エリート上司に完全に落とされるまで

琴音

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二章 忘れてた過去が……

10 和樹の部屋に引っ越し

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 翌日の朝、和樹が車をどこかから持って来てくれたのだが。ハイエースなんてどこで借りられるんだよ。レンタカー屋さんじゃねえって言うし。本当にそのへんよく分からん。

「これで全部?」
「うん」
「少なくないか?捨てすぎだろ」
「あ~……そうかも。次の部屋のサイズ分からなかったからね。足りないものは買えばいいかなって、服と小物だけだよ」

 ああ、ごめんねって。

「言ってなかったか。けっこう広めなんだが個室の部分は……和室だと八帖分くらいかな?確か」
「え……なら机とか置けた?」
「余裕で」
「ぐわーっ!椅子だけはやめておけばよかった!あれゲーミングので高かったんだ!俺のバカ……あぁ」

 頭を抱えて後悔したが、すぐに立て直した。返してもらうか?田中に連絡するかな?とか、悩んでるとクスクスと聞こえた。

「智の部屋にベッドはいらないだろ?だから広々なんだよ」
「え?置かないの?」

 ムッとして俺を睨む。なんでだよ!いるだろ。

「なんで置くんだよ。僕といつも一緒にいつも寝ればいいだろ」
「いやいや、ひとりになりたい時とか風邪とか病気の時困るだろ」

 ひとりになりたい時?と眉間にシワ寄せたけど、病気かって納得したようだ。

「ふむ……ならやっすい折り畳めるベッド予備に買っとくか」
「ええ……俺一人で寝る選択はないの?」

 そう言うと和樹の目がまた怪しく光った。……ごめんなさい取り消します。

「い、一緒がいいよな。うん」
「よろしい。だがケンカしたりの時はそれ使え」
「はい……」

 まあないよりいいな。それから少ないダンボールを積み込み和樹の部屋へ向かい、途中ランチをして戻った。車から降りて、

「後は……来週掃除に戻って不動産屋に寄るから、夜には戻る予定だけどいい?」
「ああ、分かった。大丈夫だとは思うが気を付けろ」
「うん」

 管理室から台車を借りてリビングの端に積み上げた。……見た目わるっ

「これで今日からは智はどこにも行かない。ならば……んふふっ」

 小さい声でなんかブツブツ怖いことを考えてる?俺の尻は持つのか不安になるだろ。思いの外繊細な俺の尻、和樹のでっかいのを毎日は耐えられないかもなあ。よし!今のうちに釘刺しとくか。
 和樹がコーヒーを淹れてくれてテーブルに置くと、智おいでって。俺は隣に座って抱きつく前に、だ。

「ん?智の場所はここでしょ?」

 膝をポンポンするが、座ってはダメだ。

「待って。聞いて欲しいことがあるんだ」
「うん。なに?」

 スーハースーハー。深呼吸してと。

「あのね、俺の尻は毎日はたぶん耐えられません。今でも三回二晩。最後の方で少し痛くなるんだ」
「あらマジで?」
「だから!間を開けて節度を持って抱いて下さい。お願いします」

 俺は頭を下げた。いや、したくない訳じゃないんだ。和樹とのセックスは気持ちいいし。でもね……尻がやめてくれとね。

「分かった。毎日は避けるよ」

 すんなり通った……もっとゴネるかと思ってたのに。

「よ、よかった……和樹なら毎日三回とか言われたらどうしようと思ってたんだ」
「智。それは僕に失礼だ。毎日なら一回に抑えるよ。週末は……まあ、あれだけどさ」

 あれだけどさって……今どき毎日してる人なんぞいるのか?たまに酔っ払ってしゃべってるヤツですら週末だけとか、二~三回とか言ってたぞ……

「あのさ、俺の尻の休憩は?それに和樹の体力持つの?」
「ん?持つよ。僕は休まない」

 はあ?ボケたことを。なら中二日ときちんと言おう。和樹に決めされせたら俺が壊れる。

「中二日で!今まで通りなら平日は一回のみ週末は減らす。これでもヤバそうなんだよ。俺の体力も尻も」

 ウッ……と声が和樹からして伏し目がちになり、

「僕……智の隣で寝てて我慢出来るのかな」

 あ~本気で毎日って言ってたのか。バケモンだな。

「代替案として俺が口でするか、もしくは素股かな」
「チッ……なら仕方ねえな」

 仕方ねえな?ならいじわる言ってみるか?

