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5.契約の愛人①
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やっと裏で全ての手筈を整え終わった。後はリズに『俺達の生活は何も変わらない』と伝え、二人だけの穏やかな生活に戻るだけだ。
「リズちょっといいかな、これからの事で話しておきたいことがあるんだ」
「なあにアレク。深刻な顔をして…。ま、まさかあの王命が出てしまったの…」
「いや違うよ。出ていないし、これからも出ることはない。もう安心していい」
「そう、良かったわ。でも安心って…どういうこと?王家はあんなに子供の存在に拘っていたのに。
諦めたの、それとも猶予を与えてくれたのかしら…」
そう言いながらも訝しそうな表情で俺を心配そうに見てくるリズ。いつだって君は自分の事より俺の事を心配してくれる。そんなリズが愛おしいくて堪らないんだ。
君は俺がこれから話すことを聞いたら安堵してくれるだろうか…。
「王家より離縁するように圧力が掛けられていただろう。でも俺はリズとは別れない、これは絶対だ。だから王家が望んでいるものを他で用意する手筈を整えた。問題はすぐに解決するから、これからも俺達は一緒にいられる」
「でも王家がこの婚姻によって望んでいるものは…貴方の血を受け継ぐ子供よ…ね?
養子では駄目なはずだわ。
もしかして第二夫人を迎えるの…?」
この国の高位貴族は跡継ぎを得るために第二夫人を迎えることも認められている。
その可能性を考えているリズの顔色は悪くなっていくが、俺を責めることは言わない。
俺が君以外を迎え入れる?
はっ、そんなことは有り得ない。
「いいや第二夫人なんて迎えない。俺はリズしかいらないし愛せない。
だから子供だけを用意した。一ヶ月後には生まれる予定だ。これで誰にも俺達の邪魔はさせない」
「も、もうすぐ生まれ…る?どういうことなの…。養子を我が子と偽ってもその魔力でばれるはず…。それなら…生まれてくる子は…誰の…子?」
ああそんなに震えないでくれ、大丈夫だから。
後少しで問題は解決するから。
震えるリズを優しく抱き締めて淡々と事実だけを告げる。
「金に困っていた子爵家の未亡人に俺の子供を産むように依頼した。産んだ子供は引き取り侯爵家の跡取りとして俺が育てる予定だ。だがリズが嫌なら本邸で公爵夫妻に教育を頼み俺達は一切関わらないことにする。話は付けてあるから問題は起こらない」
「そ、そんな…。アレクは私が知らないうちに愛人が…いたということなの…」
「違う!愛人なんかではない、あれはただの契約だ。そこに愛はないんだ!」
リズに誤解なんてされたくなかった俺は思わず叫んでいた。
「でもその人と愛し…合ったので…しょう。子供が…出来ているのだからそう…よね?」
リズは静かに涙を流しながら声を震わせて真っ直ぐに見つめて問い掛けてくる。
泣かないでくれ、君を悲しませるためにやったことじゃない!リズをこれ以上傷つけない為に、離れなくても大丈夫なようにやった行為だ。
あれはリズと俺との愛の行為と同じじゃない。
そんな崇高な行為ではなく、…ただの作業。
そこには愛はないし、汚らわしく感じただけだ。
信じてくれ…リズ。
「確かに行為はしたが、愛し合ってなどいない。
信じてくれ、君しか愛していない」
ちゃんと話せば俺の行動は理解してくれると思っていた。子供の存在を喜ばなくても、それにより一緒にいられる状況になった事は喜んでもらえると思っていた。
だが違った。リズは俺の胸を叩きながら目を見ずに話す。
「リズちょっといいかな、これからの事で話しておきたいことがあるんだ」
「なあにアレク。深刻な顔をして…。ま、まさかあの王命が出てしまったの…」
「いや違うよ。出ていないし、これからも出ることはない。もう安心していい」
「そう、良かったわ。でも安心って…どういうこと?王家はあんなに子供の存在に拘っていたのに。
諦めたの、それとも猶予を与えてくれたのかしら…」
そう言いながらも訝しそうな表情で俺を心配そうに見てくるリズ。いつだって君は自分の事より俺の事を心配してくれる。そんなリズが愛おしいくて堪らないんだ。
君は俺がこれから話すことを聞いたら安堵してくれるだろうか…。
「王家より離縁するように圧力が掛けられていただろう。でも俺はリズとは別れない、これは絶対だ。だから王家が望んでいるものを他で用意する手筈を整えた。問題はすぐに解決するから、これからも俺達は一緒にいられる」
「でも王家がこの婚姻によって望んでいるものは…貴方の血を受け継ぐ子供よ…ね?
養子では駄目なはずだわ。
もしかして第二夫人を迎えるの…?」
この国の高位貴族は跡継ぎを得るために第二夫人を迎えることも認められている。
その可能性を考えているリズの顔色は悪くなっていくが、俺を責めることは言わない。
俺が君以外を迎え入れる?
はっ、そんなことは有り得ない。
「いいや第二夫人なんて迎えない。俺はリズしかいらないし愛せない。
だから子供だけを用意した。一ヶ月後には生まれる予定だ。これで誰にも俺達の邪魔はさせない」
「も、もうすぐ生まれ…る?どういうことなの…。養子を我が子と偽ってもその魔力でばれるはず…。それなら…生まれてくる子は…誰の…子?」
ああそんなに震えないでくれ、大丈夫だから。
後少しで問題は解決するから。
震えるリズを優しく抱き締めて淡々と事実だけを告げる。
「金に困っていた子爵家の未亡人に俺の子供を産むように依頼した。産んだ子供は引き取り侯爵家の跡取りとして俺が育てる予定だ。だがリズが嫌なら本邸で公爵夫妻に教育を頼み俺達は一切関わらないことにする。話は付けてあるから問題は起こらない」
「そ、そんな…。アレクは私が知らないうちに愛人が…いたということなの…」
「違う!愛人なんかではない、あれはただの契約だ。そこに愛はないんだ!」
リズに誤解なんてされたくなかった俺は思わず叫んでいた。
「でもその人と愛し…合ったので…しょう。子供が…出来ているのだからそう…よね?」
リズは静かに涙を流しながら声を震わせて真っ直ぐに見つめて問い掛けてくる。
泣かないでくれ、君を悲しませるためにやったことじゃない!リズをこれ以上傷つけない為に、離れなくても大丈夫なようにやった行為だ。
あれはリズと俺との愛の行為と同じじゃない。
そんな崇高な行為ではなく、…ただの作業。
そこには愛はないし、汚らわしく感じただけだ。
信じてくれ…リズ。
「確かに行為はしたが、愛し合ってなどいない。
信じてくれ、君しか愛していない」
ちゃんと話せば俺の行動は理解してくれると思っていた。子供の存在を喜ばなくても、それにより一緒にいられる状況になった事は喜んでもらえると思っていた。
だが違った。リズは俺の胸を叩きながら目を見ずに話す。
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