エリート上司に完全に落とされるまで

琴音

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三章 和樹しか見えない

1 和樹が変

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 引っ越しもすんで二週間が経ち、生活はなんとなく落ち着いてきていた。俺はいつもの時間に習慣で目は覚めたが疲れ果てていた。今週トラブルのせいでものすごく疲れたんだよ。

「和樹……眠い。もう少し寝かせて」
「あ~……僕もダメだ。もう少し寝よう」
「うん」

 昨日も深夜を回ってから帰って来たんだ。まあ、ほとんどの人が毎日終電になっててね。原因は工場。機械トラブルが起きて修理に時間が掛かるらしく、納期が物により二日から一週間くらい遅れるとの連絡が会社に入った。それも火曜の退勤間近にな。当然工場はパニック、俺たちもパニック。
 
 最悪なことに、新商品を盛大にポップアップ販売してくれる大きなリテール会社が含まれていたのは、運が悪い。CMがそのあたりから始まる商品で、店舗にはポップアップ什器も搬入済み。
 当然担当者は真っ青になり連絡してだけど、電話口から怒鳴り声が聞こえるほどで、上からも鬼のようになんとかしろって。他のチームも似たようなもので、他の地域の工場から運べないかと手配しまくり。なんとか生産済みの物をロット数を減らして配送が出来たのか昨日だ。発売日が遅れずなんとかなった。

「和樹抱っこ……」
「うん」

 俺は脚を絡めて抱きつく。んふふっ和樹ってほんのり甘い匂いがする。俺にはそんなふうに感じるんだ。男臭いはずなんだけど、俺には和樹の体臭は落ち着く……ぐう。結局昼くらいまで寝ていたが、

「あっ…んんっ……うあ…」
「気持ちいい?」
「あっかず…き……でっるっ……グッ……ッ」

 和樹が俺の股間を寝てるうちに咥えてて、俺は和樹の頭を掴んでドクドク。

「いい具合に解れたな」

 口から俺のをティッシュに吐き出しながらニヤリ。おもむろにゴムの袋を破り装着し、ふわふわしてる俺の脚を開いてローションヌリヌリ、ずぷりと押し込んだ。

「和樹……あっ余韻を……」
「ムリだなあ。今週出来なかったから」
「そ、そうだけど……んっ……ああ…」

 俺は和樹に脚を巻き付けて、お尻の快感とキスの気持ちよさに喘いだ。

「あ~……智の中久しぶり。なんて気持ちいいんだろ」
「か、和樹のデカ……い…」

 しないと実感する大きさ。引っ越し前の一週間はそれこそ毎日してたから。

「寂しかったろ?」
「いや……俺は休憩になってた……」

 男は疲れるとヤリたくなる人が多い。が、俺はしなくてよくなるんだ。まあ、生理現象で勃ちはするけどさ。それにしても俺より疲れてるはずの和樹は絶倫に恥じない。

「冷たいな智は」

 ドンッと奥に突かれた!カフッ!

「か、かずき!」
「僕こんなに智が欲しいのに」

 ムクムクと一回り大きく?

「うー……ッ」
「僕を求めてくれよ」

 そこから激しくなり俺はふわふわして快感しか分からなくなっていた。いつのもように突かれるたびに漏らして。

「智、一緒にな」

 俺のを握り腰を振る……

「かず…き……も…ダメ……ああ……ふ…出ちゃっ!」
「うん僕も……ウッ」

 ほぼ同時にドクドク。くー……ッ腰が反る!和樹のが膨らんで……ああ……気持ちいい……
 快感が引き始め目を開けると、満足そうな和樹が汗ばんでハァハァ……ヤダかっこいい。

「和樹抱っこして」

 俺は抱っこして欲しくて腕を広げた。すると彼はおう!と上に乗って唇を舐めて舌を……んふっ俺は彼の首に腕を回し……あふっ……

「やっとゆっくり智を味わえた」
「うん。ふふっ」

 見つめ合ってふたりで微笑む。俺たちのチームは和樹の采配で無駄なく動けて解決が早かったんだ。
 指示も的確、怒りマックスのところは和樹が出向いたり電話して、あれよあれよと金曜日には調整終了。これは出世するよねと木村さんとも話していたんだ。若いのに現場を熟知し過ぎてるよねって。

「ねえ、なんで俺たちチームは他より早かったんだ?」
「それなあ。以前……智くらいの頃だな、派手に機械が故障して完全にストップしたことあってさ。その経験からだな」
「へえ……」

 それを経験してる課長より上は処理が早かったはずなんだよって。

「完全に工場がひと月止まったことがあったんだよ。あの地獄を知ってたらこれは楽な方だね」
「これで楽な方……俺は他人に大声出されるの苦手で、怒鳴り声はキツかったよ」

 チュッと目にキスしてくれる。でも仕事だから仕方ないんだって。それは分かってる。俺トラウマなのか、怒鳴られると彰人とのことを思い出して怖くなって固まるし、あのタイプの人も苦手となってしまった。

「僕は智には怒鳴らないよ。そんなことする必要もないからね」
「うん……」

 察してくれたのかそんなことを言う。
 そうだ、和樹は俺を引き留めようとした時以来声を荒げたことはない。俺この事故で大きな声が苦手なんだと客先で急に気がついて震えたんだ。
 それ以前も彰人に怒鳴られたり、小突かれたりはしてたのにね。他人の怒鳴り声は怖くて萎縮してしまう。

