8 / 29
8.シンデレラは立ち聞きする…?
しおりを挟む
呆然と立ち尽くしている私にお城の侍女達は優しかった。
早く来過ぎて迷惑を掛けている私に嫌な顔ひとつ見せずに『よろしかったら開始時刻になるまで庭園でお過ごし下さいませ』と花々が咲き乱れている庭園へと案内してくれた。
誰もいない庭園を一人で散策していると生い茂った生け垣の向こうから誰かの話し声が聞こえてくる。聞くつもりはないけれども、ここで足音を立てるとまるで今まで立ち聞きしていたように思われてしまうかもしれない。
これ以上目立つことは避けたかった。
だから向こうの人達がいなくなるまで動かずにやり過ごそうとした。
「…っ、…まったく…だ」
「そんなことをおっしゃ……」
聞こえてくる話し声は男性二人のようだ。私には気づいていないようで話しを続けている。
「スナイル様、今日こそは婚約者となる令嬢を決めてください。国中の令嬢が参加する予定ですから、きっと素敵な方に巡り会えるはずです」
「………そうかもな」
どうやら生垣の向こうにいるのはこの国の王子とその従者みたいだ。立ち聞きするつもりはないけれども、ついつい耳を傾けてしまう。
だって王子の声が元気がないように聞こえたからだ。一国民として心配するのは当然だろう。
体調が悪いのかしら…。
それとも公務でお疲れが溜まっているの?
「スナイル様、王子という立場を分かっていますか?結婚して世継ぎを作るのは避けられませんよ。もういい加減、腹を括ってください」
従者らしき人物は親しげな口調で諭すように話しかけている。どうやらそれが許されるほど信頼されているのだろう。
世継ぎであるスナイル王子は未婚でまだ婚約者もいないから、王子の伴侶の座を貴族の令嬢達はみな狙っている。
容姿良し性格良しの完璧な王子なのだから令嬢達の反応は当然のものだった。
私は平民になるつもりなので狙ってはいないが、『憧れの王子様』と会うのはちょっとだけ楽しみにしていた。
どんなに素敵な人なんだろうと。
だがそんな気持ちはこのあとの会話を聞いて跡形もなく消え去る……。
「言われなくてもちゃんと理解しているさ、王子としての義務くらい。
はぁーーーー、好きでもない相手と結婚して子供が出来るまで励めばいいんだろう。
腰を振るくらい野生の猿だって出来るんだから心配するな。
まあ最悪生理的に無理な相手だとしてもだ、真っ暗にして相手の姿を見なければ若さでたたせる自信はある」
まさかの鬼畜発言が王子の口から出てきた。
従者が『そんな品のない言葉はお控えください』と言っているが『品だって?発情期の雌猿のように迫ってくる令嬢達に言ってくれ』と笑っている。
なんて嫌な奴なの!!
性格良し…なんて誰が言ったのだろうか。
良いどころか最低最悪な腐れ王子だ。
どんなに美丈夫でもこんな性格の人とはお近づきになりたくない。
……まさか王子がこんな人だったなんて。
詐欺だわ、というか犯罪級では?
舞踏会が始まる前から時間の無駄だったと来たことを後悔し始める。そっとこの場から立ち去って帰ってしまおうと足を踏み出すと落ちた葉を踏み『カサッ』と微かに音を立ててしまう。
その音は生垣の向こうの彼らの耳にも聞こえてしまったようで、話し声はぴったと止んだ。
この状況はよろしくない。まるで私が故意に立ち聞きしていたように思われてしまう。
「そこにいるのは誰だっ!」
さきほどと違って刺すような冷たい王子の声と同時に、生垣を掻き分けてこちらに来ようとしている音が聞こえてくる。
えっ、えっ…どうしましょう?!
