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5.いざ出発
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あっという間に隣国への輿入れの日になった。
本来なら侍女や護衛騎士を複数人連れて行くのが常識だが、そんな事をしてはこの国の貴重な人口が減ってしまう。
そこで『面白そうなので行ってみまーす』と立候補した三歳年上の侍女兼護衛のアンナだけを連れて輿入れする事になった。
さあ出発前の感動の別れが始まった。城門前にはロナ姫を見送るため大勢の民が集まっている。
【父と娘】
「ロナや、隣国でも元気にやるんだぞ」
(うっうっ…可愛い娘との別れは辛い…)
「はい、父上。お任せください、みごとに女の戦いを勝ち残りドロドロの後宮を表立って牛耳ってみせましょう!」
「……いや、それは望んでおらんから」
(ロナ、頼む大人しくしていてくれ…)
【兄と妹】
「体に気を付けて、くれぐれも無茶な事はするなよ。いざとなれば渡した血糊を使って不治の病のふりをして帰ってこい」
(何をやらかすか心配だ。事を荒立てる前にこっそりと後宮を後にしてくれ)
「はい、兄上。やるだけやって駄目なら死んだふりして元気に帰ってきますね」
(限界まで挑戦します!後宮が崩壊したら残念だけど帰ってきますね)
…いやいや、死んだと元気が両立するのはゾンビぐらいだ。
「行ってきまーす♪」
「「「行ってらっしゃーい」」」
こうして家族や民達に見送られロナ姫と侍女のアンナは颯爽と馬に乗り隣国への一本道を駆けていった。
みんなが別れの余韻に浸っていると一人の侍女が本を持って慌てて駆けてきた。
ロナ姫達がたてている砂ぼこりを見ながら『遅かった…』と呟いている。
「何が遅かったんだ?」
兄王子が侍女に問うと、一冊の本を差し出しながら『姫様のお忘れ物です』と告げてくる。
その本のタイトルは『夜の指南書上級編』だった。
それを見て苦笑いをする一同。
大した忘れ物ではないと分かり、ホッとしている。
「ロナにこれはいらんだろう。ちゃんと閨教育を受けているんだしな」
「そうだな。あんなお転婆な妹だがその辺は大丈夫だろう。なあ?」
古株の侍女達に話を振るが誰からも返事はなく、お互い探るように顔を見合わせている。
嫌な予感がする国王は、
「ロナに閨教育をした者は誰だ?手を挙げてみてくれ」
と言ってみるが、誰一人手を挙げない…。
ギッギッギとゼンマイ仕掛けの人形のようにぎこちなく首を回してもう一度願いを込めて周りを見るがやはり誰の手も上がっていない。
これは誰かがやっているはずだと思い込み『実は誰もしていなかったあるある』で決定だろう。
「ね、閨教育はしていなくても、女達の井戸端会議なんかで男女の事柄のイロハはきっと知っているよなっ?」
一縷の望みを掛け国王は周りの侍女達に話しかけるが、困ったような顔を浮かべるものだけで『きっと知っていますよ』と肯定の意を述べてはくれない。
そもそもロナ姫は色恋に夢中になるより家畜と戯れている元気美少女だったのだ。
こ、これはだいぶ不味い事態なんじゃないか……。
みんなの額から嫌な汗がタラりと垂れる。
みんなで一斉にロナ姫達が駆けていった道に向かって、
「「「待ってくれーーー」」」
と叫んだが、もうその姿は遥か彼方で声は届いてなかった。
もうあとは神に祈るしかない。
願わくばロナ姫が持参していった愛読書『家畜の繁殖これで完璧!』が閨でも役に立ちますようにとみんなで必死に祈っていた。
…絶対に役には立たん!!
本来なら侍女や護衛騎士を複数人連れて行くのが常識だが、そんな事をしてはこの国の貴重な人口が減ってしまう。
そこで『面白そうなので行ってみまーす』と立候補した三歳年上の侍女兼護衛のアンナだけを連れて輿入れする事になった。
さあ出発前の感動の別れが始まった。城門前にはロナ姫を見送るため大勢の民が集まっている。
【父と娘】
「ロナや、隣国でも元気にやるんだぞ」
(うっうっ…可愛い娘との別れは辛い…)
「はい、父上。お任せください、みごとに女の戦いを勝ち残りドロドロの後宮を表立って牛耳ってみせましょう!」
「……いや、それは望んでおらんから」
(ロナ、頼む大人しくしていてくれ…)
【兄と妹】
「体に気を付けて、くれぐれも無茶な事はするなよ。いざとなれば渡した血糊を使って不治の病のふりをして帰ってこい」
(何をやらかすか心配だ。事を荒立てる前にこっそりと後宮を後にしてくれ)
「はい、兄上。やるだけやって駄目なら死んだふりして元気に帰ってきますね」
(限界まで挑戦します!後宮が崩壊したら残念だけど帰ってきますね)
…いやいや、死んだと元気が両立するのはゾンビぐらいだ。
「行ってきまーす♪」
「「「行ってらっしゃーい」」」
こうして家族や民達に見送られロナ姫と侍女のアンナは颯爽と馬に乗り隣国への一本道を駆けていった。
みんなが別れの余韻に浸っていると一人の侍女が本を持って慌てて駆けてきた。
ロナ姫達がたてている砂ぼこりを見ながら『遅かった…』と呟いている。
「何が遅かったんだ?」
兄王子が侍女に問うと、一冊の本を差し出しながら『姫様のお忘れ物です』と告げてくる。
その本のタイトルは『夜の指南書上級編』だった。
それを見て苦笑いをする一同。
大した忘れ物ではないと分かり、ホッとしている。
「ロナにこれはいらんだろう。ちゃんと閨教育を受けているんだしな」
「そうだな。あんなお転婆な妹だがその辺は大丈夫だろう。なあ?」
古株の侍女達に話を振るが誰からも返事はなく、お互い探るように顔を見合わせている。
嫌な予感がする国王は、
「ロナに閨教育をした者は誰だ?手を挙げてみてくれ」
と言ってみるが、誰一人手を挙げない…。
ギッギッギとゼンマイ仕掛けの人形のようにぎこちなく首を回してもう一度願いを込めて周りを見るがやはり誰の手も上がっていない。
これは誰かがやっているはずだと思い込み『実は誰もしていなかったあるある』で決定だろう。
「ね、閨教育はしていなくても、女達の井戸端会議なんかで男女の事柄のイロハはきっと知っているよなっ?」
一縷の望みを掛け国王は周りの侍女達に話しかけるが、困ったような顔を浮かべるものだけで『きっと知っていますよ』と肯定の意を述べてはくれない。
そもそもロナ姫は色恋に夢中になるより家畜と戯れている元気美少女だったのだ。
こ、これはだいぶ不味い事態なんじゃないか……。
みんなの額から嫌な汗がタラりと垂れる。
みんなで一斉にロナ姫達が駆けていった道に向かって、
「「「待ってくれーーー」」」
と叫んだが、もうその姿は遥か彼方で声は届いてなかった。
もうあとは神に祈るしかない。
願わくばロナ姫が持参していった愛読書『家畜の繁殖これで完璧!』が閨でも役に立ちますようにとみんなで必死に祈っていた。
…絶対に役には立たん!!
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