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第五章
第33話『奇策、勝機』
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「それで、どうするの」
「作戦は至って簡単、だけど実行は極めて困難」
「いいから早く。下、凄いことになってるわよ」
4人は【魔法】と【霊法】によって空を飛ぶ。
しかし、マキナの忠告通り地面から追いかけて来ている魔物が家々を土台にして高く飛び上がったり、苛立ちをぶつけるように家々へ八つ当たりをして破壊し続けている。
「状況を察するに、2人の結晶はあの魔物に奪われた。間違いないな?」
「……そうみたい」
「はい、そうです」
「2人にとっては最悪な状況だが、それを利用する。2人のネックレスと2人に作ってもらった木剣、似ていると思わないか?」
言わずもがな。
2人は、透き通った結晶と落ちていた木枝から造られた木剣のどこが似ているのかわからず、首を傾げるしかない。
マキナに至っては、内心で『何を言っているんだこいつ』と眉間に皺を寄せ正気を疑っている。
「俺は、器っていう言葉に目をつけた。で、風船みたいに魔物の体から【魔力】を一気に吸い出してしまえばいいんじゃないかって」
「ユウト、ふうせんって何?」
「あーえーっと……なんというか、こう――そう! 水筒があると思ってくれ。水筒に入っている【魔力】を吸い出したら、魔物は死ぬか弱体化するんじゃないかって思って」
3人は、ユウトが不器用に例えた話を頑張って理解しようと試みるが、大体の想像はできても明確化できない。
そんな中、リリィナも完全には理解できていないものの、ユウトへ助け舟を出す。
「でもたしかに、あの魔物は体内の魔力を全て出して仮死状態を意図的に起こした、と言っていました」
「じゃあ、俺がやろうとしていることは可能ってわけだ」
「だが、もしかしたら討伐への鍵となるかもしれない。私の剣は、魔物の【魔法】によって硬質化された体毛によって貫くことができない」
「魔物って剣で倒せるのか?」
「一度とはいえ、仮死状態に至ったのだから可能なのだろう。隊長が剣を使って息の根を止めているのだから」
「なるほど、じゃあいけそうだな」
軽く擦り合わせが終わったところで、4人は下から何度も飛びつこうとして来たり軽い魔法を飛ばしてきている魔物へ目線を向ける。
「みんなの家が大変なことになっちゃってる……」
「それでユウト、あんなに動き回っている魔物相手に何をしたら【魔力】を出し尽くすというんだ。どうやっても無理としか思えないが。現に、私の剣は届かなかったんだぞ」
「わたくしの【魔法】も同じです」
「私の【霊法】も全然だったよ」
「じゃあ2人とも、今の自分をどうなってる?」
「といいますと?」
「何も変わってな――あっ!」
「だろ? 2人とも、いつも以上に力を使えてるんじゃないか?」
「言われてみたらたしかに」
「本当だっ!」
フェリスとリリィナは、自分たちの状況を再確認し足元を見渡す。
今の今まで、【魔法】と【霊法】は発現させることはできていた。
それはいろいろなかたちや属性となって、様々な使用用途として。
呪文を唱えてそれぞれの具現化イメージを明確にしすることにって、影響力や威力を上げるしかなかった。
だが、今の彼女たちは想像を具現化させ、ましてや呪文を詠唱せずに体を浮かし移動している。
「自分のことだけど、凄い」
「まるで、あのときのように歩いているようです」
「たぶん今は、結晶がないから本来の力を発揮できるんだと思う。そして、魔物はその逆。皮肉にも、魔物が結界を維持していることになるはず」
「自分で自分を捉える籠を作り続けているとは、たしかにとんだ皮肉だな」