慌てて周りを見渡すが隠れる場所もないし、私の足では今更逃げることも出来ないだろう。
聞いていませんでしたと言ってもきっと信じてもらえないと思う。現に私はしっかりと聞いていた…。でも私のせいではない、偶然の産物だ。
人はパニックになると冷静な判断力が損なわれる…ようだ。
「あ、あの…誰もいませんのでお気になさらずに………」
とっさに私の口から出てきた言葉はこれだった。
ツッコミどころ満載だが決して笑いに走ったわけではない。
ああ、何を言ってるのよ…。
話す時点で『誰もいない』て事にならないじゃない。
気にしないどころか、絶対に余計に気になるわ…。
自分のあまりの愚かさに打ちのめされる。
そして気づく、この愚かさを身近で見てきたことに。
あれっ、まさかお父様と同じ??
性格も見た目も母親似だと信じて生きてきた17年間が揺らいでくる。
どうやら父の血もしっかり受け継いでいたらしい。
『遺伝って恐ろしいわ、まさに呪いのよう…』と呟きながらその場に立ち尽くす。
気づくと目の前には二人の男性が立っていた。友好的とは言えない眼差しで背の高い彼らは私を見下ろしている。
あっ、いけない。
ちょっとだけ忘れていたわ…。
衝撃的な事実に一瞬生け垣の向こうの彼らの存在を忘れてしまっていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
読んで頂き有り難うございます♪
お気に入り登録&感想に感謝しております(人 •͈ᴗ•͈)
最後までお付き合い頂けると幸いです( ꈍᴗꈍ)
早く来過ぎて迷惑を掛けている私に嫌な顔ひとつ見せずに『よろしかったら開始時刻になるまで庭園でお過ごし下さいませ』と花々が咲き乱れている庭園へと案内してくれた。
誰もいない庭園を一人で散策していると生い茂った生け垣の向こうから誰かの話し声が聞こえてくる。聞くつもりはないけれども、ここで足音を立てるとまるで今まで立ち聞きしていたように思われてしまうかもしれない。
これ以上目立つことは避けたかった。
だから向こうの人達がいなくなるまで動かずにやり過ごそうとした。
「…っ、…まったく…だ」
「そんなことをおっしゃ……」
聞こえてくる話し声は男性二人のようだ。私には気づいていないようで話しを続けている。
「スナイル様、今日こそは婚約者となる令嬢を決めてください。国中の令嬢が参加する予定ですから、きっと素敵な方に巡り会えるはずです」
「………そうかもな」
どうやら生垣の向こうにいるのはこの国の王子とその従者みたいだ。立ち聞きするつもりはないけれども、ついつい耳を傾けてしまう。
だって王子の声が元気がないように聞こえたからだ。一国民として心配するのは当然だろう。
体調が悪いのかしら…。
それとも公務でお疲れが溜まっているの?
「スナイル様、王子という立場を分かっていますか?結婚して世継ぎを作るのは避けられませんよ。もういい加減、腹を括ってください」
従者らしき人物は親しげな口調で諭すように話しかけている。どうやらそれが許されるほど信頼されているのだろう。
世継ぎであるスナイル王子は未婚でまだ婚約者もいないから、王子の伴侶の座を貴族の令嬢達はみな狙っている。
容姿良し性格良しの完璧な王子なのだから令嬢達の反応は当然のものだった。
私は平民になるつもりなので狙ってはいないが、『憧れの王子様』と会うのはちょっとだけ楽しみにしていた。
どんなに素敵な人なんだろうと。
だがそんな気持ちはこのあとの会話を聞いて跡形もなく消え去る……。
「言われなくてもちゃんと理解しているさ、王子としての義務くらい。
はぁーーーー、好きでもない相手と結婚して子供が出来るまで励めばいいんだろう。
腰を振るくらい野生の猿だって出来るんだから心配するな。
まあ最悪生理的に無理な相手だとしてもだ、真っ暗にして相手の姿を見なければ若さでたたせる自信はある」
まさかの鬼畜発言が王子の口から出てきた。
従者が『そんな品のない言葉はお控えください』と言っているが『品だって?発情期の雌猿のように迫ってくる令嬢達に言ってくれ』と笑っている。
なんて嫌な奴なの!!
