辺境令嬢ですが契約結婚なのに、うっかり溺愛されちゃいました

星井ゆの花

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 コンコンコン!
 長旅の疲れをメイドさんが用意してくれた紅茶で癒していると、私が泊まっている超豪華な客室のドアをノックする音が。

「マリッサさん、体調は如何ですか。夕食はシェフの作る料理で愉しみましょう」
「あっはい。ドレスコードは、このワンピースでも大丈夫でしょうか?」
「ええ、夜会とは違ってプライベートな食事会ですから。お洒落なワンピースなら大丈夫ですよ。それに……マリッサさん、すごく可愛いらしいですし」

 クラインさんは、歯に絹を着せない褒め言葉を私の耳元でサラッと囁いて……。思わず照れて無言になる私の肩を抱き、スマートにホールへと案内してくれます。

(うぅ……クラインさんって、なんて言うか。お友達になろうって誘ってきた割に、かなり異性として意識させることばかり言いますよね。しかも超イケメンだし。はっいけない……つい頬が赤くなってしまう)

 今日のお泊りデートは、実のところ異世界転生者同士のオフ会のようなものですが。お母様達が娘の婚活と見做して、アレコレ準備してくれた影響もあって、なんだか不必要に意識しちゃいます。気を取り直して、平静を保たなくては!


 * * *


 お泊まり初日の夕食はそれはもう豪華なフルコースメニューで、流石は公爵家といった感じです。

「一応、年齢的にもこのお屋敷では僕が当主でしてね、両親とは別に暮らしているんです。お嫁さんをいびる姑はおりませんので、マリッサさんは我が家にいるような感覚でリラックスしてください」
「えぇっお嫁さんって?」
「あははっ。ほら、まずは前菜から」

 からかっているのか本気なのか、クラインさんの掌の上で私の乙女心はクルクルと弄ばれていく感じです。もうっこれだからモテ男は。

 オードブルは、見た目の美しさにこだわった野菜や魚介類を飾ったもの。染み入るような野菜たっぷりスープ、ポワソンはキュートなエビさんのチーズ焼きです。
 ちょっぴりコクのあるエビさんのチーズ焼きで慣れた舌を爽やかなソルベでリフレッシュ! 口当たりの優しいバニラのテイストで、気分をすっきりさせたらついにメインのお出ましとなります。シェフ自ら、本日の牛フィレステーキについて解説。

「本日のメインは、我がクライン領自慢の牛フィレステーキでございます。ジュリアス様がどうしてもマリッサさんに振る舞いたいと仰っておりまして。赤ワインでじっくり煮込んだソースが、ポイントです。是非、ゆっくり味わってください」
「まぁ! この地域の名産品ですね。うんっまるでお肉が口の中で蕩けるみたいっ。すごく美味しいですっ」

クラインさんも「マリッサさんが、我が家の料理を気に入ってくれて良かった!」と、無駄に女を落とすような色気のあるイケボで柔らかく微笑みながら、牛フィレステーキを堪能している様子。

「ところで、例の手作りハンバーガーですが。明日の午前中から作り始めてランチメニューにしようと思うんです。実は今日のステーキの牛と同じものを使う予定なんですよ」
「へぇ随分と高級なハンバーガーが作れそうですね。うふふっ。今から楽しみ」


 最後にデザートのケーキを頂いて、夕食会は無事に終了。専用の客室を与えられて猫脚付きのバスタブで泡風呂に浸かり、天蓋付きのベッドで眠りにつきました。

(あぁまるで、超高級ホテルに泊まりに来たみたい。ずっとこんな暮らしが出来たら幸せだろうなぁ)

 すっかり飼い慣らされてしまった私は、この至れり尽くせりのもてなしが契約結婚のフラグであるなんて、全く気づかず。ふわふわとした気持ちで、夢の世界に落ちていくのでした。
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