嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ

文字の大きさ
31 / 46
両想い編

31, ジョン・バティスト・リリック伯爵

しおりを挟む
3階の屋敷の正面にあるバルコニーからは、玄関前の広場が見下ろせる。
予想通り、ジョンはそのバルコニーに一人いた。

後ろ姿だから表情は分からないけど、すっと背筋を伸ばして立っている。

僕に気づいたルパートさんが戻るように促してきたけど、僕はそれを無視してジョンの後ろから様子を伺った。

野次や怒号が飛ぶ中、ジョンはしばらく何も言わなかった。
けど、ただそこに彼が立っているだけでだんだんと下から上る声が弱まっていく。

そこにすうっとジョンが左手を挙げたことで、その場の注意は完全にジョンに向かっていた。

「これは、一体どういう騒ぎだ諸君。」

低くて遠くまで響く声が下の広間に広がる。
その迫力と威厳に、その場にいる誰もが呑まれているようにしんとした時間が続いた。

「っあんたがルネを幽閉してるから助けに来たんだ!」

「そ、そうだ!ルネを解放しろ!市民の権利を守れ!」

「貴族の横暴を許すな!貴族制を許すな!」

しばらくの沈黙の後またざわざわとあちらこちらからいろいろな叫びが聞こえる。
貴族制って、もう僕関係ないじゃん。
他にも全く関係ない体制批判や皇帝批判が叫ばれている。
ジョンは怯むことなく静かにそれらを聞いていた。
僕の前にいる時のジョンとまるで違う、堂々とした立派な姿だ。
……というかなんでこれができる人が僕の前だとカチコチなわけ?

つい余計なことに首をひねっていると、ジョンが口を開いた。

「私はルネを幽閉していない。ルネと私は夫婦だ。夫婦が一緒に暮らしてもおかしくはないだろう。」

「何を言う!こっちは分かってるぞ!無理矢理夫婦にさせられたんだ!」

「そんな事はない。私たちの仲は良好だ。一緒にご飯を食べるし、お昼寝もする。私が作った温室もルネは喜んでくれた。とても素敵な人だ。私の妻だがな。私の。」

野次に対する断固とした返答に、一瞬広間がは?という空気になったのが伝わってきた。
気持ちはわかる。堂々とした政治演説のような体でよく分からないノロケを聞かされれば誰だって頭が混乱してそうなると思う。
僕も今ひねっていた首をさらにひねってしまいうなじが痛い。

「だ、騙されるな!この国の自由と権利のために、貴族の暴政の犠牲になったルネ・フェルナールを救うんだ!」

どこかからまた大層なヤジが聞こえてきて、そうだそうだと方々から賛同が上がる。けど、少なからず戸惑いの声も広がっていた。
そうは言ってもこの変なやつどうすんだよ、とでも言いたげな。

こ、このままだとジョンが変な人になってしまう。いや、変な人なんだけど、ちゃんと優しくて可愛い人でもあるから。

僕は前に出てジョンの横に立った。
僕に気付いたジョンがギョッとした反応をする。

「ルネっ!?ルパート、ルネを逃がしてなかったのか?」

「申し訳ありません。」

「ではもう少し時間稼ぎをするから、早く……」

「嫌だ。僕が逃げるのを断ったんだ。」

そう言って下に集まった人たちを見る。
さっき自分の部屋で見た時よりさらに増えている。
中には手に斧や棒を持っている人もいて、そんな人たちに対峙することに恐怖を覚えた。
一歩間違えればすぐに打ち入られて襲われるかもしれない状況で、ジョンはみんなが逃げる時間を稼ぐために1人で対峙したんだ。
その張り詰めた雰囲気を一瞬で変えてしまった存在感も凄い。
した事は謎のノロケだけど。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

u
BL
裏タイトル『執着の檻から逃げ出して、』 いつも通り大学から帰ってきてご飯を食べて眠って目が覚めたら、なぜかそこは異世界だった。どうやら俺、鵺野心翔(ヌエノミト)は、異世界召喚というものをされたらしい。 異世界召喚をしたペンドリック王国の王様から第一王子のライナスと結婚し、子をなせと言われる。男である俺に何を言い出すんだと思ったが、どうやら異世界人は子が生めるようになるらしい。 俺は拒否した。だってどう見てもライナス王子も嫌そうな顔をしているし、毎日違う女を閨に呼ぶような奴と結婚どころか仲良くなれるはずがない。そもそも俺は一夫多妻制断固反対派だ。 どうやら異世界召喚した本当の理由、陰謀に巻き込まれていることに気付かない俺は異世界に来てしまったなら学ばねばとこの世界のことを知っていく。 この世界はピラミッド型をしていて上から神界、天界、魔界、妖精界、妖界、獣人界、そして俺が召喚された元・人間界であり現・底辺界と呼ばれる7つの層に分かれた世界らしい。 召喚される理由があるから召喚されたはずなのに、なぜか俺はあらゆるところから命を狙われ始める。しまいには、召喚したはずの当人にまで。………え?なんで? 異世界召喚されたミトは護衛で常にそばにいる騎士、アルウィン・シーボルトに一目惚れのような思いを寄せるようになる。しかし彼には幼い頃からの婚約者がおり、ミトはアルウィンに命を守られながらも叶わない恋心に苦しんでいく。どうやら彼にも何か秘密があるようで……。さらに最初は嫌われていたはずのライナス第一王子から強い執着心を持たれるようになり……。 次第に次々と明らかになるこの世界における様々な秘密。そして明かされる、異世界召喚の衝撃の真実とは――――。 訳あり一途ド執着攻め×努力家一途童顔受けが様々な問題を乗り越え2人で幸せを掴むお話。 ※複数攻めですが総受けではありません。 ※複数攻めのうち確定で一人死にます。死ネタが苦手な方はご注意ください。 ※最後は必ずハッピーエンドです。 ※異世界系初挑戦です。この世界はそういうものなんだと温かい目でお読み頂けると幸いです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【大至急】誰でもいいので、魔王からの求婚を穏便に断る方法を教えてください。

志子
BL
魔王(美形でめっちゃピュア)×聖職者(平凡)のお話。 聖女の力を持っている元孤児ロニーは教会で雑用をこなす日々。そんなロニーの元に一匹の黒猫が姿を現し、いつしかロニーの小さな友人となった。 注意)性的な言葉と表現があります。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

処理中です...