性格良し…なんて誰が言ったのだろうか。
良いどころか最低最悪な腐れ王子だ。
どんなに美丈夫でもこんな性格の人とはお近づきになりたくない。
……まさか王子がこんな人だったなんて。
詐欺だわ、というか犯罪級では?
舞踏会が始まる前から時間の無駄だったと来たことを後悔し始める。そっとこの場から立ち去って帰ってしまおうと足を踏み出すと落ちた葉を踏み『カサッ』と微かに音を立ててしまう。
その音は生垣の向こうの彼らの耳にも聞こえてしまったようで、話し声はぴったと止んだ。
この状況はよろしくない。まるで私が故意に立ち聞きしていたように思われてしまう。
「そこにいるのは誰だっ!」
さきほどと違って刺すような冷たい王子の声と同時に、生垣を掻き分けてこちらに来ようとしている音が聞こえてくる。
えっ、えっ…どうしましょう?!
慌てて周りを見渡すが隠れる場所もないし、私の足では今更逃げることも出来ないだろう。
聞いていませんでしたと言ってもきっと信じてもらえないと思う。現に私はしっかりと聞いていた…。でも私のせいではない、偶然の産物だ。
人はパニックになると冷静な判断力が損なわれる…ようだ。
「あ、あの…誰もいませんのでお気になさらずに………」
とっさに私の口から出てきた言葉はこれだった。
ツッコミどころ満載だが決して笑いに走ったわけではない。
ああ、何を言ってるのよ…。
話す時点で『誰もいない』て事にならないじゃない。
気にしないどころか、絶対に余計に気になるわ…。
自分のあまりの愚かさに打ちのめされる。
そして気づく、この愚かさを身近で見てきたことに。
あれっ、まさかお父様と同じ??
性格も見た目も母親似だと信じて生きてきた17年間が揺らいでくる。
どうやら父の血もしっかり受け継いでいたらしい。
『遺伝って恐ろしいわ、まさに呪いのよう…』と呟きながらその場に立ち尽くす。
気づくと目の前には二人の男性が立っていた。友好的とは言えない眼差しで背の高い彼らは私を見下ろしている。
あっ、いけない。
ちょっとだけ忘れていたわ…。
衝撃的な事実に一瞬生け垣の向こうの彼らの存在を忘れてしまっていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
読んで頂き有り難うございます♪
お気に入り登録&感想に感謝しております(人 •͈ᴗ•͈)
最後までお付き合い頂けると幸いです( ꈍᴗꈍ)
86
あなたにおすすめの小説
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
望まない相手と一緒にいたくありませんので
毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。
一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。
私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
契約書にサインをどうぞ、旦那様 ~お飾り妻の再雇用は永年契約でした~
有沢楓花
恋愛
――お飾り妻、平穏な離婚のため、契約書を用意する。
子爵家令嬢グラディス・シャムロックは、結婚式を目前にしてバセット子爵家嫡男の婚約者・アーロンが出奔したため、捨てられ令嬢として社交界の評判になっていた。
しかも婚約はアーロンの未婚の兄弟のうち「一番出来の悪い」弟・ヴィンセントにスライドして、たった数日で結婚する羽目になったのだから尚更だ。
「いいか、お前はお飾りの花嫁だ。これは政略結婚で、両家の都合に過ぎず……」
「状況認識に齟齬がなくて幸いです。それでは次に、建設的なお話をいたしましょう」
哀れなお飾り妻――そんな世間の噂を裏付けるように、初夜に面倒くさそうに告げるヴィンセントの言葉を、グラディスは微笑んで受けた。
そして代わりに差し出したのは、いつか来る離婚の日のため、お互いが日常を取り戻すための条件を書き連ねた、長い長い契約書。
「こちらの契約書にサインをどうぞ、旦那様」
勧められるままサインしてしまったヴィンセントは、後からその条件を満たすことに苦労――する前に、理解していなかった。
契約書の内容も。
そして、グラディスの真意も。
この話は他サイトにも掲載しています。
※全4話+おまけ1話です。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる