どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと

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52.定期報告会③

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『確かに一理ある。だが当事者であるシシリアを蚊帳の外に置く形にはしたくない。こうして直に報告を聞き意見を述べることができる場はあったほうがいい』
ルカディオ殿下はそう言ってくれた。

きっと彼は私が『変わらない』という報告を聞き、安堵している事に気づいていたのだろう。そしてその報告を紙ではなく直接聞くという行為が私にとってどれほど重要かも…。

人は不安な時には些細なことで不安が増し、ほんの些細な違いで不安が薄れていく。

私の場合は直接的な『言葉』が不安を和らげてくれていた。


それを殿下はよく分かっていてくれた。
私の立場では『定期報告会を継続して欲しい』とは言えないことも、だが続けて欲しいと願っていることも…。

感謝の念しかない。




短い時間で定期報告が終わり、みな執務室から出ていく。
私も彼らに続き出ていこうとしたら、殿下によって呼び止められた。

「シシリア、ちょっといいかな?」

「はい、大丈夫です。いかがしましたかルカディオ殿下?」

そう問いかけたら殿下は少しだけ眉を顰める。
だが不快という表情ではない。怒っているのでもなく、…困っているというのが近いかもしれない。

いったいどうしたのだろうか。
なにか私の態度に問題があったのだろうか。


「シシリア、二人だけの時は友人として接してくれと言っていたはずだが…」

そう言われて気がついた、もうこの部屋には私と殿下しかいない。
つまりは今は臣下ではなく、二人だけだから友人という立場でということなのだろう。

「ルカ様、どうしましたか?」

私が慌ててこう言い直すとルカ様は眉間の皺が消え、嬉しそうな顔をする。
彼は大人で人の気持ちを察してさり気なく動く人だけれど、こういう少年のような一面もある。

それもこの5年という年月を友人として過ごさせてもらうことで知ることが出来たのだから、本当に私にとって貴重な時間だった。


私が微笑みながら友人であるルカ様を見つめていると彼が話し出した。

「魔術に関することではないのでさきほどの定期報告では言わなかったが、君に伝えておきたいことがある」

「…なんでしょうか?」

彼の表情から私の家族に関する事ではないと感じた。でも何を言おうとしているのかは分からなかった。
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