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第五章
第30話『劣勢、反撃』
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「村長凄すぎ……」
「わしも思っていた以上に動けてビックリじゃ」
大狼はヴァーバによって、何度も殴り飛ばされている。
それはもう凄い攻防で、フェリスが手助けせずに渡り合っているほど。
しかし被害も拡大しており、最初は解体所だけだったのが、1軒、1軒と増えている。
『グルルルルウ』
「なんであんなに殴られているのに、何度も立ち上がることができるの」
「1発1発、ちゃんと手応えがあるのだがのぉ」
ヴァーバの言う通り、既に力強い拳撃が10発撃ち込まれている。
直撃する度に大狼は吹き飛ばされ、着地と同時に辺りに損害が出ていた。
しかし、その度に異様な――折れたりズレたりしている骨を治しながら立ち上がる。
「村長、魔物ってどうやったら倒せるんですか」
「心臓か脳を潰すんじゃなかろうか」
「それはそうなんでしょうけど……本当にそうだったら、もう倒せているんじゃないですか?」
「ふむ、それはそじゃな」
『グル――こ、こんな感じか』
「え!?」
大狼もとい魔物は喋り出す。
「村長! この声は」
「……騎士団長のものじゃな」
あろうことか、見知った声が耳に届くものだから2人は混乱してしまう。
『ああやっぱりそうだ。あのときの匂いと同じだなぁ』
「……」
『男が2人、女も2人。俺に立ち向かってきて、馬鹿なやつらだったな』
魔物は口角を上げ、よだれを垂らし始める。
『何度嗅いでも美味しそうで仕方がない』
「話が通じるのなら。どうやって結界を突破したのじゃ」
『ったく、あの結界には苦労したぜ。美味しそうな匂いはずっとするのに、通ることができなかったからなぁ。だが、とある剣士が手伝ってくれたおかげで突破できた』
「どういうことじゃ」
『理屈は知らねえが、賭けに出たのさ。依り代の生命を絶たせ、それでどうなるかって』
「……そういうことじゃったか」
『ああ、そういうことだ。いやあ、本当に上手くいくとは思ってなかったけどな』
高笑いする魔物に対し、フェリスは沸々と怒りが込み上がって来ていた。
「たった今、確信に変わった。あなたがお父さんとお母さんたちを襲った魔物なんだ」
『ああ、匂いも一緒ってのはそういうことだったのか。だったら味は保証されてるってことだなぁ!』
「許さない。絶対に負けるもんか」
『そっちの戦力はある程度わかった。こっちも力を発揮しようじゃないか』
魔物の地面に、円状の魔法陣が形成される。
『俺の存在を知っているということは、【魔法】が使えるってのも把握しているはずだよな?』
体毛が逆立ち、体の周囲に次々と電気が走り始めた。
「村長、危ない!」
『遅い遅い! くらえぇ!』
「うがぁっ」
「っ!」
フェリスは、微量ながらすぐに魔物の【魔法】を防ぐための盾を【霊法】を形成し防御。
ヴァーバは対処する術を持たず、なんとか半身翻したが腹部を掠ってしまい、脇腹を抑えて跪く。
『さっきまでの威勢はどうした? ほらほら、反撃してこないと死ぬぞ』
「んぐ……」
『それにしても懐かしいなぁ。あのときも、こうして【魔法】を防がれた。反撃も凄いものだった。正直、最初は負けると思ったな』
「私だって負けないもん!」
フェリスの周りに小粒の氷が形成され、魔物へ飛んで行く、しかし。
『あ? なんだそれ』
「なっ!」
『そんな子供遊びみてえなので、俺を倒せるとでも思ってんのか? お前の親たちは、もっと強かったぞ? ――最初はな』
「くっ!」
『だが、なんていうか……よくわからんが、急激に弱くなったんだよな――ああそうそう、その首から下げているやつを握り締めてたな。なんだそれ、そんなに大事な物なのか。命を賭けるほど』
「……」
その原因について知りたくても、2人は自ら話題を繋げることはできない。
首から下げる結晶は、たった今も村を護っている結界に必需品であり、破壊されてしまえばどうなってしまうかわからないから。
『つまらん、本当につまらん。久しぶりに人間と対話だから、もう少し楽しくなると思ってたんだがな。仇だというのに、泣きもせず喚きもせず、命乞いもする気配がねえ』
「お父さんとお母さんが戦ったのなら、私だって戦う。そして、あなたを絶対に倒す」
『どうして強がっていられるのか疑問で仕方がない。そもそも、なぜここまで力量差があるにもかかわらず。こうして話に付き合っているのかわからねえのか?』
「私たちを痛めつけて楽しむためじゃないの」
『はぁ……それは正解だが、違うんだよ、違いすぎる』
フェリスとヴァーバは、魔物が言っていることを理解できない。
しかし、話が途切れた今だからこそヴァーバは聞き馴染みのある音に振り返る。
すると、そこには。
「フェリス! 村長!」
フェリスも、聞き間違えることのない声に『まさか』と焦りながら振り返った。
「リリィナ……どうしてここに」
車椅子を自分で移動させるリリィナの姿が。
そして、魔物は不快なほど悦に浸る笑みを浮かべた。
『美味そうな匂いが近づいてきているんだから、わざわざ話に付き合っていたんだよ』
「なっ……!」
『ああ、この匂いもあのとき嗅いだものと同じだぁ』
「やはり、あなたがわたくしたちの父と母を手に掛けた魔物なのですね」
『随分と勘が良いねぇ。ああそうさ、大正解だ』
「絶対に許しません」
『威勢がいいのもいいねぇ――ん? お前もそれをつけているのか』
フェリスは首を横へ振り、リリィナへ無言の合図を送る。
『戦いの際中、大事に握っていたもの……後からできた結界……ああそうか、それが結界と関係しているのか』
「どうでしょうね」
『入ったのはいいものの、たぶん結界からは出られないからなぁ。だが、美味い餌にありつけるだけじゃなく、結界もどうにかできそうなんて好都合だ。ん?』
「わたくしも、わざわざお話に付き合ってあげていたのですよ」
負傷中だったヴァーバが、何もなかったかのように立ち上がる。
『ほう』
会話の際中、リリィナはヴァーバの傷を癒していたのだ。
「さあて、ここから反撃じゃ。さっきは油断しただけじゃからの」
「リリィナ、村長に防御と回復をお願い」
「任せて」
『やれるものならやってみろ!』
「わしも思っていた以上に動けてビックリじゃ」
大狼はヴァーバによって、何度も殴り飛ばされている。
それはもう凄い攻防で、フェリスが手助けせずに渡り合っているほど。
しかし被害も拡大しており、最初は解体所だけだったのが、1軒、1軒と増えている。
『グルルルルウ』
「なんであんなに殴られているのに、何度も立ち上がることができるの」
「1発1発、ちゃんと手応えがあるのだがのぉ」
ヴァーバの言う通り、既に力強い拳撃が10発撃ち込まれている。
直撃する度に大狼は吹き飛ばされ、着地と同時に辺りに損害が出ていた。
しかし、その度に異様な――折れたりズレたりしている骨を治しながら立ち上がる。
「村長、魔物ってどうやったら倒せるんですか」
「心臓か脳を潰すんじゃなかろうか」
「それはそうなんでしょうけど……本当にそうだったら、もう倒せているんじゃないですか?」
「ふむ、それはそじゃな」
『グル――こ、こんな感じか』
「え!?」
大狼もとい魔物は喋り出す。
「村長! この声は」
「……騎士団長のものじゃな」
あろうことか、見知った声が耳に届くものだから2人は混乱してしまう。
『ああやっぱりそうだ。あのときの匂いと同じだなぁ』
「……」
『男が2人、女も2人。俺に立ち向かってきて、馬鹿なやつらだったな』
魔物は口角を上げ、よだれを垂らし始める。
『何度嗅いでも美味しそうで仕方がない』
「話が通じるのなら。どうやって結界を突破したのじゃ」
『ったく、あの結界には苦労したぜ。美味しそうな匂いはずっとするのに、通ることができなかったからなぁ。だが、とある剣士が手伝ってくれたおかげで突破できた』
「どういうことじゃ」
『理屈は知らねえが、賭けに出たのさ。依り代の生命を絶たせ、それでどうなるかって』
「……そういうことじゃったか」
『ああ、そういうことだ。いやあ、本当に上手くいくとは思ってなかったけどな』
高笑いする魔物に対し、フェリスは沸々と怒りが込み上がって来ていた。
「たった今、確信に変わった。あなたがお父さんとお母さんたちを襲った魔物なんだ」
『ああ、匂いも一緒ってのはそういうことだったのか。だったら味は保証されてるってことだなぁ!』
「許さない。絶対に負けるもんか」
『そっちの戦力はある程度わかった。こっちも力を発揮しようじゃないか』
魔物の地面に、円状の魔法陣が形成される。
『俺の存在を知っているということは、【魔法】が使えるってのも把握しているはずだよな?』
体毛が逆立ち、体の周囲に次々と電気が走り始めた。
「村長、危ない!」
『遅い遅い! くらえぇ!』
「うがぁっ」
「っ!」
フェリスは、微量ながらすぐに魔物の【魔法】を防ぐための盾を【霊法】を形成し防御。
ヴァーバは対処する術を持たず、なんとか半身翻したが腹部を掠ってしまい、脇腹を抑えて跪く。
『さっきまでの威勢はどうした? ほらほら、反撃してこないと死ぬぞ』
「んぐ……」
『それにしても懐かしいなぁ。あのときも、こうして【魔法】を防がれた。反撃も凄いものだった。正直、最初は負けると思ったな』
「私だって負けないもん!」
フェリスの周りに小粒の氷が形成され、魔物へ飛んで行く、しかし。
『あ? なんだそれ』
「なっ!」
『そんな子供遊びみてえなので、俺を倒せるとでも思ってんのか? お前の親たちは、もっと強かったぞ? ――最初はな』
「くっ!」
『だが、なんていうか……よくわからんが、急激に弱くなったんだよな――ああそうそう、その首から下げているやつを握り締めてたな。なんだそれ、そんなに大事な物なのか。命を賭けるほど』
「……」
その原因について知りたくても、2人は自ら話題を繋げることはできない。
首から下げる結晶は、たった今も村を護っている結界に必需品であり、破壊されてしまえばどうなってしまうかわからないから。
『つまらん、本当につまらん。久しぶりに人間と対話だから、もう少し楽しくなると思ってたんだがな。仇だというのに、泣きもせず喚きもせず、命乞いもする気配がねえ』
「お父さんとお母さんが戦ったのなら、私だって戦う。そして、あなたを絶対に倒す」
『どうして強がっていられるのか疑問で仕方がない。そもそも、なぜここまで力量差があるにもかかわらず。こうして話に付き合っているのかわからねえのか?』
「私たちを痛めつけて楽しむためじゃないの」
『はぁ……それは正解だが、違うんだよ、違いすぎる』
フェリスとヴァーバは、魔物が言っていることを理解できない。
しかし、話が途切れた今だからこそヴァーバは聞き馴染みのある音に振り返る。
すると、そこには。
「フェリス! 村長!」
フェリスも、聞き間違えることのない声に『まさか』と焦りながら振り返った。
「リリィナ……どうしてここに」
車椅子を自分で移動させるリリィナの姿が。
そして、魔物は不快なほど悦に浸る笑みを浮かべた。
『美味そうな匂いが近づいてきているんだから、わざわざ話に付き合っていたんだよ』
「なっ……!」
『ああ、この匂いもあのとき嗅いだものと同じだぁ』
「やはり、あなたがわたくしたちの父と母を手に掛けた魔物なのですね」
『随分と勘が良いねぇ。ああそうさ、大正解だ』
「絶対に許しません」
『威勢がいいのもいいねぇ――ん? お前もそれをつけているのか』
フェリスは首を横へ振り、リリィナへ無言の合図を送る。
『戦いの際中、大事に握っていたもの……後からできた結界……ああそうか、それが結界と関係しているのか』
「どうでしょうね」
『入ったのはいいものの、たぶん結界からは出られないからなぁ。だが、美味い餌にありつけるだけじゃなく、結界もどうにかできそうなんて好都合だ。ん?』
「わたくしも、わざわざお話に付き合ってあげていたのですよ」
負傷中だったヴァーバが、何もなかったかのように立ち上がる。
『ほう』
会話の際中、リリィナはヴァーバの傷を癒していたのだ。
「さあて、ここから反撃じゃ。さっきは油断しただけじゃからの」
「リリィナ、村長に防御と回復をお願い」
「任せて」
『やれるものならやってみろ!』
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