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22.夏祭り前①
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オーサン国の四大祭りの一つ【夏祭り】の開催が一か月後に迫っている。毎年大変盛り上がるが、今年はいつもと気合の入れ方が違う。国王を含め後宮問題解決実行案に取り組んでいる者達は、激務が続いている。
宰相ガーザは例年以上に人の流れを増やすべく、様々な企画を立案し部下達に割り振っている。側近ガロンは側妃達のお忍び警護と、例年以上の人の増加によるトラブル対応策などに掛かりっきりだ。そして、国王ギルアも夏祭り期間中に王宮で開かれるパーティーの計画・調整に追われている。
「なんか流石に疲れるな。笑えん、ワッ…」
「もう何日も起きている妻と八人の子供達に会えてないです。辞表出してもいいですか…」
「すまん、もう少し耐えてくれ。夏祭りを乗り切ったら長期休暇を出す、約束する!」
こんなやり取りを何度繰り返したことか…。連日連夜の激務が続いてかれこれ一か月になる、もう切り札『長期休暇』でも、二人は元気になってくれない。ギルアはどうしたものかと途方に暮れていたら、執務室の扉が開きトト爺が入室して来た。
「くたびれた男どもほど、見苦しいものはないの~」
「「「……」」」
「ホッホッホ、声を上げる元気もなしか。マムシドリンクでも飲んどけ」
ドンと、赤紫色のお手製マムシドリンクが目の前に置かれるが危ない臭いがする、『これはヤバいやつだ止めておけ』と本能が叫んでる、三人とも怖くて手を出せない。
笑いながらトト爺がおもむろにマムシドリンクを外に捨てた、…やっぱり何かが仕込まれていたのだ。飲まなくて正解だった。
「残念じゃが合格したので褒美をやるの~、一緒に政務棟前の庭園に行くぞ」
ヒョコヒョコと歩くトト爺の後を、大人しく付いていく事にする。
「「「パパー♪会いたかったー」」」
可愛い子ウサギ獣人達とガーザの妻が、宰相に飛びついていく。家族みんなで抱き合って、ピコピコが止まらない♪
「お兄様、お疲れ様です。クッキーを焼いてきたので一緒にどうですか?」
ガロンに声を掛けたのは、妹のアン。ガロンに全く似ていない落ち着きのある10歳で、『奇跡の妹』と呼ばれていて、兄であるガロンは溺愛しているのだ。いきなりアンを抱きあげグルグルと回し始め、アンも喜んでいる。
そんな臣下の様子にギルアも頬が緩む、トト爺もたまには良いことをしてくれると思っていると、
「ギルア様、お仕事大変そうですね。一緒に休憩でもどうですか?」
ハッと振り向くとシルビアが大きなバスケットを持って笑いかけている。最近は忙しくてお茶会の時間も満足に取れず、シルビア不足に落ち込む日々だったギルアにとって、嬉しすぎるサプライズだ。
「儂は依怙贔屓はせんからの~。全員ハッピーか全員地獄かのどちらかじゃ、今回はラッキーじゃったの、ホッホッホ」
「何の話、トト爺?」
「男同士の内緒話じゃ、なぁギル坊。みんなゆっくり休んで疲れを癒してもらえ~」
トト爺のサプライズに感謝し、それぞれ庭園の木陰にシートをひいて近場ピクニックを楽しむことにした。
「「「ワーイ!ワーイ!パパこっちーきてー」」」
八人からいっぺんに手や足や洋服などを引っ張られて転びそうになりながらも、嬉しそうにデレデレしているガーザパパ、すっかり宰相の顔が消えている。
「宰相は良いパパなんですね。冷静沈着な一面しか知らなかったので驚きました」
「俺もあんなガーザの顔は初めて見た。妻と子が何より大切だと日頃から言っているが、いつも無表情で言っていたので実感がなかったな。家族っていいものだな」
「そうですね。ガロンも妹のアンと一緒だと頼れるお兄さんキャラに変身ですね、ふっふ何か可笑しいわ♪」
「そうだな、ガロンもアンの前では格好良い兄を演じているな」
こんな会話をしている俺達は夫婦そのものだなとご満悦のギルア、でも口に出す勇気はまだない。
色んな疑惑を乗り越え、なんとかシルビアと穏やかな関係を築けるまでになった。恋人ではないが、友人以上の手応えをたまに感じる時もある。後は後宮問題を解決し、名実共に夫婦になれるように努力するだけだ。たくさん傷つけたのだから、シルビアの愛をいつまでも待つつもりだ。---狼に待ては出来るのか?
