すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと

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9.話し合い①

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あれから心を閉ざしたリズは直ぐには話し合いに応じてくれなかった。
完全に避けているわけではないが、ちゃんとその目に俺を映してくれないので気持ちがまだ俺にあるのか分からない。

俺が子供の事を話そうとしても『もう少し待って』と言って悲しそうな顔をする。夜もうなされている事が多く、その度に優しく抱き締めているが彼女が抱き返してくれることはない。

だから俺は別邸にいる間は片時もリズの傍から離れない。彼女が俺を許してくれなくても見てくれなくても、それでも離れられない。

酷く苦しめているのは俺だが、でも解放してあげられない…。

 どうかいつかまた俺をその瞳に映して欲しい。
 愛さなくてもいいから、俺から愛されるのだけは受け入れて欲しい。
 

暫くたったある日、リズは『話し合いましょう』と言ってくれた。
正直、話し合うことによって彼女を失うことを決定づけられてしまうならこのままでもいいと思い始めていたので、この前進に恐れを感じてしまう。

 どうか見捨てないで!
 嫌ってもいいから傍にいさせて…。
 気が済むまで殴ってもいいから。
 許せるまで切り刻んでもいいから。
 どうか、どうか……。

「それ…は俺への死刑宣告……それとも救済…」

みっともないが声が震えて、目に涙が溢れてくる。リズが今どんな表情をしているのか分からない。

「アレク、私は裁判官でも神でもないわ。今もそしてこれからもあなたの妻でしかないわ」

「えっ?い、今なんて!もう、もう一回言ってくれ」

 これは夢なのかっ‥‥。
 本当に『これからも』と言って…くれた…のか。
 ああぁ、リズの目にちゃんと俺が映っている!

先もあなたの妻だと言ったのよ。聞こえた?それとももうそれは望んでいないの?
私はいらなくなった‥‥」

「望んでいる!愛している!俺の愛おしいリズ、あ、有り難う…。こんな俺を見捨てないでくれて、また愛してくれて。うっうっ、リズ、リズ!」

「それは違うわ。また愛したのではないわ、ずっと愛し続けていたの。裏切りを知って苦しかったし色々考えていたのは事実だけど、アレクに対する愛情が途絶えたことは無かった。
皮肉な事だけど今回の事があって自分でも驚くほどあなたを愛しているのが分かったわ。
本当はあなた…っ嫌いになれたら、楽にな…れるのでしょうけど、どうして、もそれ…が出来なかった…。

ふっ、私はアレクに初めてあった時から愛してしまったから。あなたを幸せにするって決めていたから。
私の愛は重い…けど、大丈夫?」

「あ、ああ、もちろんだ。リズとならばどんな深みに嵌ってもいい」

お互いに強く抱き締め合いながら笑いながら号泣していた。落ち着くまで長い時間が掛かったがその時間さえ愛おしかった。

それから避けて通る事の出来ないこれからの事について話し合うことになった。

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