に『結界を解いてしまえばいい』と言えるはずがない。ほんの少しでも幸せになってもらいたいって思うのは、そんなに贅沢じゃないだろ)
自分の無力を噛み締め、こんな世界にしている女神への苛立ちが増していく。
「俺、今はこんなんだけどさ。時間は掛かるだろうけど、絶対にもっと強くなる。そして、2人に少しでも幸せに笑っていてもらいたい」
「急にどうしちゃったのユウト」
「今はただの戯言だと思って笑ってくれ。だけど、絶対にこの願いは叶えてみせる」
「ユウト様、笑いはしませんよ。フェリス、わたくしたちは本当に恵まれていて幸せ者ですね」
「――うん、だねっ。ユウト、みんなで強くなろう。そして、みんなで笑って過ごそうね」
「ああ、よろしく頼む」
決意改め、いざ――と、意気込んていた矢先。
「おーう、やっぱりここに居たか」
3人は声の方へ視線を向けると、そこにはコルサの姿が。
「え、どうしてコルサさんが居るんですか? マキナと一緒に帰るんじゃ」
「少年、寂しいことを言うもんじゃない。君が俺へ相談してくれたんだろ?」
「ん? 相談、相談……相談――ああ! え、もしかして」
「そうだ、そのもしかして、だ」
「なになに?」
「えっと。初めて俺がフェリスと初めて出会ったときに対峙していた獣が居ただろ? あれを討伐してもらえないかお願いしていたんだ」
「ああ~、あのときの。さすがはコルサ隊長ですね」
「腹が減ってたんだろうな。ちょっと気性が荒かったような気もしてたり、強かった感じもしたが仕留めたぜ。んで、毛皮とか剥ぎたいだろうからって、たぶん結界の中だと思う場所ギリギリに死体を置いておいたから」
「コルサ隊長、気が利くぅ~。でもあんな巨体を1人で担いできたんですか?」
「まあな。誰も頼れなかったし、ズルズルと引きずってきたから道に跡が付いちまってるだろうが」
「雨が降ったら元通りになりますよ」
「たしかに。じゃあ、ということで俺も帰還する。じゃないとマキナが『隊長が遅いせいで怒られちゃいます』とかなんとか嫌味を言われそうだからな」
3人は揃って「ああ、それ言いそう」と苦笑いを浮かべた。
「てなわけで。フェリス嬢ちゃん、リリィナ嬢ちゃん元気でな。ついでに少年も、いろいろあると思うが等身大で頑張れよ」
「ついでってなんだよついでって。わかってますよ。凡人は凡人なりに等身大で頑張る以外の選択肢はないようなので」
ユウトの言葉を聞き終えると、「まあ頑張れ」とだけ言い残し、笑顔で手を振るフェリスとリリィナへ返すように背中を向けながら手を振りつつ去って行った。
ユウトは立ち上がり、剣を正面に構える。
「言いたいことはわかる。使いたいからといってすぐに使えないということは、自分でやったからわかる」
「ではどうするのですか?」
「俺のスキルが【魔力】と【霊気】を吸収するものであり、体を器として見立てると、2人がしている結晶みたいにできるんじゃないかって思って」
「なるほど、わたくしとフェリスはそれぞれ【魔法】と【霊法】が使えるから、結晶が【魔力】と【霊気】を媒介に結界を維持する。つまり、ユウト様は結晶を木剣と体に見立てて――ということですね」
「そうそう、そういうこと。だから、素質がない俺だとしても木剣や腕に【魔力】と【霊気】が少しでも貯まったら、どちらかを発現させることができるんじゃないかって」
「ちゃんと聞いてもめちゃくちゃな話だけど、ユウトのスキルが本当にその通りで、結晶との話も混ぜ合わせるともしかしたらできるかもね」
と、ここまで話を進めておいてユウトはふとした疑問を口に出す。
「てか、リリィナが【魔法】を使っていたときは詠唱みたいなのをしていたのに、俺へ教えてくれたときは詠唱文とかなかったけど。あれには何か理由があるのか?」
「基本的に【魔法】と【霊法】は詠唱を必要とはしていません。ですが、詠唱をすることで補強したり強力なものにすることができます。ですので、こんな感じに――」
リリィナは再びユウトへ手をかざすと、回復してもらっているときのように体がじんわりと温もりを感じ始める。
「おぉ、なるほど」
「空想上の力を具現化させる、という考え方が正しいと思いますので、【星降り人】の方々は詠唱を必要としていないそうです。これは、そちらの世界には明確に想像できるものがある、ということだと思います」
「あー、そういうことなら納得だな」
こちらの世界では、まず拝むことのできないイラストや映像技術が全ての要因となっていることをすぐに悟る。
そしてユウトは、その考えから曖昧だった想像力を明確にすることができた。
「そういうことだったら、凡人な俺だってその条件に当てはまる。というより、あんな人たちよりは逆に得意な方だぜ」
凡人だからこそ、今居る異世界に憧れを抱き、様々な妄想をしてきたユウト。
時には夢を見て、時には言葉に出してみて、時には傘を振り回してみて――。
「――いくぜ」
発動を念じ、思い通りにスキル【吸収】が発動。
「カッコよくいこうぜ――ド派手に、剣に焔を纏わせるように」
まぶたを閉じ、発言通りの炎をイメージする。
しかし、業火のように激しいものではなく、暖炉で薪を燃やす優しい炎を思い浮かべた。
最初から高望みせず、まずは等身大なものを。
加えて想像する。
様々な物語に登場する人物たちが見せた、かっこいい姿を。
願わくば、これを機に自分が凡人の域から脱して何者かとなれる、と。
「おー」
「おぉ」
「おお?」
フェリスとリリィナの反応から、淡い期待だったものがまさか叶ってしまったのかと心を躍らせながらまぶたを持ち上げる。
「ん?」
ユウトが確認できたのは、薪を燃やす炎ではなく、ガスバーナーの炎でもライターの火でもなく、蝋燭の灯でもマッチの火でもなく――それらが鎮火した煙だけだった。
「どういうこと?」
「えーっとね。日は点いてたんだよ、点いてはいたんだけど……小さい火花って感じで」
「え」
「そうですね、薪を燃やしたときにパチッてなるあれな感じでした」
フェリスの説明を信用できず、リリィナに詳しい説明を求めるために視線を移したわけだが、得られたのは正確な悲しい情報だけだった。
「やっぱり俺は、どうやっても凡人は凡人ということだったんだな……」
一気に全身の力が抜け落ちてしまったユウトは、そのまま地面へとへたり込んだ。
「でもユウトさん、まさかの予想が的中しましてね」
「そうだよユウト。ここは落ち込むところじゃなくて喜ぶところだよ」
「まあそうなんだけどさぁ……」
「そうですよ。この世界において、【魔法】や【霊法】を使えるというのはそれだけでも凄いことなんですから」
「それはそうなんだけどさぁ……でもさ、これって俺が凄いっていうより、憎き女神から授かったスキルのおかげで発現することができたってことじゃん。素直に手放しで喜ぶことはできねぇ」
ため息を連発するユウト。
それを見て2人は「贅沢な悩みだな」と思いつつも、複雑な心境を察することができるからこそ、どう声をかけたらいいかわからず苦笑いを浮かべる。
「これでわかったことが増えましたね。ユウトさんのスキルは、発動するために必要なものを吸収する。そして、それを媒介に今のところは【魔法】を使用することができた」
「じゃあじゃあ、それに追加して体と木剣が吸収したものを貯めて置ける器ってことになるよね」
「そうね。でも未知数なのは、その許容量。先ほどの【魔法】を見るに、蓄えたものは少しずつ外へ漏れ出ていると考えた方がよさそう」
「だよね。あと気になったのが、今までは集めて漏れ出る、を繰り返していただけだから大丈夫だったけど、今は体調とか反動みたいなのはないの?」
「んー、全然大丈夫そう」
ユウトは顔を上げ、腕を回したり手を握ったりしてみるも疲労感は感じず。
スッと立ち上がって何度かジャンプしてみせてたり、その場で腿上げを何回かしてみても、いつも通りの感覚で息が上がるだけ。
「どうやら、今のところはスキルの効果がちっぽけだから体に負荷はないらしい。これがこのままなのかは、後にならないとわからないみたいだ」
「では一安心ですね」
「じゃあさ、次に試したいことなんだけどさ。【霊法】ってのは全然しっくりくるものがないんだけど、本当に俺でも使えるものなのか?」
「実はね、発想はどっちも一緒なんだよ。私も目にしたのは初めてだったんだけど、あの――たぶん白い方が【霊気】なんだけど、どっちを使えるかってだけなんだよ」
「ほほーう。じゃあ、俺はどっちもかき集めることができるってだけで、使えるのは【魔法】でもあり【霊法】でもあるってことか」
「そうそう」
「ただ、それは私たちが制限されている環境で使えるものに関してだからかも。もっと規模が大きくなったり、強力なものになってくると話は変わってくるかも?」