今はただシルビアと一緒に過ごせる喜びで、尻尾はワッサワッサと動き続ける。
「ギルア様の尻尾はツヤツヤで触り心地が良さそうですね。触ってもいいですか?」
「も、勿論だ。シルビアなら好きなだけ触っていいぞ」
ギルアがそそくさと自慢の尻尾をシルビアの前に差し出す、その顔は赤みがかっている。
獣人にとって尻尾は大事な部分で心を許した相手にしか触らせない、恋人や配偶者や番のみが許されるのだ。
その尻尾をシルビアが自分から進んで触っている現実に、夢ではないかと思ってしまう。この至高の瞬間をうっとりと楽しんでいると、ガロンが隣の木陰から声を掛けてきた。
「シルビア様、獣人の尻尾は性的興奮を感じる部分なので、昼間に触っちゃ駄目ですよー。師匠のイラストの餌食になります、ワッハッハ」
空気を読まない馬鹿犬、ここにあり。ギルアの究極の癒しタイムをあっさり終了させた。
シルビアは慌てて手を離し、顔を真っ赤にして口をハクハクしている。
「ギルア様ごめんなさい。そんな大事な場所とは知らなくて…、もうしませんので」
「いや、構わない。シルビアは人族なのだから毛皮を撫でる感覚で撫でるのは問題ないぞ」
(ガロンめ、余計な事を!お前の休暇は取り消しだ、そして命もないものと思え)
馬鹿兄犬の失態に気づき、笑っている兄ガロンの横で必死に妹アンが頭を下げている。『奇跡の妹』が生まれたのではない、ガロンの存在により作られたのだ。---出来た妹のお陰で命拾いした兄である。
微妙な空気が流れていると、後宮からの使いが急いでこちらにやって来る。護衛が止めようとしたが、ギルアは大丈夫だと合図し、通させた。
国王と正妃の前まで来ると、後宮からの伝言を伝えてくる。
「国王様、ご報告がございます。パトア妃がご懐妊でございます!」
宰相ガーザは例年以上に人の流れを増やすべく、様々な企画を立案し部下達に割り振っている。側近ガロンは側妃達のお忍び警護と、例年以上の人の増加によるトラブル対応策などに掛かりっきりだ。そして、国王ギルアも夏祭り期間中に王宮で開かれるパーティーの計画・調整に追われている。
「なんか流石に疲れるな。笑えん、ワッ…」
「もう何日も起きている妻と八人の子供達に会えてないです。辞表出してもいいですか…」
「すまん、もう少し耐えてくれ。夏祭りを乗り切ったら長期休暇を出す、約束する!」
こんなやり取りを何度繰り返したことか…。連日連夜の激務が続いてかれこれ一か月になる、もう切り札『長期休暇』でも、二人は元気になってくれない。ギルアはどうしたものかと途方に暮れていたら、執務室の扉が開きトト爺が入室して来た。
「くたびれた男どもほど、見苦しいものはないの~」
「「「……」」」
「ホッホッホ、声を上げる元気もなしか。マムシドリンクでも飲んどけ」
ドンと、赤紫色のお手製マムシドリンクが目の前に置かれるが危ない臭いがする、『これはヤバいやつだ止めておけ』と本能が叫んでる、三人とも怖くて手を出せない。
笑いながらトト爺がおもむろにマムシドリンクを外に捨てた、…やっぱり何かが仕込まれていたのだ。飲まなくて正解だった。
「残念じゃが合格したので褒美をやるの~、一緒に政務棟前の庭園に行くぞ」
ヒョコヒョコと歩くトト爺の後を、大人しく付いていく事にする。
「「「パパー♪会いたかったー」」」
可愛い子ウサギ獣人達とガーザの妻が、宰相に飛びついていく。家族みんなで抱き合って、ピコピコが止まらない♪
「お兄様、お疲れ様です。クッキーを焼いてきたので一緒にどうですか?」
ガロンに声を掛けたのは、妹のアン。ガロンに全く似ていない落ち着きのある10歳で、『奇跡の妹』と呼ばれていて、兄であるガロンは溺愛しているのだ。いきなりアンを抱きあげグルグルと回し始め、アンも喜んでいる。
