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13.子供の誕生
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子が生まれても本邸にロザリンは居座り続け、子供も手放さない。
おかしいと思い、何度も家令を通し侯爵夫妻に抗議していたが『まだ母子共に体調が悪くてな』とあしらわれてしまっていた。
痺れを切らし自ら本邸に行くと、そこには立派な子供部屋とロザリンの為の部屋が作られていた。
なんだこれは、まるで家族のような扱いじゃないかっ!
ロザリンに抱かれている初めて見る子供からは自分と同じ魔力を感じたので、実子だと確認できたが我が子だという感動は沸いてこなかった。
きっと別邸に連れて来られリズが抱いていたら可愛いと思えたかも知れないが、ロザリンが抱いているとそれだけで受け入れられなかった。
ロザリンの傍には当然のように侯爵夫妻の姿もあった。
まるで嫁のような扱いをする彼らを見て、怒りが沸いてくる。
「ロザリン夫人あなたは契約をして金を受け取ったのを忘れたのか。その契約では出産後、すぐに子供を渡すことになっていたはずだ。それなのに今だに子供を渡さず、侯爵家に居座るとはどういう事だ!」
俺の問いにあの女は答えずに下を向いて怯えているふりをしているが、その口角が上がっているのを見逃しなどしなかった。
この女狐が、何を考えてやがる。
「まあまあ落ち着けアレクサンダー。実はなロザリンの体調は落ち着いたんだが、彼女は私と新たな契約を結んだんだ。ロザリンには赤ん坊の乳母として本邸で暮らしてもらうことになった。
色々と考えたんだが、エリザベスではこの子に愛情を注いでやれんだろう。下手したら虐待してしまうかもしれん。世間ではそう言うことがよく起きているからな。
この子は大事な跡取りだからそんな目には遭わせられん。
なあに、お前は正妻と今まで通り別邸で暮らし、定期的にこちらに通って親子の情を育めばいい。ロザリンはいい子だし、お前とも上手くやっていけるだろう」
目の前にいる侯爵はにやにやしながら勝手な事をほざいてくる。
つまり更に欲に目がくらんだってことだな。
あわよくばこの女にまた俺の子を産ませる魂胆か。
ケッ、こいつと血が繋がっていると思うと吐き気がする。
契約を破り侯爵家の寄生虫にでもなろうとしている女に憎しみは覚えるが、我が子に愛情を感じているわけでもないので争ってでも子供を奪おうという気は起きなかった。
ふとリズが悲しむ顔が頭を過ったが、それでも子は正式に我が子として届けているので離縁の危機はなくなった。
つまり当初の問題は解決されている。
こいつらに何を言っても無駄だろう。
切り捨て関わらない方が得策だ。
「分かりました。とりあえずロザリン夫人が産んだ子は実子として届け出たので、契約違反には目を瞑りましょう。
子供の養育もこちらで構いませんし、侯爵家とロザリンの関わりにも口を出しません。
けれども私や妻と関わることは絶対に許しません。
もしウロチョロしたりしたら‥‥その時は、分かりますね。クックック」
最後の言葉が終わると同時に近くの花瓶が勢いよく粉砕する。
「「「ヒッー!」」」
ガタガタと震える奴らを置いて別邸へと戻っていく。
リズに子供の事を伝えたらきっとがっかりするかもしれないが、それでも良かったと思っていた。リズと血が繋がっていな子を迎えて起こる予期せぬ変化より今の幸せが何よりも大切に想えていたからだ。
おかしいと思い、何度も家令を通し侯爵夫妻に抗議していたが『まだ母子共に体調が悪くてな』とあしらわれてしまっていた。
痺れを切らし自ら本邸に行くと、そこには立派な子供部屋とロザリンの為の部屋が作られていた。
なんだこれは、まるで家族のような扱いじゃないかっ!
ロザリンに抱かれている初めて見る子供からは自分と同じ魔力を感じたので、実子だと確認できたが我が子だという感動は沸いてこなかった。
きっと別邸に連れて来られリズが抱いていたら可愛いと思えたかも知れないが、ロザリンが抱いているとそれだけで受け入れられなかった。
ロザリンの傍には当然のように侯爵夫妻の姿もあった。
まるで嫁のような扱いをする彼らを見て、怒りが沸いてくる。
「ロザリン夫人あなたは契約をして金を受け取ったのを忘れたのか。その契約では出産後、すぐに子供を渡すことになっていたはずだ。それなのに今だに子供を渡さず、侯爵家に居座るとはどういう事だ!」
俺の問いにあの女は答えずに下を向いて怯えているふりをしているが、その口角が上がっているのを見逃しなどしなかった。
この女狐が、何を考えてやがる。
「まあまあ落ち着けアレクサンダー。実はなロザリンの体調は落ち着いたんだが、彼女は私と新たな契約を結んだんだ。ロザリンには赤ん坊の乳母として本邸で暮らしてもらうことになった。
色々と考えたんだが、エリザベスではこの子に愛情を注いでやれんだろう。下手したら虐待してしまうかもしれん。世間ではそう言うことがよく起きているからな。
この子は大事な跡取りだからそんな目には遭わせられん。
なあに、お前は正妻と今まで通り別邸で暮らし、定期的にこちらに通って親子の情を育めばいい。ロザリンはいい子だし、お前とも上手くやっていけるだろう」
目の前にいる侯爵はにやにやしながら勝手な事をほざいてくる。
つまり更に欲に目がくらんだってことだな。
あわよくばこの女にまた俺の子を産ませる魂胆か。
ケッ、こいつと血が繋がっていると思うと吐き気がする。
契約を破り侯爵家の寄生虫にでもなろうとしている女に憎しみは覚えるが、我が子に愛情を感じているわけでもないので争ってでも子供を奪おうという気は起きなかった。
ふとリズが悲しむ顔が頭を過ったが、それでも子は正式に我が子として届けているので離縁の危機はなくなった。
つまり当初の問題は解決されている。
こいつらに何を言っても無駄だろう。
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「分かりました。とりあえずロザリン夫人が産んだ子は実子として届け出たので、契約違反には目を瞑りましょう。
子供の養育もこちらで構いませんし、侯爵家とロザリンの関わりにも口を出しません。
けれども私や妻と関わることは絶対に許しません。
もしウロチョロしたりしたら‥‥その時は、分かりますね。クックック」
最後の言葉が終わると同時に近くの花瓶が勢いよく粉砕する。
「「「ヒッー!」」」
ガタガタと震える奴らを置いて別邸へと戻っていく。
リズに子供の事を伝えたらきっとがっかりするかもしれないが、それでも良かったと思っていた。リズと血が繋がっていな子を迎えて起こる予期せぬ変化より今の幸せが何よりも大切に想えていたからだ。
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