「それに関してはなんとなく理解できる。こんな世界だ、規模感が桁違いの【魔法】があってもおかしくはない。未だに理解できないのが、【霊法】に関してだな」
「どうして?」
2人が疑問の目線を向けてきているが、ユウトは少しだけブルッと体を震わせた。
「俺が住んでいた世界では、霊っていうと、幽霊、ゴーストって意味があったりするんだ」
「何それ?」
「あー、あれはこっちの世界ではあんまりないのか。それとも、この村ではそんな話が出ていないか。そうだな、簡単に言ったら人間が死してもなお世界を彷徨い続ける存在って感じだな。未練があったり、呪い殺したい相手が居たり……てな感じで」
さすがに怖がらせてしまったか、とユウトは次に聞こえるであろう悲鳴に備えた――が。
「もしもこの世界にも、その幽霊って存在が居るとしたら……お父さんとお母さんたちは、私たちを見守ってくれていたりするのかな」
「ええそうね。ユウト様の話では人から怖がられるような存在として知れ渡っているようだけど、わたくしたちにとっては願わくば出会いたい存在ね」
「……」
(2人はどれぐらいの歳で両親を亡くしたかはわからない。そして、そのことによって抱えた悲しみや虚しさも理解してあげることはできない。でもさ、どうして……どうして、こんな少女たちが理不尽な目に遭って、人のために尽くしているのに報われないんだ)
ユウトは年相応な可憐でかわいくも美しくもある彼女たちが、表情を曇らせてる姿を前に拳を握り締める。
(誰に頼まれているわけでもないのに、自分たちを結界という名の籠に縛られている。でも無責任に『結界を解いてしまえばいい』と言えるはずがない。ほんの少しでも幸せになってもらいたいって思うのは、そんなに贅沢じゃないだろ)
自分の無力を噛み締め、こんな世界にしている女神への苛立ちが増していく。
「俺、今はこんなんだけどさ。時間は掛かるだろうけど、絶対にもっと強くなる。そして、2人に少しでも幸せに笑っていてもらいたい」
「急にどうしちゃったのユウト」
「今はただの戯言だと思って笑ってくれ。だけど、絶対にこの願いは叶えてみせる」
「ユウト様、笑いはしませんよ。フェリス、わたくしたちは本当に恵まれていて幸せ者ですね」
「――うん、だねっ。ユウト、みんなで強くなろう。そして、みんなで笑って過ごそうね」
「ああ、よろしく頼む」
決意改め、いざ――と、意気込んていた矢先。
「おーう、やっぱりここに居たか」
3人は声の方へ視線を向けると、そこにはコルサの姿が。
「え、どうしてコルサさんが居るんですか? マキナと一緒に帰るんじゃ」
「少年、寂しいことを言うもんじゃない。君が俺へ相談してくれたんだろ?」
「ん? 相談、相談……相談――ああ! え、もしかして」
「そうだ、そのもしかして、だ」
「なになに?」
「えっと。初めて俺がフェリスと初めて出会ったときに対峙していた獣が居ただろ? あれを討伐してもらえないかお願いしていたんだ」
「ああ~、あのときの。さすがはコルサ隊長ですね」
「腹が減ってたんだろうな。ちょっと気性が荒かったような気もしてたり、強かった感じもしたが仕留めたぜ。んで、毛皮とか剥ぎたいだろうからって、たぶん結界の中だと思う場所ギリギリに死体を置いておいたから」
「コルサ隊長、気が利くぅ~。でもあんな巨体を1人で担いできたんですか?」
「まあな。誰も頼れなかったし、ズルズルと引きずってきたから道に跡が付いちまってるだろうが」
「雨が降ったら元通りになりますよ」
「たしかに。じゃあ、ということで俺も帰還する。じゃないとマキナが『隊長が遅いせいで怒られちゃいます』とかなんとか嫌味を言われそうだからな」
3人は揃って「ああ、それ言いそう」と苦笑いを浮かべた。
「てなわけで。フェリス嬢ちゃん、リリィナ嬢ちゃん元気でな。ついでに少年も、いろいろあると思うが等身大で頑張れよ」
「ついでってなんだよついでって。わかってますよ。凡人は凡人なりに等身大で頑張る以外の選択肢はないようなので」
ユウトの言葉を聞き終えると、「まあ頑張れ」とだけ言い残し、笑顔で手を振るフェリスとリリィナへ返すように背中を向けながら手を振りつつ去って行った。
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