「どうしてもしたいのなら、男を引っ掛けるか買いなさい。俺は我慢します」

 はあ?バカだろって呆れている。いや、分かってるけど性欲発散したいかなと思ってさ。意地悪もあるけど、この絶倫が我慢できるとは思えなかったんだ。

「なんで外にいかなきゃならないんだよ。智だからしたいのに。智じゃなければそこまでしたい欲はない」

 ものすごく嫌そうな顔をして腕を組んだ。なら行くかとは言わなかったね。ふふっ嬉しくて和樹を見つめた。俺だからしたいんだってさ。こんな言葉は疑わずに受け取るんだ。んふふっ

「智也、そんな顔しないでくれ」

 額に手を当ててため息。ん?よくわからないけど。

「あっそうだ!昨日はありがとうございました。俺ね、口ふさがれてた時和樹をずっと呼んでたんだ。助けてって、そしたら来てくれた。俺本当に嬉しかったんだ。ありがとうございます!」
「いいえ。なら今晩は抱かせて?と言いたいところだが。……大丈夫なのか?」
「うん。もう吹っ切れた」

 俺の、叩かれたからか擦れたかは分からない頬のすり傷を和樹はそっと撫でる。
 どこか、俺の心の奥底に彰人を清算出来ていなかったとこの事件で気がついた。きちんと別れようと話したり、文章で伝えた訳じゃなかったからね。ただ連絡手段がなくなって、部屋も引き払ってて足取りがつかめなかったんだ。実家の場所なんて俺知らなかったからさ。
 
 なら。俺は知ったら行ったのか?きっとあの時なら行ってたかもな。それで来んなとか言われて怒鳴られて終わってたのかもしれない。
 やっぱり区切りがきちんとしてないとなにか心に残るんだなあって。

「智、無理しなくていい。数日するとモヤモヤするかもしれない。心を優先しなさい」
「ありがと。落ち着いたら抱いてって言う」
「おう。待ってるよ」

 僕午後から出るからゆっくりしてねって。これから母方の家のパーティがあるそうだ。

「両親は少し出席したら仕事に戻るってさ」
「まーた忙しいなあ。和樹のうちの人は」
「ふたりとも接客の仕事が好きなんだそうだよ」
「へえ……」

 僕は接客は嫌いではないけど……肌に合わないと感じるそうだ。

「蒼士がいるから招待を受けてるんだ。じゃなきゃ理由付けて半分も行かなくなるかも」

 あればあの一族では変わり者だからねって。でも、一族で一番視野が広いのも自分たち世代では蒼士だとも思っているんだって。

「そっか。俺、蒼士さんに会ってみたい」
「あ~……好みが似てるから合わせないよ。取られるとか冗談じゃないからね」
「あはは」

 とりあえず抱っこさせろと言われて、ゴソゴソ膝に乗り顔を擦り付けた。和樹の匂い好き。いい匂いがするんだよね。香水じゃない彼自身の匂いが好きだ。

「僕は智がいればいい」
「うん。俺は和樹がイヤと言うまで側にいるよ」
「ふふっうん」

 抱かれてるだけでこんなに安心して、心が暖かくなるとは。彰人に抱きついてる時は……どこかいつも怯えてた気がする。

「俺を見て彰人!見てよ!」

 そんな気持ちが強くて、安心とかなかったかもね。いや、全くなかった訳じゃないよ?安心の付録のようにいつも不安があったんだ。
 会社を離れた彰人は初めから少し粗暴で、でも俺はそれを強さと感じた。和樹の安心感とは違う種類の安心感を感じてたんだ。
 それに愛されてはいたんだろうけど、この腕の中とは別ものの愛情に感じる。愛されるためだけに優しいふりしてるような。相手を思いやるような愛情を彰人はくれなかったんだな。

「きっとそうだ……最初から愛し合ってなんかいなかったんだ……お互い独りよがりで愛してるつもりの……なんでだろ……」

 声が出てたみたいで和樹が背中を擦ってくれて、

「ゆっくり消化していけばいい。急ぐな」
「うん……」

 愛されてるとはこういうことだ。あの時間が無駄とは言わないが、虚しい四年間を過ごしたとも思ってしまう。和樹はそんな俺を出かけるまで抱いててくれた。優しく背中をさすってくれたり、キスしてくれたり。和樹の言葉は全部心がこもってる気がするんだよ……
 






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