そんな臣下の様子にギルアも頬が緩む、トト爺もたまには良いことをしてくれると思っていると、
「ギルア様、お仕事大変そうですね。一緒に休憩でもどうですか?」
ハッと振り向くとシルビアが大きなバスケットを持って笑いかけている。最近は忙しくてお茶会の時間も満足に取れず、シルビア不足に落ち込む日々だったギルアにとって、嬉しすぎるサプライズだ。
「儂は依怙贔屓はせんからの~。全員ハッピーか全員地獄かのどちらかじゃ、今回はラッキーじゃったの、ホッホッホ」
「何の話、トト爺?」
「男同士の内緒話じゃ、なぁギル坊。みんなゆっくり休んで疲れを癒してもらえ~」
トト爺のサプライズに感謝し、それぞれ庭園の木陰にシートをひいて近場ピクニックを楽しむことにした。
「「「ワーイ!ワーイ!パパこっちーきてー」」」
八人からいっぺんに手や足や洋服などを引っ張られて転びそうになりながらも、嬉しそうにデレデレしているガーザパパ、すっかり宰相の顔が消えている。
「宰相は良いパパなんですね。冷静沈着な一面しか知らなかったので驚きました」
「俺もあんなガーザの顔は初めて見た。妻と子が何より大切だと日頃から言っているが、いつも無表情で言っていたので実感がなかったな。家族っていいものだな」
「そうですね。ガロンも妹のアンと一緒だと頼れるお兄さんキャラに変身ですね、ふっふ何か可笑しいわ♪」
「そうだな、ガロンもアンの前では格好良い兄を演じているな」
こんな会話をしている俺達は夫婦そのものだなとご満悦のギルア、でも口に出す勇気はまだない。
色んな疑惑を乗り越え、なんとかシルビアと穏やかな関係を築けるまでになった。恋人ではないが、友人以上の手応えをたまに感じる時もある。後は後宮問題を解決し、名実共に夫婦になれるように努力するだけだ。たくさん傷つけたのだから、シルビアの愛をいつまでも待つつもりだ。---狼に待ては出来るのか?
今はただシルビアと一緒に過ごせる喜びで、尻尾はワッサワッサと動き続ける。
「ギルア様の尻尾はツヤツヤで触り心地が良さそうですね。触ってもいいですか?」
「も、勿論だ。シルビアなら好きなだけ触っていいぞ」
ギルアがそそくさと自慢の尻尾をシルビアの前に差し出す、その顔は赤みがかっている。
獣人にとって尻尾は大事な部分で心を許した相手にしか触らせない、恋人や配偶者や番のみが許されるのだ。
その尻尾をシルビアが自分から進んで触っている現実に、夢ではないかと思ってしまう。この至高の瞬間をうっとりと楽しんでいると、ガロンが隣の木陰から声を掛けてきた。
「シルビア様、獣人の尻尾は性的興奮を感じる部分なので、昼間に触っちゃ駄目ですよー。師匠のイラストの餌食になります、ワッハッハ」
空気を読まない馬鹿犬、ここにあり。ギルアの究極の癒しタイムをあっさり終了させた。
シルビアは慌てて手を離し、顔を真っ赤にして口をハクハクしている。
「ギルア様ごめんなさい。そんな大事な場所とは知らなくて…、もうしませんので」
「いや、構わない。シルビアは人族なのだから毛皮を撫でる感覚で撫でるのは問題ないぞ」
(ガロンめ、余計な事を!お前の休暇は取り消しだ、そして命もないものと思え)
馬鹿兄犬の失態に気づき、笑っている兄ガロンの横で必死に妹アンが頭を下げている。『奇跡の妹』が生まれたのではない、ガロンの存在により作られたのだ。---出来た妹のお陰で命拾いした兄である。
微妙な空気が流れていると、後宮からの使いが急いでこちらにやって来る。護衛が止めようとしたが、ギルアは大丈夫だと合図し、通させた。
国王と正妃の前まで来ると、後宮からの伝言を伝えてくる。
「国王様、ご報告がございます。パトア妃がご懐妊でございます!」
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