すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと

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14.悪夢~エリザベス視点~

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私の眠りは深くこれまで夢を見ることはほとんどなかった。ましてや悪夢なんて一度だって見たことはなかったのに、ここ一ヶ月ほどは頻繁に見るようになっていた。

考えられる原因はアレクの裏切りか…。

思い返せばあの事実を知る少し前から見ていたような気もする。
もしかしたら何も知らなかったけど、無意識にアレクの不自然さを感じ取っていたのかもしれない。

 そういえばあの時、朧気に覚えていた嫌な夢が現実になったと感じたのよね…。


人は気になっている事柄が夢にまで現れてしまうと言われていたので、気にしないようにしていた。

 …偶々あの時は夢と現実が重なっただけだわ。

悪夢とはいえただの夢、現実とは違うから大丈夫だと思っていた。

最初は…。

でも意味のないと思われた悪夢の断片を繋ぎ合わせると、意味が生まれた…。

それは予知夢であった。

 えっ…。私は起こるかもしれない未来の断片を夢で見ているの…?

夢で見たことがいつ起こるかも分からないし、起きたのか分からないものも多々あるが、偶然で片づけられないほど一致していることがあった。

そしてそれはほとんど嫌なことだった…。

最初は『気のせいだ』『神経質になっているだけだ』と思い込もうとしたが…より鮮明になっていく夢を予知夢だと認めるのに時間は掛からなかった。

次に浮かんだ疑問はなぜ私が?ということだった。

力のある魔術師の中には予知夢を見る能力を有していた者が過去にいたようだが、私には魔力はない。
魔力は生まれ持ってのものだから、大人になって急に魔力が芽生えることはないはずだ。

 一体なにが起こっているの…。

違和感はそれだけではなかった。
最近、疲れている事が多く食欲も落ちている。
以前より眠気を感じ、味覚も変化している。てっきりストレスや疲れから来る不調だと思っていたが…。

 ‥‥でもそれが違っていたとしたら?
 他の要因によって起きていたとしたら‥‥。

 まさか、そんな…ことって‥‥。

私はお腹に手を当て茫然としていた。
 
 赤ちゃんが出来たの…。
 三年間を出来なかったのに、今…?

まだ確信はないけれどもそう考えるのが自然に思えた。アレクの血を引く我が子が膨大な魔力を備えていて、その子が見ている予知夢?を母体である私も偶々見れているような状況なのだろうか。

愛おしい人との愛の結晶がこの身に宿っていると思うとじんわりと温かい気持ちになってくる。
お腹に向かって『来てくれてありがとう』と優しく語り掛けると涙が流れてきた。

素直な喜びと共に抑えることが出来ない不安。
 

 これまで見た夢はすべて起こるの?
 予知夢が本当になったら…どうすればいいの…。
 
 あれだけは駄目だわ。何としても止めなくては。
 でもどうすればいいの…予知夢は変えられるのか…。

分からない事が多すぎる。

私が、いいえ、この子が見る夢は不安定で断片的だ。後から繋ぎ合わせて、ああこの事だったんだとは知る事が出来るが、それを事前に繋ぎ合わせいつどんな状況で起きるのかを理解するのは難しい‥‥。

 そうよね。この子はまだ胎児ですもの。
 それでも一生懸命頑張って私に伝えようとしてくれているのよね。
 ありがとう、私の赤ちゃん。

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