「その事実を知らない魔物はざまあみろって感じだけど。そこで俺は考えた。この木剣をあいつの口の中――胃袋まで突っ込んで、スキルを発動させる。そうすると、一気に俺の体に【魔力】と【霊気】が流れ込んでくる。だが、俺の器が小さすぎてほとんど意味を成さない」
ユウトは木剣を掲げる。
「そうしたら、俺はずっと【魔法】と【霊法】を――そう、背中側に水を作り続ける。まあ、汗ぐらいのものしか発現できないが」
「でもそれだと、吸収の方が大きくなって間に合わないんじゃない?」
「そ・こ・で! 2人は俺に触れ続けてもらって、一気に【魔法】と【霊法】を存分に発現させてほしいんだ」
「なるほど、そういうことですか」
「魔物から一気に吸い上げ、供給よりも排出を上回らせる。でも、どうやって近づくんだ? 少なくとも私の剣はあいつに届かない。ましてやユウトがあいつの口の中にそれを突っ込むなど可能なのか?」
自身気に話を進めていたユウトは木剣を下ろし、大変申し訳なさそうにため息を零して肩を落す。
「こればかりは、3人を頼るしかない。知っての通り、俺の実力はあまりにも役立たずだ。しかも、口の中に突っ込むだけだと噛み砕かれるかもしれない」
「つまり、ほとんど無力化した状態でないと策は実行できないと」
「ああそうだ。ここまで言っておいて、肝心なところで3人に任せることしかできない」
「でも、さっきまでの私たちじゃないんだったら、できることも増えるんじゃないかな」
「そうね。わたくしが、マキナさんに盾と剣に【魔法】を付与したら威力を上げることができますし」
「だよねだよね。マキナが大立ち回りしながら、私も攻撃。隙を見つけたらユウトを一気に押し出すって感じでどうかな」
「俺だけ覚悟がいりそうな状況だけど――それでいこう」
案が固まり、フェリスとリリィナは進行を止める。
魔物はそれに気が付くも、勢い余って行き過ぎた。
「どうせだし、あいつにはもう少し走らせようぜ。解体所まで戻ったら被害は拡大しないんじゃないか?」
「それは良い案ね。言い方悪いけど、見晴らしが良くなっているし」
「じゃあリリィナ、行くよーっ!」
「まだ慣れないけど、うん」
「作戦は至って簡単、だけど実行は極めて困難」
「いいから早く。下、凄いことになってるわよ」
4人は【魔法】と【霊法】によって空を飛ぶ。
しかし、マキナの忠告通り地面から追いかけて来ている魔物が家々を土台にして高く飛び上がったり、苛立ちをぶつけるように家々へ八つ当たりをして破壊し続けている。
「状況を察するに、2人の結晶はあの魔物に奪われた。間違いないな?」
「……そうみたい」
「はい、そうです」
「2人にとっては最悪な状況だが、それを利用する。2人のネックレスと2人に作ってもらった木剣、似ていると思わないか?」
言わずもがな。
2人は、透き通った結晶と落ちていた木枝から造られた木剣のどこが似ているのかわからず、首を傾げるしかない。
マキナに至っては、内心で『何を言っているんだこいつ』と眉間に皺を寄せ正気を疑っている。
「俺は、器っていう言葉に目をつけた。で、風船みたいに魔物の体から【魔力】を一気に吸い出してしまえばいいんじゃないかって」
「ユウト、ふうせんって何?」
「あーえーっと……なんというか、こう――そう! 水筒があると思ってくれ。水筒に入っている【魔力】を吸い出したら、魔物は死ぬか弱体化するんじゃないかって思って」
3人は、ユウトが不器用に例えた話を頑張って理解しようと試みるが、大体の想像はできても明確化できない。
そんな中、リリィナも完全には理解できていないものの、ユウトへ助け舟を出す。
「でもたしかに、あの魔物は体内の魔力を全て出して仮死状態を意図的に起こした、と言っていました」
「じゃあ、俺がやろうとしていることは可能ってわけだ」
「だが、もしかしたら討伐への鍵となるかもしれない。私の剣は、魔物の【魔法】によって硬質化された体毛によって貫くことができない」
「魔物って剣で倒せるのか?」
「一度とはいえ、仮死状態に至ったのだから可能なのだろう。隊長が剣を使って息の根を止めているのだから」
「なるほど、じゃあいけそうだな」
軽く擦り合わせが終わったところで、4人は下から何度も飛びつこうとして来たり軽い魔法を飛ばしてきている魔物へ目線を向ける。
「みんなの家が大変なことになっちゃってる……」
「それでユウト、あんなに動き回っている魔物相手に何をしたら【魔力】を出し尽くすというんだ。どうやっても無理としか思えないが。現に、私の剣は届かなかったんだぞ」
「わたくしの【魔法】も同じです」
「私の【霊法】も全然だったよ」
「じゃあ2人とも、今の自分をどうなってる?」
「といいますと?」
「何も変わってな――あっ!」
「だろ? 2人とも、いつも以上に力を使えてるんじゃないか?」
「言われてみたらたしかに」
「本当だっ!」
フェリスとリリィナは、自分たちの状況を再確認し足元を見渡す。
今の今まで、【魔法】と【霊法】は発現させることはできていた。
それはいろいろなかたちや属性となって、様々な使用用途として。
呪文を唱えてそれぞれの具現化イメージを明確にしすることにって、影響力や威力を上げるしかなかった。
だが、今の彼女たちは想像を具現化させ、ましてや呪文を詠唱せずに体を浮かし移動している。
「自分のことだけど、凄い」
「まるで、あのときのように歩いているようです」
「たぶん今は、結晶がないから本来の力を発揮できるんだと思う。そして、魔物はその逆。皮肉にも、魔物が結界を維持していることになるはず」
「自分で自分を捉える籠を作り続けているとは、たしかにとんだ皮肉だな」
「その事実を知らない魔物はざまあみろって感じだけど。そこで俺は考えた。この木剣をあいつの口の中――胃袋まで突っ込んで、スキルを発動させる。そうすると、一気に俺の体に【魔力】と【霊気】が流れ込んでくる。だが、俺の器が小さすぎてほとんど意味を成さない」
ユウトは木剣を掲げる。
「そうしたら、俺はずっと【魔法】と【霊法】を――そう、背中側に水を作り続ける。まあ、汗ぐらいのものしか発現できないが」
「でもそれだと、吸収の方が大きくなって間に合わないんじゃない?」
「そ・こ・で! 2人は俺に触れ続けてもらって、一気に【魔法】と【霊法】を存分に発現させてほしいんだ」
「なるほど、そういうことですか」
「魔物から一気に吸い上げ、供給よりも排出を上回らせる。でも、どうやって近づくんだ? 少なくとも私の剣はあいつに届かない。ましてやユウトがあいつの口の中にそれを突っ込むなど可能なのか?」
自身気に話を進めていたユウトは木剣を下ろし、大変申し訳なさそうにため息を零して肩を落す。
「こればかりは、3人を頼るしかない。知っての通り、俺の実力はあまりにも役立たずだ。しかも、口の中に突っ込むだけだと噛み砕かれるかもしれない」
「つまり、ほとんど無力化した状態でないと策は実行できないと」
「ああそうだ。ここまで言っておいて、肝心なところで3人に任せることしかできない」
「でも、さっきまでの私たちじゃないんだったら、できることも増えるんじゃないかな」
「そうね。わたくしが、マキナさんに盾と剣に【魔法】を付与したら威力を上げることができますし」
「だよねだよね。マキナが大立ち回りしながら、私も攻撃。隙を見つけたらユウトを一気に押し出すって感じでどうかな」
「俺だけ覚悟がいりそうな状況だけど――それでいこう」
案が固まり、フェリスとリリィナは進行を止める。
魔物はそれに気が付くも、勢い余って行き過ぎた。
「どうせだし、あいつにはもう少し走らせようぜ。解体所まで戻ったら被害は拡大しないんじゃないか?」
「それは良い案ね。言い方悪いけど、見晴らしが良くなっているし」
「じゃあリリィナ、行くよーっ!」
「まだ慣れないけど、うん」
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