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【R15】番外編
【お礼SS】結婚式
しおりを挟む「やあ!ジョン!ルネ!遅かったじゃないか!さぁ行こう!」
船の甲板を降りて対面するなり、ジョンの叔父であるエンリケさんはそう言って僕とジョンを待機させていた自動車に押し込んだ。
ジョンが慌ててルパートさんに荷物やらを頼む。ルパートさんは慣れた様子でうなずいた。
「いきなり一体どこに行くんだ?長旅でルネも疲れてるんだが。」
「内緒だよ!サプライズ!サプライズだからね!疲れも吹っ飛ぶよ!」
ジョンが呆れながら聞くとエンリケさんは楽しげに言う。
本当にウキウキ嬉しそうで、ジョンの事大好きなんだなって顔してる。
ジョンがすまなさそうにちらっと僕を見てきたけど、大丈夫だよって意味で笑って見つめ返した。
エンリケさんは写真や肖像画で見たとおりの細身の美丈夫だ。
40歳は超えてるはずだけど、もっと若く見える。
2人が似ているのは髪色くらいでジョンの叔父さんとは思えない。
ちなみにジョンのお父さんはジョンそっくりのゴツゴツした人だから、正反対の兄弟って感じ。
話に聞いていたとおり中身も正反対だけど、仲良しなのは一目見ただけで分かった。
「……ベルツ。君も久々なのにずいぶんな歓迎だな。まだルネに紹介もしていないぞ。」
ジョンは運転席の男の人にも話しかけた。
「あはは。だってエンリケさんが急かすから~。」
ベルツって、ジョンの手帳に書かれてた人だ。
ジョンが僕のお芝居を見るきっかけになった人。
車に乗るときちらっと見たけど、小柄で白い肌にうっすらそばかすが浮いている柔和な印象の人だった。
「ルネさん、すみませんが挨拶は後でにしましょ~。」
ベルツさんが前を向いたままほんわりした声で言う。
「あ、はい。」
ジョンの大陸出張に付いてきたはいいけど、船旅も外国も初めてだ。
慣れないことばかりだけど、ジョンがいてくれるから不安はない。
因みに、僕は旅の最中人前では女装する事にした。エンリケさんもベルツさんも僕が男なのは知ってるはずだけど今も女装。
その方が異国でジョンと一緒にいるのに不自然じゃないから。
男の姿のままジョンの隣にいられないのは少し寂しいけど、一緒にいられることの方が大事だと思ってる。
車は郊外に出ると、とある小さな教会で止まった。
「ほら!私が見つけた大陸で一番いい教会だよ!」
着くと結局ベルツさんと挨拶するまもなくまたエンリケさんにぐいぐい引っ張られ教会の扉の前へ。
「なんでわざわざ教会なんか……日曜でもないのに。」
そんなに信心深くないジョンが迷惑そうに言う。
「だって私は2人の結婚式を見てないもの!だから結婚式をプレゼントだ!私が見てあげるんだから、嬉しいだろう!」
エンリケさんが胸を張って言う。
け、結婚式!?
ジョンもポカンとしている。
「あれ、まさか、してないんですか~?」
ベルツさんがほわ?と首を傾げた。
けど、言い方はどこか確信めいている。
うん。何かその発想は無かった。
出会った時はもう結婚して一年経ってたし。
「る、ルネ、すまない、その、俺はこういう気の利いたことが本当に……その……。」
少し青ざめてしどろもどろなジョン。
「ジョン、いいよ。僕も考えてなかったし。花嫁さんに憧れとかも無いよ。」
僕たちが話してると、エンリケさんが焦れて僕たちを押した。
「もー!ほら入って!牧師が待ってるから!」
まあでも……せっかくだからしてくのもいいよね。
「ジョン、エンリケさんもこう仰ってるし、僕は構わないよ。」
「だっダメだ!ガロさんや劇団の皆さんも居ないし、服だって普段着じゃないか。ルネならきっと、もっと白くてふわふわのドレスを着たらきっと……」
脳内で妄想が広がったらしく、ジョンの耳が真っ赤になる。僕が絶対自分では選ばないようなウェディングドレス着せてんだろうな。
「じゃあ戻ったらセレンでもしよ。今はせっかく連れてきてくれたんだし、ね?」
多分そっちの式でもジョンが考えてるようなドレスは着ないだろうけど……いや、頼まれたら着ちゃうかな?
僕が促したら、やっとジョンもその気になったらしく僕に腕を差し出してきた。
その腕に腕を絡めて扉の前に立つ。
両脇からエンリケさんとベルツさんが扉を開いて、先に中に入っていった。
建物の中央を祭壇に向かって伸びる通路を進むと、キラキラしたステンドグラスが正面に見える。
美しい神様とそれを囲む愛らしい天使、複雑に輝く天と、鮮やかな地の風景。
綺麗だった。
今までで見た中で一番かも。
エンリケさんがここを選んだ理由がわかる。
見とれていると、ジョンが歩き出したので少し遅れて足を進める。
広くない教会であっという間に祭壇についた。
最前列ではエンリケさんたちが見守ってくれる。
年配の牧師さんは、ゆったりした動きでリングピローに乗った二つのプラチナのシンプルな指輪を差し出してきた。
そうか、僕たち結婚指輪すらしてないんだ。
ジョンが先に少し小さい方の指輪を手に取り、僕が差し出した左手を恭しく取って薬指にはめる。
ピッタリだった。
僕が大きい方を取ってジョンの左手薬指に嵌めてみるとこっちもピッタリ。
それを見て、ルパートさんが動じなかったのは今日の事知っていたからかもしれないと思った。
一年留守にするかもしれないのに大陸に送り出してくれたカペラ座のみんな。
僕たちの指のサイズを教えたであろうルパートさん。
今日のサプライズをくれたエンリケさんとベルツさん。
僕たち、いろんな人の気持ちをもらってここにいるんだなって思ったら涙が出てきた。
「ルネ……?」
ジョンが心配そうに覗き込む。
大丈夫、嬉しいだけだよって、声が出ないから泣きながら笑った。
ぼやけた視界で前を向くと、牧師の定番のセリフが始まる。
お芝居で何度も聞いてるけど、今日のは本当の僕に向けられた言葉だ。
「汝、病める時も健やかなる時も……」
「誓います。」
ジョンが、牧師の言葉が終わりきらないうちに食い気味に言う。
淀みがなさすぎてちょっと面白かった。
同じように僕も聞かれて、少し震えた声で同じ言葉を告げた。
演技でははっきり言うのがいいと思ってたけど、本当だと僕はこんな情けない声しか出ないんだな。
「ではここに、両者の誓いのキスを。」
促されて向き合う。
案の定、見上げると赤い耳に皺の寄った眉間。
流石にもうキスくらいでは固まらないだろうけど、いつもと違う環境で照れが増してるみたいだ。
僕から目を瞑って唇を少し突き出すと、ゆっくり柔らかくジョンの唇が重なってきた。
少し触れただけなのに、頭がふわぁっと幸せでいっぱいになる。
多分今、僕すごく締まりのない顔してるはず。
ジョンがどんな顔してるか知りたくてうっすら目を開けると、なんと厳つかった眉毛が少し垂れて口元は笑っていた。
初めて見る表情に胸がきゅううっとなる。
凄い。こんなに大好きなのにさらに好きになるってことあるんだ。
今自分がどんな顔してるか鏡で確かめたくなったけど、この表情はジョンの前だけにしておこうと思ってやめた。
僕だって、さっきのジョンの表情は独り占めしたいもの。
——————-
「あの、どうして僕たちが結婚式挙げてないって知ってたんですか?」
式の後、エンリケさんとジョンが話してる時にこっそりベルツさんに聞いてみる。
していないことに気づいていないジョンが自分から言うわけないし、ルパートさんだろうか。いや、ルパートさんは人に話すくらいなら尻を叩いてジョンに自分でちゃんと用意させそうだ。
「あ~。僕~家出したけどシューバッハ家の五男なんです~。」
シューバッハ家は元皇族から始まる公爵家で、今でも皇帝エドヴァル様の親戚筋だ。
まさか公爵家のご子息に車の運転してもらってたなんて。
「だから~エドヴァルとは今も文通仲間で~バカジョンが全く気付いてないから何とかしろって~。」
その言葉に目が丸くなる。
「まあ~エンリケさんが見たいって言うしいいかなって~。あれ?大丈夫ですか~。」
また感極まって泣いてしまった僕にジョンが慌てた様子で近寄ってきたので、涙が止まるまでずっとジョンにしがみついていた。
(おわり)
———————-
最後までお付き合いありがとうございました!
BL大賞に投票してくださった方に重ねて深い感謝を申し上げます。
今後もアホエロ短編中心に書くので宜しければまたお越しくださいー。
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こんばんは、こちらの作品の方投稿されてからずっと読ませて頂いておりました
ルネのお芝居に向けた情熱といいますか、その情熱は自分を見てくれる人への観客に恋しているような熱さがあって
エドヴァルと序盤のバルコニーの場面はずっと見てくれた人が皇帝ではなかったというシーンだとは思ったのですがルネの情熱やお芝居へのひた向きさが届かなかった相手でもあるんだろうなと
観客というものはすごく良かったとか、良くない場合はそうだと、ダイレクトにわかりやすいものなんだと思うのですが
ジョンの贈り続けた花は貴方をみているという
お芝居の中のルネだったものを、ルネのお芝居にかえてくれたものだったのかもと
受を好き過ぎて、固まってしまう不器用な攻のジョンのそういう唯一の人がルネであると分かりやすいくらいに
愛情をストレートに伝えてくれる姿であったり、ルネの気持ちの自覚など本当にすごく楽しく読ませて頂いておりました
漫画や18禁の方も更新されているのを拝見してものすごく嬉しかったです
素敵な物語をありがとうございます
大喜さんだ!こちらの方に感想ありがとうございますぅ!!
濃厚な感想凄い嬉しいです_:(´ཀ`」 ∠):。
ルネは自分が誰か分からないまま周りを伺いながら生きてきた人間で、それが芝居を頑張る原動力なんですけど、いくら演じても本当に誰かになれる訳じゃないからそこに限界があって、結局ジョンに出会えてちゃんと自分を見てもらってルネになれましたみたいな優しい話になりました。
ジョンはジョンで貴族向いてないけど家は継がなきゃだし、仕事好きだけど思いっきり出来ないしで中途半端な時にルネのひたむきな姿に出会って惹かれた感じでしょう(多分)。
途中まではエドヴァルとバチボコの三角関係にするかなーと思ってたんですが、割とコメントのジョンに対する感想が暖かかったのと、バカップル方向で書くのが案外面白かったのと、エドヴァルをちょっと強キャラにし過ぎたのを懸念しボツにしました笑。
個人的には出木杉くんに勝つのび太展開は好きですが!
楽しく読んでいただけたなら何よりです☺️
こんにちは。
ルネくんとジョンさん、両想いがわかって結ばれて良かったです!
おめでとうございますv
番外編も楽しみです。
安定のヘタレさん…w
折角ルネくんが積極的に来てくれてるのに。
再びコメントありがとうございます!
両思いでめでたしめでたしまでかけてよかったです。
今回はこいつ自分がいないとダメかもって絆すタイプの攻めの溺愛を書きたいだけのBLでした。
これからジョンには諸々頑張らせます!
素敵な物語をありがとうございました!番外編も楽しみにしています。
BL大賞、投票しようと思ったらすでに投票済でしたw
かもさん、コメントと投票ありがとうございます!
大賞はプライズ欲しさにどうにか100位以内に残れないかなって足掻いております😂
貴重な一票入れて頂き本当に嬉しいです。
番外もどうかお付き合いください!!