嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ

文字の大きさ
40 / 46
【R15】番外編

6

しおりを挟む
カンナも揃って稽古室に3人、どういう練習をするかの検討をする。

「とりあえず、君たちが覚えている台本から何か場面をやってみる?」

「じゃあ『陛下のお気に入り』がいいです。」

カンナが笑顔で言う。
僕がこないだ主役を演じた劇だ。

「あれを覚えたの?」

「はい。私たち、何回もカペラ座の公演見ました!ね?フランツ?」

「まあ。」

「じゃあ、カンナが主人公のエレオノール役で、フランツが恋人のバルドーでいいのかな?」

「はい。あっ、でもその前にお手本でルネさんにエレオノールやって貰えませんか?」

カンナが手を組んでお願いのポーズをしてくる。

「いいよ。じゃあシーンは……」

「ラストがいいです!」

ラストって、ボロボロになったエレオノールが、バルドーの腕の中で死ぬシーンだ。
最後は瀕死の主人公に恋人がキスをして、それを感じながら彼女はやっと辿り着いた幸せの中息絶える。

「お、おいカンナ……」

フランツが慌てて止めに入った。
この感じ、二人の付き合いは中々長いようだ。
その間ずっとフランツはカンナに片思いしてるんだろうか。
何だか健気でいいじゃん。

「いいけど、後でカンナも同じシーンできる?」

「はい。やります!」

よし。ならフランツに協力するつもりで引き受けてあげよう。
もちろん練習は真面目にやってもらうけど。

「じゃあ、フランツはバルドー役ね。セリフとか大丈夫?」

「覚えてますけど、最初はルネさんとやるんですか?」

「そうだよ。今バルドー役を出来るのは君しかいないもの。」

まあ、一足飛びにカンナとやりたいのはわかるけどここは辛抱して貰おう。

「じゃあ、倒れたエレオノールをバルドーが見つけて抱き起すところからね。」

そう言って僕は横になった。
目でフランツを促すと、観念したのか驚きの表情を作って僕に駆け寄り背中から上半身を引き上げる。

お、ちゃんとそこから役に入ったのは偉い。続くセリフも中々様になってる。

「エレオノール、どうしてここに?その姿……すぐに治療をしなくては!?」

「待って、ください……バルドー。今言わせてください……でないと、二度と貴方に伝わらないでしょう。……愛しています……貴方だけを……この愛が報われなくても……」

脳裏にジョンを思い浮かべる。
全然似てないフランツの細い線に、簡単にジョンを重ねられてしまった。

僕がもし今ジョンと引き離されたら……。
それだけで胸が苦しくて悲しくなる。
自分で家出してきたくせに何言ってるんだって感じだけど。
ジョンも、僕が帰らないって知ったら切なく思ってくれるかな。

「っ……私も、貴方を愛している。手を伸ばしてはいけないと思っていました。貴方が幸せなら、私はそこにいなくても良かった。しかし、もっと早くこうして貴方を抱きしめるべきでした。」

おーいい感じだな。ちゃんと恋してる顔だ。
僕だって最近やっとマスターしたのに。
感心していると、いよいよキスシーンになってフランツの顔がぐんぐん近づいてきた。
あれ、キスは振りでいいんだけど。何か入り込みすぎてない?

「ちょっ」

流石に止めようと瀕死の演技をやめて相手の口を手のひらで塞ぐ。
その瞬間にバンッと稽古室の扉が開いて大きな体が突撃してきた。

「ルネ!」

フランツに抱き起こされてその口を塞いだまま音がした方を見れば、デーモンも青ざめそうな形相のジョンが立っている。

「……君は誰だ。なぜルネに触れている。」

「ひっ……」

ジョンの剣幕に気圧されたフランツが僕の体に回していた腕を引っ込めた。

「わっ」

バランスを崩した僕の体が背中から床に倒れる。頭をぶつける前にどうにか肘をついて体を支えた。

そのまま体を起こそうとした時、上から影が落ちてきたと思ったら体がふわりと浮いて視界にジョンの体が飛び込んでくる。

横抱きで抱えられていると気付いたときにはジョンはさっさと出口に向かって歩き始めていた。
僕は首をひねって後ろを振り返り、ぽかんとした顔でこちらを見る新人2人を見返した。
2人の姿は直ぐに扉が閉まって見えなくなった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

u
BL
裏タイトル『執着の檻から逃げ出して、』 いつも通り大学から帰ってきてご飯を食べて眠って目が覚めたら、なぜかそこは異世界だった。どうやら俺、鵺野心翔(ヌエノミト)は、異世界召喚というものをされたらしい。 異世界召喚をしたペンドリック王国の王様から第一王子のライナスと結婚し、子をなせと言われる。男である俺に何を言い出すんだと思ったが、どうやら異世界人は子が生めるようになるらしい。 俺は拒否した。だってどう見てもライナス王子も嫌そうな顔をしているし、毎日違う女を閨に呼ぶような奴と結婚どころか仲良くなれるはずがない。そもそも俺は一夫多妻制断固反対派だ。 どうやら異世界召喚した本当の理由、陰謀に巻き込まれていることに気付かない俺は異世界に来てしまったなら学ばねばとこの世界のことを知っていく。 この世界はピラミッド型をしていて上から神界、天界、魔界、妖精界、妖界、獣人界、そして俺が召喚された元・人間界であり現・底辺界と呼ばれる7つの層に分かれた世界らしい。 召喚される理由があるから召喚されたはずなのに、なぜか俺はあらゆるところから命を狙われ始める。しまいには、召喚したはずの当人にまで。………え?なんで? 異世界召喚されたミトは護衛で常にそばにいる騎士、アルウィン・シーボルトに一目惚れのような思いを寄せるようになる。しかし彼には幼い頃からの婚約者がおり、ミトはアルウィンに命を守られながらも叶わない恋心に苦しんでいく。どうやら彼にも何か秘密があるようで……。さらに最初は嫌われていたはずのライナス第一王子から強い執着心を持たれるようになり……。 次第に次々と明らかになるこの世界における様々な秘密。そして明かされる、異世界召喚の衝撃の真実とは――――。 訳あり一途ド執着攻め×努力家一途童顔受けが様々な問題を乗り越え2人で幸せを掴むお話。 ※複数攻めですが総受けではありません。 ※複数攻めのうち確定で一人死にます。死ネタが苦手な方はご注意ください。 ※最後は必ずハッピーエンドです。 ※異世界系初挑戦です。この世界はそういうものなんだと温かい目でお読み頂けると幸いです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

処理中です...