「なんか僕満足した。疲れると回数減るのがイヤ……」
「それは普通じゃないの?」
「いや、僕はかなりの疲れでもなんとかなるのが自慢」
「さようで……」

 俺はこのねちこく責めてくるセックス好きだけど、実は一回でも満足出来る。裸で抱き合ってるだけで気持ちよくてね。たまにもっとと思うけど、タチとネコは違うんだろう。

「お前いまラッキーとか思ってない?」
「ふえ?ソ、ソンナコトナイヨ?和樹のキノセイダヨ?」
「なんだよそのカタコトは。顔が言ってるんだよ。カンなんかなくても分かるぞ」

 優しくチュッとしながら。あ~……ニヤけてたかも。チッ俺の失敗だな。

「ごめん……エッチ好きだけど今日は疲れが取れてないんだ」
「それは僕も。でも気持ちはしたいんだよね」
「あはは。さすが和樹」

 話してるうちに萎えて勝手に抜けた。

「ちょっと待って」
「うん」

 和樹は股間を処理してから、俺を胸にキツく抱き締める。

「たくさんすればいい訳じゃないんだけど、僕は始めると簡単に萎えなんだよね」
「うん……それは……知ってる」
「それが智とたくさんしたい理由なんだ。それに自分が相手を満足させるのってよくない?」
「まあ……和樹は俺に満足?」
「とうぜん。よくなければここまでしたがらないよ」
「そう?んふふっ」

 会社で俺を眺めてるのも好きなんだそう。お前はいつも全力でやってるだろ?イヤそうに見えるのは月曜の朝くらいで、ベッドでは別人のように乱れてねって。

「智は二度美味しい」
「……そりゃあどうも」

 部屋でのダラダラした感じも好きで、メリハリがあるよねって。

「僕とは違う形の公私の分け方だけど、ストレスの溜まらない智なりのやり方なんだろ?」
「俺そんなふうに思ったことないけど、休みは会社のことは考えないようにしてる」
「その切り替えは大切なことなんだ。仕事が好きでも心が置き去りになることもあるんだから」
「うん」

 そうだな。俺の同期で和樹みたいに早いうちに評価されてたやつが何人かいた。そのうちの一人は休職中。楽しくて周りが見えなくなって、ある日ベッドから起きられなくなったそうだ。仕事が趣味みたいになってて、無理してるのに気が付かなかったらしい。そんな話をしていると、

「智も仕事好きなのにね」
「そんなふうに思ってくれると嬉しい。でも和樹は俺以上に頑張ったんでしょ?」

 その問いかけにうーんと唸って、なにか言葉を探しているような感じになった。なんだろ?

「あ~……僕は頑張ってないないんだよ。嫌味のつもりはないからね。ただ出来るんだ……」
「あ……うん。なんか分かる気がする」

 確かに余裕持ってやってる気はしてた。今回のトラブルも知ってるとはいえ同じじゃないはず。俺たちがあたふた焦ってるのに悠々と指示出してたもんね。
 和樹は白状すれば、学力だけなら最高峰の大学も高校も行けた。だけど母方の家業を手伝わせようという思惑があって、人とのつながりを作れる学校へと高校から入れられたそうなんだ。

「実は僕研究とかしたかったんだ。医者もありかなって」
「へえ……」
「でも当然親がそんな学部に入れてくれる訳もなく、せめてと好きな民俗学を専攻してたんだ」
「あはは。和樹らしいね」
「だろ?」

 仕事はマニュアルを覚えて実行、そして応用。先輩のやることをよく見て取り込む。それの蓄積。それがなんとなく感覚でやれてしまうらしい。

「なにか指示されると、その工程が感覚で理解出来て最善を選んでいくだけなんだ」

 なんだそれ?

「……もうそれ頭の作りが違うだろ?」
「そう?みんな同じだろ。僕はそうだなぁ。ある程度の知識があれば先が見えるんだ。勉強も教科書を一、二度読めば理解してた」
「あはは……俗に言う天才だね」

 いや違う、僕はそうは思っていないと言う。僕くらいは世の中たくさんいるんだよって。

「僕は今が楽しい。手にある物を試行錯誤して楽しむのもいい。学生時代を知る友人は今の僕をもったいないと言う人もいるけど」
「けど?」

 俺を撫でながら、少し……目に陰りを感じた。

「苦労なくそこそこの給料と愛しい恋人。生活に問題はないんだ。僕は自分の能力の限界を知っている。これで満足なんだよ」
「ふーん」

 なんとなく、なんとなくだけど、こんなはずじゃなかったと聞こえた。
 今の仕事が楽勝なんて……俺は和樹の頬を両手で挟んで、

「和樹はこれでいいと本当に思ってるの?」
「うん。だからここにいる」
「ほんと?」
「ほんと」

 嘘な気がした。家のしがらみとか環境で諦めたんだろうと俺は感じた。

「和樹……なんとか取り返すとか……もう無理かな……でも」
「智……ありがとう。僕は納得してるんだ。後悔なんかないんだよ」
「うそ」
「嘘じゃない。ホテルに行かず好きにさせてもらってるんだ。これ以上は望まないんだよ」
「その言葉が後悔してるって聞こえる」

 困り顔でそうだなと微笑んで、本音はそうかもしれない。だけど今の生活も悪くないんだと言う。

「智とこのままずっとこうしていられればいい。……君は若いからいつか僕から離れるかもしれないけど、今だけは僕を愛して」

 和樹はなんと表現したらいいのか分からない顔をした。なんだろう……変だ。今だけは愛して?はあ……?君とか呼ぶし………変だ。

「な、何言ってんの和樹?俺は離れないよ?」
「なら嬉しいけど……今のは聞き流してくれ」
「うん……」

 なんか変、和樹が変だ。











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